
今回は番外編として、ヴィッセル神戸アカデミー育ちの藤谷壮(レイラック滋賀FC)について書きたいと思う。
神戸市出身の藤谷は、神戸ジュニア(現U-12)から下部組織に所属。中学からアカデミーに入る選手が多いことを考えれば、かなり“血の濃い”選手と言えるだろう。U-18時代には2年連続で2種登録され、高校3年の時には17歳5ヵ月15日という早さでプロデビューも果たしている。翌2016年にはトップチームに昇格。そんな経歴とスピード感あふれるプレーに加え、人懐っこい笑顔で神戸サポーターから愛されていた。
2021年に出場機会を求めてJ2ギラヴァンツ北九州へ完全移籍。その後、J3松本山雅FCを経て、今年からJFLのレイラック滋賀FCでプレーしている。
7月21日のJFL第17節、レイラック滋賀FC vs いわてグルージャ盛岡を取材してきた。藤谷に加え、盛岡には西大伍、藤本憲明、小林祐希といった元神戸の姿もあった。
藤谷は右ウイングバックで先発出場。神戸時代はがむしゃらに走り回っていた印象だが、この日は攻める時は攻める、守る時は守るといったメリハリのあるプレーを見せていた。さらに、オーバーラップとインナーラップをうまく使いわけるなどクレバーはプレーも。J1から、J2、J3、JFLとカテゴリーを下げてしまったが、藤谷自身は着実に成長しているようだった。
試合は1-3で滋賀が敗れた。だが、何度かあった同点のチャンスをものにしていれば、また違った結果になっていたかもしれない。それくらい拮抗した試合だった。滋賀はこの敗戦で首位から陥落したが、次節の結果次第では再び首位に立つ可能性もある。滋賀初のJクラブ誕生に向け、ここからが正念場といったところだろう。






試合後、藤谷に話を聞くことができた。まずは滋賀への加入を決めた理由について。
「滋賀県初のJクラブを作りたいと。すごく熱いオファーをいただいて決めました」
Q:昨年は神戸アカデミー出身の山口真司さん(昨年度で引退)が滋賀でキャプテンを務めていた。移籍加入には何かしらの影響があった?
「真司くんが引退を発表してから滋賀への加入が決まったので…。まぁ一緒にプレーできればよかったんですけど、残念です。また会いたいです(笑)」
Q:相変わらずの豊富な運動量に加え、プレーの幅も広がった印象だが。
「(滋賀では)僕が主導というわけではなく、前の選手を見ながら空いているスペースへ動いています。そこを、もっとクオリティ高くやっていきたい。仕掛けの部分では、まだまだ縦への仕掛けが少ないので、もっと積極的にやっていければなと思います」
Q:JFLのシーズン後半に向けて、数字的な目標があれば教えてください。
「アシスト…5」
Q:謙虚ですね。
「まぁ…(笑)」

Q:今年、レイラック滋賀FCはクラブ創設20周年、ヴィッセル神戸は創設30周年です。神戸の30周年についてはどんな想いですか。
「J1リーグを2連覇して、いいチームになったなと思います。そんな神戸に自分もいたことを誇りに思いますし、ぜひとも3連覇に向けて頑張ってほしいです」
Q:神戸がJ1リーグ初優勝した時はどんな気持ちだった?
「やっぱり、うれしかったです。初瀬亮選手とか知っている選手が何人かいましたので」
Q:佐々木大樹らアカデミー育ちが頭角を現してきました。小学生からの神戸育ちとしては、彼らの活躍をどう見ていますか?
「アカデミー出身選手を増やしていきたいというのは昔から言われていました。そういう部分では今、実現できているのかなと思います。アカデミーの同期の山川哲史が今はキャプテンですからね。すごく誇らしいです」
愛くるしい笑顔を交えながら、試合とは直接関係のない質問に答えてくれた藤谷に感謝します。これからの活躍も期待しています。
Reported by 白井邦彦