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【取材ノート:千葉】攻守で持ち味を発揮して奮闘する河野貴志に、田口泰士が渡したキャプテンマークの意味

2025年6月26日(木)
ジェフユナイテッド千葉が前回対戦(2025明治安田J2リーグ第7節)で0-1の敗戦を喫したジュビロ磐田と再び対戦した、6月21日開催の第20節。J2リーグでは3分1敗と4試合、勝利から遠ざかっている千葉は、その磐田戦で2センターバックの一角を鈴木大輔から河野貴志に変更して臨んだ。

前半は磐田に主導権を握られた千葉は、21分、髙橋壱晟が磐田の倍井謙のドリブルでの仕掛けに対し、マークしたもののかわされて倍井にペナルティエリアに進入されてしまう。後追いの形になった髙橋の守備がファウルとなり、磐田がPKをゲット。そのPKを23分にジョルディ クルークスが決めて磐田が先制点を上げた。
前半は公式記録でシュート1本に終わった千葉は、後半に攻守で『前へ』の姿勢を強め、反撃したもののノーゴール。前回対戦と同じ0-1というスコアでの敗戦となった。


「失点したのは結局、(ディフェンスライン)の裏を取られたところでの対応でした。相手が裏を狙ってくるのはスカウティングで言われていたことだったし、あの場面では一応、カバーする選手はいたので。でも、自分がああいう(髙橋選手の)立場になった時、もしかしたらああなってしまう可能性はあるんですよね。(フクアリだと)味方の声が聞こえづらいんですけど、そういうところで助けることができなかったことにちょっと悔しさは残ります。でも、ほかのところに関しては、磐田にそんなにやられたという感じはあまりしないですね」

髙橋のプレーをフォローしつつ、PKにつながった場面について試合後に反省点を語った河野。ただ、守備の立場からはそれほど磐田にやられた感覚はなかったとはいえ、0-1という結果に悔しい思いを抱き、声援を送り続けたサポーターに申し訳なさを感じていた。

「悔しい気持ちしかないです。前半戦で負けた相手にまた負けてシーズンダブルを食らうのは良くないし、サッカーでの悔しさというのはサッカーでしか返せないので。前半戦で負けた悔しさを今日はここホームで、すごく雰囲気がいい中で磐田にやり返すつもりだったのがこういう結果になった。自分たちももちろん悔しいし、サポーターの方たちにも相当悔しい思いをさせてしまった。首位に立つプレッシャーを楽しみながらやっていましたけど、今日の結果で首位ではなくなったので、これからは這い上がるしかないし、失うものは何もないので、チーム内でもっと競争してやっていくしかないと思います」

磐田戦での河野はハイボールでの競り合い、シュートブロックなど守備での奮闘を見せながら、攻撃でも起点となる良いプレーを見せていた。自分のそばに磐田の選手がいない状況でロングボールが来れば、例えば63分にはロングボールを胸で受けてダイレクトで田口泰士へのパスにしたように、単純にクリアするのではなく味方へのパスにした。そして、後半開始時に右サイドハーフの杉山直宏に代わって入った椿直起が左サイドハーフに入ると、左足からのロングフィードで椿のドリブル突破をお膳立てした。

「フリーだったら味方につないであげるのが一番ですし、それで相手ボールにしていたらみんな引かないといけないので。もっと精度を上げていかないといけないですけど、フリーだったら味方に落としてあげるボールは意識してやれてはいると思います。全部が全部というのは難しいかもしれないけど、確率を上げていけたらなと思います。後半に関してはやっぱり負けていたので、僕がすごく意識したのは鳥海(晃司)さんからボールをもらう時の磐田の右のウイングの23番の選手(ジョルディ クルークス)との駆け引きでした。僕が高いポジションをとれば向こうも引いてくるので、そこの駆け引きをしてうまくボールの持ち運びができたかなと思います。自分がフリーだったら絶対にいいボールが蹴れる自信はあるので、そこでいいチャンスは作れたけれども、もっと作っていくべきだと思いました」

特に、河野の左足からの精度が高いパスが椿に出て、そこからチャンスメークができていたことは、試合後の記者会見で小林慶行監督も高く評価していた。

「自分は右利きなんですけど、小学生の頃から両利きっていうくらい、どっちでも蹴れるところが自分のストロングポイントでもあるので。あそこは練習から意識して蹴っていますけど、もっともっと練習して精度を上げていけば、点につながる日が近づくのではないかなと思っています。そのプレーをしっかり継続しつつ、精度を上げつつ、みんなともっと合わせながらやっていくべきだと思います」

この試合ではキャプテンの鈴木大がベンチスタートだったため、キャプテンマークを巻いていた副キャプテンの田口が77分に交代する時、田口がキャプテンマークを渡したのは副キャプテンの鳥海ではなく河野だった。

「トリくんがいるし、僕は副キャプテンでもないのに、泰士さんが『お前が巻け』って渡してきたんです。それで、トリくんにも言ったんですけど、もう『お前が巻け』みたいな感じだったのでマジかと思いました。『自分でいいのか?』みたいな感じでした」

怪訝に思いながらも、河野はブラウブリッツ秋田に在籍していた時にも巻いたことがあるキャプテンマークを巻いた。後日(6月26日)のオンライン取材の際、河野にキャプテンマークを渡した意図を田口に聞くとこう答えた。

「最初は一番近くにいたからというのもありますけど(笑)、貴志にはリーダーシップを持ってやってほしいので。今年からジェフに来て、最近、コンスタントに試合に出るようになって、明らかにあいつのプレーが自信に満ちあふれているというか、メチャメチャ良くなったと僕は思っているんです。もともとすごく能力のある選手だけど、やっぱり移籍してきて1年目で今までとは別の新しいサッカーをやるのは難しいと思うんです。ただ、最初の頃よりもプレーに自信を持ってやっているのが目に見えて分かってきたし、間違いなく貴志の力がこのチームの今後には必要なので。『自分も中心選手なんだ』という自覚を持ってやってほしいなという思いもあったので、あそこで渡しました」

田口の言葉でのメッセージはなくとも、田口の思いは河野に伝わっていた。

「キャプテンマークを巻くと気持ち的にも上がるので。でも、1点取って、そこからさらに逆転まで行きたかったけど、その力をみんなに与えられなかったのも悔しいです。まだ課題ばかりなので、また頑張っていきたいと思います」

以前から田口は立場や年齢に関係なく選手一人ひとりが責任感を持ち、誰かに頼ることなく自分がしっかりと判断し、味方に伝えてプレーする必要性を口にしていた。試合出場を重ね、攻守両面でストロングポイントを発揮してきている河野は、田口が求める必要なことをやろうとしている。

Reported by 赤沼圭子