前節・富山戦は今季初のウノゼロ(1-0)で勝ち、今季初の連勝で前半戦を終えた藤枝MYFC。リーグ戦では3戦負けなしで、天皇杯も含めると公式戦3連勝。その前の9試合は1勝8敗と非常に苦しい戦いが続いたが、それでも自分たちを信じて藤枝スタイルを曲げることなく、細かい課題の修正に力を注いできた。その成果が、ようやく結果という形で実りつつある。
今季の藤枝は「超・超・超攻撃的エンターテインメントサッカー」を掲げて、ボールを支配しながら人数をかけて攻めるスタイルを貫いているが、その分リスクは大きい。自分たちが主導権を握って攻め込む展開に持ち込んでも、ミス等からカウンターを食らって先制点を奪われてしまう試合が前半戦はかなり目立っていた。19試合の中で、先制点を取ったのが6試合で、取られたのが11試合と倍近い差がある。
先制されると、相手が守りを固めてカウンターを狙ってくるという構図がより明確になり、それを攻めあぐねていると、焦りが生じてより前がかりになり、逆にカウンターから失点を重ねるというのが、今季に限らず藤枝のゲームで目立つ負けパターンだ。内容は悪くないが結果的には負けているという試合はこのパターンが多く、とくに前半戦では目立っていた。
本来は、1点取られても2点取って勝てばOKという考え方のチームだが、一昨年の渡邉りょう、昨年の矢村健のような絶対的ストライカーが今季は不在で、チャンスは作れているが、決めきる力が落ちていることは否めない。16節までは逆転勝ちが1試合だけだった。
そうした難しさがあった中、17節・山口戦はチャンスを決めきれなかったが、12試合ぶりの無失点で連敗を4でストップ。18節・山形戦は、押している中でカウンターから先制されるという前半戦の負けパターンに陥りかけたが、攻撃の中心に成長してきた浅倉廉のゴールと、セットプレーからの杉田真彦のゴールで逆転勝ち。
そして19節・富山戦は、前半からカウンターで何度かピンチを招いたが、最後のところで粘り強く守る力を発揮し、焦れることなく攻め続けて64分にゴールをこじ開け、1-0で勝ち切った。この3試合で、ひとつひとつ課題をクリアしつつある。
「カウンターを受けたときにボールを持った相手に食いつきすぎて、他からパワーを持って入ってくる選手に対してカバーできないことがあるので、ボールをつぶしに行くのか、カバーを意識するのか、そこの見極めは個人的にすごく考えています。今は後ろの3枚(3センターバック)もお互いにわかり合ってきて、この状況ならこうしてくれるだろうなというのが明確になっているので、カウンターで数的同数になっても駆け引きとか最後の粘りで止められているシーンが増えていると思います」
ボランチの世瀬啓人も「攻めてるときにぽっかり空いたスペースを作らないことを意識してますし、チームとしてもボールを奪われた後の反応が速くなってると思います」と言う。
ただ須藤大輔監督は、リスク管理の面でより隙のない対応を選手たちに求めている。
「カウンターへの備えはまだまだ足りないです。意識はすごくしてくれているけど、できてるときとできてないときがまだ明確にある。今は10回中8回はできてるけど2回はできてないというレベルで、その2回が最初に来ることもある。千葉戦や仙台戦はそこで点を取られてしまった。それは選手もわかっているはずなので、10回中10回できるようにしていかないといけないと言ってます」
カウンターを受けてからゴール前で止めるのは最終手段であり、その前にカウンターの出どころの段階で止める、危険な位置でのミスをなくしてカウンターを発動させないというのが理想であり、指揮官はそこを目指している。
とくに次節で対戦する札幌のような前線に能力の高い選手がいるチームは、ワンチャンスを決めきる力があるので、自陣に入られる手前でカウンターを止めることが重要になる。もちろん、それは上位陣に勝つためにも、すなわちJ1昇格に近づくためにも欠かせないことだ。
須藤監督は、藤枝の選手たちにはそれができると信じているからこそ、高いレベルの要求を伝え続けている。そして日々の練習からそこに妥協することなく、チーム全体のアラートさを積み上げていく作業を繰り返している。
そうして少しずつカウンターの恐さを克服できれば、「攻撃もより自信を持ってできるようにもなると思います」と世瀬は言う。焦ることなく冷静に相手を見ながら攻略の糸口を見つけ、得点を増やすことにもつながってくるはずだ。
“超攻撃的”を貫き通すには絶対に欠かせないカウンター対策。そこがどれだけ進化するかという視点も、後半戦の藤枝を観る楽しみになる。
Reported by 前島芳雄
