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【取材ノート:今治】左のアングルから新たな景色を切り開く市原亮太が、FC今治の攻撃を加速させる

2025年8月6日(水)


184cmの長身ながら、スピード豊かな攻撃参加ができる。サイドを駆け上がり、クロスを送り届ける姿は、実にダイナミックだ。

センターバックにとどまらず、3バックであれば右ウイングバック、4バックであれば右サイドバックでもプレーする。さらに最近では、試合途中により攻撃的な戦い方へとギアを上げるために、3バックから4バックに変わるタイミングで右サイドハーフとして投入されることも増えてきた。

刻々と戦況が変わる90分の中でチームが臨機応変に戦うために、さまざまな個性を提供できる。チームとともに初めて挑むJ2の舞台でも、確かな手応えを得つつある。

3週間の中断を経て再開された明治安田J2第24節・大分トリニータ戦では、3バックの左で先発した。複数のポジションでプレー可能ではあるが、利き足の右とは逆のサイドでプレーする珍しい役回りだ。このポジションで開幕から先発を続ける加藤徹也がコンディション不良でメンバー外となり、それに伴う抜てきだった。

チームにとって、大分戦は今季2度目の連勝が懸かっていた。初のJ2挑戦となる今季、序盤から13戦無敗とすばらしいスタートを切ったFC今治だったが、5月半ばから一転して8戦未勝利と苦しい流れに陥る。それを断ち切ったのが、1-0で勝利した中断前の愛媛FCとのダービー、伊予決戦だった。


迎えた大分戦は、試合の立ち上がりからアグレッシブにボールを奪い、ゴールに向かう姿勢が奏功し、6分に新井光のゴールで先制に成功。その後は追加点が奪えず、大分の反撃に耐える時間も長かったが、しのぎ切って2試合連続のウノゼロでの勝利を収めた。


9位に浮上し、再び上位をうかがう勢いを得た一戦で3バックの左で先発すると、74分には選手交代に伴って右ウイングバックにポジションを変更。フル出場して、価値ある勝利に貢献した。

DFとしてしっかり守備をしつつ、プラスアルファで自分の特徴である攻撃の部分を出していきたい。そんなプレービジョンを持ってはいたが、押し込まれる時間もかなりあった。「リスクを冒してまで攻めるのもどうかと思い」、状況を見極め、チームの勝利を第一に考えながらの90分間になった。

「得点は、最後はきれいに崩しましたけど、そこまでみんなが走っていたから取れた点でした。守備も粘り強く、泥臭く守るところがとても良かった。みんながハードワークする今治らしさは通用すると思うし、続けていきたい」

今季はここまで11試合に出場(無得点)。先発は、大分戦が4試合目だった。いつ、どんなシチュエーションで出番が回ってきてもしっかり対応できるよう、そして先発を増やすため、トレーニングに打ち込む日々だ。今季初の3連勝が懸かる第25節・ロアッソ熊本戦に向け、準備が始まったオフ明けのトレーニングでは、ミニゲーム形式で引き続き左サイドに入った。

「左サイドだと景色が全然違う。そもそも守備での体の向きが違ってくるし。でも、大分戦でも違和感なくやれたし、もう少しやってみたい気持ちはありますね」

その意欲は、全体練習後にも表れた。ピッチに居残ると、越智亮介コーチに付いてもらい、限られた狭いスペースで左足で蹴る位置にボールをコントロールする動きを繰り返す。日によっては、さらにヘディング練習も加わる。

「チームで押し込んだとき、左サイドの方がボールを持ちやすい場面もあります。今日の練習のミニゲームでも、左から持ち込んで右足でシュートを狙いましたけど、試合でも打ってみたいですね。それに左サイドで上がっていけば、右(ウイングバック)の(梅木)怜からいいクロスがどんどん上がってくる。ゴール前に入っていって、そのクロスに合わせる。そういうプレーも出していけたら」

ゴール前で相手の攻撃をしっかりとはね返しつつ、機を見て攻め上がり、チームをさらに勢いづかせる。右サイドだけではなく、左サイドからもチームに貢献するイメージが膨らむ。

「今治は、みんながハードワークできるチームです。それでも試合になれば、負けている状況や、同点の場面も出てくる。そんなときに自分が後ろから上がっていけば、自分に付いてくるのは相手のFWだろうし、そこでマークを外すことによって“プラス1”を作れる。

そうやって相手を動かすことは今年、J2になってもできています。守備を第一にしつつ、相手ゴール前にも入っていきたいですね。それが自分の良さでもあるし、そういう部分をもっと出していければ」

攻めて、相手のカウンターになれば、その俊足を飛ばして戻ればいい。チームの後方から、上昇気流を巻き起こす。

Reported by 大中祐二