素晴らしい直接FKのゴールだった。明治安田J2リーグ第24節で、ジェフユナイテッド千葉は43分、いわきFCに先制点を奪われたが、69分、前半に決定機を決めきれなかった椿直起がシュートを決めて同点に追いついていた。すると、74分、日高大のスローインのボールを受けた森海渡がファウルを受け、ペナルティエリア前のいい位置で千葉が直接FKを得る。キッカーとして直接FKのポイントに立ったのは、その試合で後半開始時から出場したエドゥアルドと71分に交代出場したばかりの日高大。2人のところへ呉屋大翔が何か話しに行き、どちらがどのようなFKを蹴るのか注目されるところ、75分、思い切りよく左足を振り抜いたのは日高だった。日高が蹴ったボールはいわきFCのGK佐々木雅士とゴールポストの間のわずかなスペースへ飛び、ゴールポストに当たってゴールイン。日高の見事な直接FKのゴールで、千葉が2-1と逆転した。
「エドゥがすごく蹴りたそうだったんですけど、なぜか自分はすごく自信があったので、お願いして蹴らせてもらいました。あの位置からゴールを狙うとなると、あそこ(GKとゴールポストの間のスペース)しかないかなということで、イメージどおりのキックでしたけど、あんなにうまくいくとは思わなかったです」
今シーズンの日高は、6月11日の天皇杯2回戦での左足の負傷、そして両サイドバックとボランチでプレーできる前貴之が今シーズン加入したことなどから、第23節までのJ2リーグ戦の出場試合数は14(スタメン出場は11試合)。いわきFCから加入した2023シーズンから不動の左サイドバックとして活躍してきたが、今シーズンは出場機会が減っていた。いわきとの前回対戦だった今シーズンのJ2リーグ開幕戦はベンチ入りしたものの出場なし。それだけに、前述の天皇杯2回戦以来の公式戦出場となった、このいわき戦にかける想いは強かった。
「対いわきというところで意識せざるを得ない相手だし、復帰戦というところでまた意識せざるを得ないという状況を楽しみながら、出場する機会を待っていた自分がいるのを分かっていたので。ピッチに入る時は思い切ってやるだけという気持ちで、それだけをフォーカスしてこの1週間準備して、試合前のウォーミングアップからやってきたつもりです」
ゴール後のパフォーマンスの『ジェフ三唱』は、日高の復帰を待ち望んでいた千葉サポーターを両手で煽ってから行った。
「お客さんもすごくたくさん入ってくれて、ここ最近はホームゲームで(勝てなくて)気持ちよく帰ってもらっていなかったので、それを意識するところはありました」
ただ、試合は83分にFKから失点し、2-2の引き分けに終わった。日高自身、得点したものの自分のパフォーマンスには納得していなかった。
「途中から出て自分のいいところと周りの選手のいいところを結び付けようと思いながらやっていたんですけど、自分の長所はあまり出せなかったなと思います。途中から出ても自分の良さを出せるように頑張らないといけないなと思いました。バッキー(椿)との連係もありますし、そういうところで人数をかけてもうちょっと時間を作って、自分たちのペースでポケットを取りに行くこととかをやりたかったです。一発のパスで仕留めようと思い過ぎたのか、やっぱり攻撃の『作り』のところで焦ってしまったかなというか。一発のパスでも狙えていないことはないので、もちろんそれでうまくいけば、それに越したことはないんですけど、僕が入っているという意味も含めてそういう形を増やしていきたいなというのはありますね。交代出場だと流れをつかむのは難しいんですけど、ボールが行ったり来たりというオープンな展開の場面でも落ち着かせるというか、そこで全員が息を整える時間を作ってあげるのも僕の仕事だと思っているので。でも、今日はそれがちょっとうまくできなかったというのはあります」
続く第25節は第14節で1-2と敗れたRB大宮アルディージャが相手で、大宮に複数の決定機を作られた。だが、GKのホセ スアレスの再三のスーパーセーブやゴール前での体を張った粘り強い守備で失点を阻止。47分にカルリーニョス ジュニオが先制点を奪った後半は、前半よりも攻守でペースをつかんで試合を進め、最終的には1-0で勝ちきった。
「強度を高くやれたところはあるんですけど、自分も含めて最後のクオリティというところはもっと上げていきたいなと思うので、それを次の試合(第26節・徳島ヴォルティス戦)で少しでも修正できたらなと思います。個人的には自分のクオリティを出せなかったという課題が残っていますけど、ただ、攻撃面ではチームの狙いとしてやらなければいけないところは明確に、(田口)泰士さんとエドゥを中心にできたかなとは思います。全体のイメージの共有は、近くの選手とのつながりも含めて徐々にやれている気はします。でも、大宮戦は1点しか取れていないので、もっと密にコミュニケーションをとって最後のところ以外でもクオリティを上げていきたいです」
大宮戦での日高の個人的なプレーでいえば、ペナルティエリア前の中央に入って行ってこぼれ球を拾い、利き足とは逆の右足で積極的にシュートを打ってゴールを狙う場面もあった。攻守両面で本来のキレを取り戻しつつあるように見え、徳島戦への期待が高まる。
「(コンディションは)まだ100パーセントとは言えないですけど、上がってきているとは思います。いつもどおり勝ちに行く姿勢と戦う姿勢で、見ている人を楽しませるような試合を僕たち主導でやっていきたいなと思っています」
堅守を誇る徳島からゴールを奪い、失点を防いで勝ちきるには、攻守両面で『個』で強度を高く、粘り強くプレーすることに加え、「組織的にしっかりとプレーすることがポイントなのは間違いない」と日高は話す。自分だからこそできる、味方を助けるプレーという仕事に日高は全力を尽くす。
Reported by 赤沼圭子