構造的な課題を徐々に克服して
その要因のひとつとして、失点が減ってきたことは大きい。山口戦0-0、山形戦2-1、富山戦1-0と3試合でわずか1失点。16節までは1試合平均1.56失点だったので、大幅に減少している。今季の藤枝は「超・超・超攻撃的エンターテインメントサッカー」を掲げて、ボールを支配しながら人数をかけて攻めるスタイルを貫いているが、その分リスクは大きい。自分たちが主導権を握って攻め込む展開に持ち込んでも、ミス等からカウンターを食らって先制点を奪われてしまう試合が前半戦はかなり目立っていた。19試合の中で、先制点を取ったのが6試合で、取られたのが11試合と倍近い差がある。
先制されると、相手が守りを固めてカウンターを狙ってくるという構図がより明確になり、それを攻めあぐねていると、焦りが生じてより前がかりになり、逆にカウンターから失点を重ねるというのが、今季に限らず藤枝のゲームで目立つ負けパターンだ。内容は悪くないが結果的には負けているという試合はこのパターンが多く、とくに前半戦では目立っていた。
本来は、1点取られても2点取って勝てばOKという考え方のチームだが、一昨年の渡邉りょう、昨年の矢村健のような絶対的ストライカーが今季は不在で、チャンスは作れているが、決めきる力が落ちていることは否めない。16節までは逆転勝ちが1試合だけだった。
そうした難しさがあった中、17節・山口戦はチャンスを決めきれなかったが、12試合ぶりの無失点で連敗を4でストップ。18節・山形戦は、押している中でカウンターから先制されるという前半戦の負けパターンに陥りかけたが、攻撃の中心に成長してきた浅倉廉のゴールと、セットプレーからの杉田真彦のゴールで逆転勝ち。
そして19節・富山戦は、前半からカウンターで何度かピンチを招いたが、最後のところで粘り強く守る力を発揮し、焦れることなく攻め続けて64分にゴールをこじ開け、1-0で勝ち切った。この3試合で、ひとつひとつ課題をクリアしつつある。
カウンターを受けてからではなく、受ける前に
カウンター対応に関しても少しずつ改善は見えており、センターバックの楠本卓海は次のように語る。「カウンターを受けたときにボールを持った相手に食いつきすぎて、他からパワーを持って入ってくる選手に対してカバーできないことがあるので、ボールをつぶしに行くのか、カバーを意識するのか、そこの見極めは個人的にすごく考えています。今は後ろの3枚(3センターバック)もお互いにわかり合ってきて、この状況ならこうしてくれるだろうなというのが明確になっているので、カウンターで数的同数になっても駆け引きとか最後の粘りで止められているシーンが増えていると思います」
ボランチの世瀬啓人も「攻めてるときにぽっかり空いたスペースを作らないことを意識してますし、チームとしてもボールを奪われた後の反応が速くなってると思います」と言う。
ただ須藤大輔監督は、リスク管理の面でより隙のない対応を選手たちに求めている。
「カウンターへの備えはまだまだ足りないです。意識はすごくしてくれているけど、できてるときとできてないときがまだ明確にある。今は10回中8回はできてるけど2回はできてないというレベルで、その2回が最初に来ることもある。千葉戦や仙台戦はそこで点を取られてしまった。それは選手もわかっているはずなので、10回中10回できるようにしていかないといけないと言ってます」
カウンターを受けてからゴール前で止めるのは最終手段であり、その前にカウンターの出どころの段階で止める、危険な位置でのミスをなくしてカウンターを発動させないというのが理想であり、指揮官はそこを目指している。
とくに次節で対戦する札幌のような前線に能力の高い選手がいるチームは、ワンチャンスを決めきる力があるので、自陣に入られる手前でカウンターを止めることが重要になる。もちろん、それは上位陣に勝つためにも、すなわちJ1昇格に近づくためにも欠かせないことだ。
須藤監督は、藤枝の選手たちにはそれができると信じているからこそ、高いレベルの要求を伝え続けている。そして日々の練習からそこに妥協することなく、チーム全体のアラートさを積み上げていく作業を繰り返している。
そうして少しずつカウンターの恐さを克服できれば、「攻撃もより自信を持ってできるようにもなると思います」と世瀬は言う。焦ることなく冷静に相手を見ながら攻略の糸口を見つけ、得点を増やすことにもつながってくるはずだ。
“超攻撃的”を貫き通すには絶対に欠かせないカウンター対策。そこがどれだけ進化するかという視点も、後半戦の藤枝を観る楽しみになる。
Reported by 前島芳雄