Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:琉球】「逃げられない」と決めた男。曽田一騎の静かな闘志

2025年7月17日(木)


試合を決めた瞬間は、決して派手ではなかった。歓喜に満ちたスタジアムの空気の中、FW曽田一騎はひとり静かに、自らの成長を噛みしめていた。

12日の明治安田J3第20節・鳥取戦。ナイトゲームでも蒸し暑さが残る沖縄の地で1-0の勝利を収めた。決勝点は後半30分、曽田の頭から生まれた。左サイドを突破した永井颯太のクロスに迷いなく飛び込んだ曽田は、相手DFの前に体を入れ、的確にタイミングを合わせて叩き込んだ。身長180cmと恵まれた体格を持ちながらも、実は曽田にとってヘディングは長年の課題だったという。


これまでのキャリアで「ヘディングシュートに積極的に取り組んでこなかった」と曽田。ボランチでプレーしていた大学時代は空中戦の競り合いはこなせても、クロスに合わせてゴールを狙う場面はほとんどなかったという。セットプレー時もボックス内に入らず、「こぼれ球を狙うことが多かった」と、無理に中に飛び込むことはなかった。

しかし今年琉球に加入し、「その恵まれた体格を生かさないのはもったいない」とコーチ陣から示唆を受け、「フォワードとしてやるなら逃げられない」と意識的にその弱点に向き合い続け、地道に練習を積んだ。
その積み重ねがついに結果として表れたのが鳥取戦の一撃である。「練習していなかったら決められていなかった」と、実感を込めて語った曽田がチームを勝利に導いた真価がここにある。

曽田の魅力は得点力だけにとどまらない。中盤出身らしい視野の広さと判断力、そして献身的な守備。「前線からのスイッチ役」としての意識を強く持ち、ハイプレスの起点としての存在感を示す。「自分が動けば後ろもついてくる」と、攻守において連動を重要視する曽田が味方の動きを促しながらチーム全体のリズムを整えている。



その一方で、結果を残した試合でも常に厳しい自己評価を下す姿勢も印象的だ。「今日はチャンスを多く作れなかった。まだまだ課題がある」と満足しないその姿勢が彼をさらに高みに押し上げている。
今節は福島とのアウェイ戦。0-1で敗れた前回対戦ではコーナーキックから「自分の前でそらされた」ことで失点した苦い記憶がある。「次は絶対にやらせない」と語る眼差しには、喫した失点のリベンジを果たそうという頼もしさが滲む。

苦手に立ち向かう姿勢、チームを動かす視座、冷静な自己分析。ゴールという結果だけでは語れないその姿が曽田の強さであり魅力である。チームの誰よりも静かな性格ながら勝利に飢え、確実に成長を続ける男が琉球の希望を背負う。

Reported by 仲本兼進