
FC今治2シーズン目の加藤徹也が、明治安田J2リーグ第20節の水戸ホーリーホック戦でゲームキャプテンを務めた。キャプテンのマルクス ヴィニシウスが警告の累積で出場停止で、3人の副キャプテンのうちGK植田峻佑はベンチスタート、山田貴文はメンバー外、梶浦勇輝は長期離脱中という状況を受けてのことである。
前所属の奈良クラブでは副キャプテンの経験があり、そのリーダーシップは今治でも説得力十分だ。3バックの左を務めるが、4バックのサイドバックでもプレーできる機動力と攻撃センスを備え、今季もここまで出場停止の1試合をのぞいて19試合で先発。冷静沈着さを失わず、勝ちに行く姿勢を失わない闘志を全面に、20節を終えて1671分とチーム最長のプレー時間を刻んでいる。
7連勝中の強敵・水戸戦でもフル出場し、先制された直後の52分には、パトリッキ ヴェロンのFKを頭で鮮やかに捉えてネットを揺らし、自身、J2初ゴールを決めた。
だが試合は終盤、勝ち越すために前掛かりになったスペースをカウンターで突かれて、痛恨の失点。ゴールのカバーに入ろうと懸命に体を投げ出したスライディングも届かなかった。
1-2で敗れたチームは6戦未勝利となり、J2初年度を上位で戦ってきた勢いに陰りが見え始めている。真夏の戦いを前にして、一つの正念場だ。
ミックスゾーンに現れたとき、その表情は勝てない苦悩というより、どこか吹っ切れたところがあった。
「内容は悪くなかったですから。もちろん一つのパスミス、保持するとこで奪われるといったところは、しっかり改善していかないといけない。そうじゃないと、ここからきつくなるし、今日も相手との差が出たと思います」
手応えをつかめたのも事実だ。縦に速い水戸の攻撃に対応しつつ、チャンスが訪れるのを待った。同点の場面では、夏の移籍で川崎フロンターレから加入した パトリッキ ヴェロンが右後方から蹴ったFKを、体を捻りながらのヘディングシュートでファーサイドに流し込んだ。
「パトが蹴る瞬間、マークが緩んだので、思い切ってゴール前に入っていけました。本当にいいボールが飛んできたので、そのまま当てるだけでした」
謙虚に振り返っていたが、 パトリッキ ヴェロンは「あの形で合わせると決まっていたわけではなく、自分の感覚で最も点になりやすいところに蹴った。コース的にはとても難しかったけれど、テツがよく合わせてくれた」と賛辞を惜しまない。
結果的には終了間際の86分、引き分けで良しとせず、勝点3を取りに行ったところで、逆にカウンターでやられてしまった。だが、大いに反省はするが、後悔はない。
「引き分けや負けが続いている中で、勝ちに行く姿勢は大事です。その中でも守らなきゃいけないし、それができなければチームは上がっていけないと思います。数的不利でも守れるように、そのためには練習でしか変わることはできないので、しっかりやっていきます。
今日の試合もみんな気持ちが入っていたし、やろうとする姿勢も明らかでした。気持ち的に落ちる必要は、まるでないです」
自身もチームも、J2の壁にぶち当たっている今の状況ではある。だが、それだけやりがいがあるというものだ。その困難を乗り越えることを求めて、J2というステージに上がってきたのだから。
「やれている部分もあるし、やられている部分もあります。J2のレベルを実感します。僕らは食らいついていけるよう、レベルアップしなきゃいけない。今日もそうですが、相手はチャンスをしっかり決め切ってくるので、そこをやらせないことだったり、逆に僕たちがチャンスで決め切る。そういうところにこだわっていきます」
まだまだ、ここから。視線はしっかり上に向けられている。
Reported by 大中祐二