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【取材ノート:今治】走り続ける新井光が今治のスタイルを体現する

2025年8月5日(火)


FC今治でプレーして3シーズン目。もともとは攻撃が得意なMFだが、チームのために力を出し切れる献身性ゆえに、守備的なタスクを担っても実に頼りになる。

チームを率いる倉石圭二監督は、90分の中で戦況を見ながらドイスボランチとアンカー、1トップと2シャドーなど、細やかに使い分けて勝機をたぐり寄せていく。その中でボランチでもアンカーでも、トップ下、シャドーでも力を発揮する。戦術理解と確かな技術、そして走り続けるスタミナがあればこそ。今季ここまで24試合中、出場停止の1試合をのぞく23試合でプレーし、22試合で先発しているのも信頼の証だ。

そんな頼れる男がJ2初ゴールを挙げたのが、3週間の中断期間を経て迎えた明治安田J2第24節、アウェイの大分トリニータ戦である。ネットを豪快に揺さぶったのは、試合開始早々の6分。チームはビルドアップする大分に積極的にプレッシャーを掛けてミスを誘発し、ボールをカットしたのがボランチの一角で先発した新井光だった。

前向きでボールを奪うと、ペナルティエリア手前のマルクス ヴィニシウスに素早く縦パスを付ける。パスを出して止まるのではなく、ブラジル人エースに大分の選手3人が厳しく寄せたことによってぽっかりと空いた目の前のスペースに走り込むと、最高のタイミングでパスが返ってきた。

「ファーストタッチがうまくいって、けっこう時間があったので、GKの位置を見ることができた」という数秒間で、シュートのコースと球種を決断。「ああいう形だとファーを狙いがちですけど、足にしっかり(ボールが)当たるイメージがあったし、試合が始まってすぐということもあって、思い切り行きました」。動きを止めずに右足を振り抜くと、シュートはニアのゴール上隅にズバリと決まった。


前から守備に行ってボールを奪い、迷わずゴールを目指す。チームの取り組みを体現するゴールだった。

「ボールを奪って最短でゴールに行けるなら、それが一番いい。カットしたとき右隣りに(持井)響太と(梅木)怜がいましたけど、前のヴィニにボールを預けて自分はスペースに走りました。

ゴールまで最短で行くにはクオリティーが伴わないとできないと、中断期間中のトレーニングで口酸っぱく言われてきましたが、そこを出せたシーンだと思います」

これが決勝点となり、チームは今季2度目の連勝を果たした。順位も一つ上げて9位となり、上位を目指す勢いが増してきた。それをさらに強めるための課題を得た大分戦でもあった。

「もう2、3点取るチャンスがあったし、チャンスそのものも、もっと作らないといけない」。その言葉の通り、追加点の重要性を改めて痛感する90分だった。後半は反撃する大分に押し込まれ、ゴール前で耐える時間が続く。追加点を奪い、リードを広げていれば、また違った展開に持って行けたのは間違いない。

とはいえ、息詰まるような守備の時間が続いたものの、ピッチの中の選手たちは自信を持って試合を運べていたようだ。

「我慢しつつ、そこまで大分に決定機を作らせていなかったので。(ヴァンフォーレ)甲府戦の教訓も生かせました」

教訓を得たのは第22節・甲府戦で、前半で2点のリードを奪いながら、後半まさかの4失点。思いがけない崩れ方をして逆転負けを喫したゲームである。

「今回は、相手にボールを持たれても慌てなかった、というか。最後のところでやらせなければいいので。そこから押し返せればベストですけど、この試合のように最後、みんなで体を張ってやらせないというところを我慢強く、意識を統一してできました。そこの違いを示せました」

前々節、甲府戦での屈辱的な大敗でチームは8戦未勝利となったが、ここからタフに逆境をはね返す。愛媛FCとのダービー、伊予決戦に1-0で勝利すると、続く大分戦もウノゼロの勝利。次節のホーム、ロアッソ熊本戦で今季初の3連勝を目指す。

「熊本は今節、首位の水戸(ホーリーホック)に逆転勝ちしていることからも分かるように、J2はどのチームも力があります。自分たちは常にチャレンジャーとして、1試合1試合、力を出し切るだけ。夏場ですけど走って戦うところはブレずにやっていければいいかな、と思います」

チームの今季のスローガン、『RE:BOOST』には、J2昇格に満足せず、さらに前進していく決意が込められている。視線の先にあるのは、J1の舞台だ。しっかりと射程に捉えながら、走り続け、戦い続ける。

Reported by 大中祐二