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【取材ノート:藤枝】3試合連続ドロー中の藤枝MYFC。あと一歩の勝ち切る力をつけるために

2025年8月15日(金)
明治安田J2リーグ第21節から5試合負けなしだが、直近は3戦連続ドローと勝ちきれない面も出ている藤枝MYFC。仙台戦と山口戦は先制しながら守りきれず、前節・秋田戦は守備の課題は改善されたが「攻撃の恐さが足りなかった」(須藤大輔監督)ことでスコアレスドロー。どれも内容的には勝つべきゲームだった。残り13試合でプレーオフ圏内とは勝点13差なので、6位以内に滑り込むには本当にギリギリの瀬戸際となった中、今節からは勝ち切る流れを作っていくことが欠かせない。


得点後の試合運びに大きな課題が

それを可能にするサッカーの質という面は、チーム全体でかなり蓄えてきたことは間違いない。そこからもう一つ殻を破るには何が必要なのか。複数人に問いかけてみると、くしくも指揮官とキャプテンから同じ答えが返ってきた。

「先制点を奪った後のゲームの運び方に自分たちの弱さが出ているのかなと思います。僕らのサッカーから言えば、もう1点、もう2点と追加点を取りに行かなきゃいけないのに、今は安全なプレーに逃げてしまうことが多いと自分たちでも感じています。それで結果的に自分たちのボールを持つ時間が減る、相手に押し込まれる時間が増える、後手に回って点を決められてしまうという悪循環になっていると思います。とくに夏場は自分たちがボールを持って動かすことによって、相手の疲労にもつながると思うし、1点取っても攻め続けて2点3点取るような勢いを出していくことが本当に大事だと思います」(中川創)

「まず一番は、点を取った後の立ち振る舞いですね。その1点を守り切ろうとする意識が出てしまっている。山口戦でも先制したら守備も攻撃もおとなしくなってしまった。例えば秋田戦のような試合で点が取れなかったら、次の試合では点を取っても『1点しか取れないんじゃないか』という幻影に惑わされがちだけど、そうじゃなくて我々は3点でも取れるよというマインドでやることが大事。1点取っても0-0もしくは0-1の気持ちでやり続ける、よりギアを上げるということが必要だし、そこはメンタル的なことだけだと思います」(須藤監督)

仙台戦と山口戦では、2人が言った通りの課題が表われていた。「攻撃は最大の防御」と言うが、藤枝はまさにそれを目指しているチームであり、リスクを恐れて安全に戦おうとして勝てるスタイルやチーム構成ではない。

須藤監督が言うようにメンタル面が大きく影響する要素だが、そこは全員で確認できている。あとは公式戦の中でどれだけそこを表現できるかが、残り13試合で大きな見どころとなってくる。

個々の意識と練習への取り組み方、試合中の大局観も重要に

前節・秋田戦は、アウェイのボールが走らないピッチでなかなか自分たちのリズムを出すことができず、秋田の土俵で戦う時間が多くなった。その中で球際のバトルや強度、ゴール前での寄せという面でやるべきことを全員で表現し、無失点に抑えることができたのは大きな収穫だった。あとは、難しい展開でも点を取り切る力を出せるかどうかの勝負になる。

センターバックながら今季3ゴール2アシストと攻撃で大きな働きを見せている久富良輔は、そこも踏まえてやるべきことを指摘する。

「個人の能力だけで片付けちゃいけないけど、1人1人が自分が取って勝つとか、自分で1人でも守り切るみたいな力や覚悟を強く持って試合に臨むことが大事かなとあらためて思っています。藤枝はそういうパフォーマンスができるときもありますけど、逆にどちらもできない試合があると思うので、それを毎試合出せるようにすることが大事だと思います。毎日の練習で、本当に決め切るための技術を高めているのか、守備で寄せ切るトレーニングをしてるのか。自分を信じて試合でそれを発揮できるのか。個人個人がどれだけ意識して変わっていけるかだということは僕自身もすごく感じてますし、その積み重ねでチーム全体が変わっていくことが、プレーオフに近づく第一歩かなと思います」(久富)

そうした強い意識や覚悟を大前提にしつつ、攻撃では冷静さや大局的な視点も必要だとボランチの世瀬啓人は言う。

「速い攻撃で攻め切ることは大事ですけど、相手コートでゆっくり攻める時間を作ることも状況によっては必要だと思いますし、攻撃の緩急はつけないと相手は対応しやすいと思います。もちろんシュートは積極的に狙っていくんですけど、どれだけ良い状態でシュートを打てるかというのも大事ですし、その形を作るために相手コートでどんな関わりができるか。たとえば秋田とか山口はブロック組んだら守備が堅いというイメージがみんなの中であって(ブロックが整う前に)早く攻めたいという意識が出たと思いますが、その中でもボールを動かしながら相手にわざとプレスに来させてブロックを崩すとか、そういうこともできないといけないなと思いました。そうすることで、行ったり来たりじゃなくて自分たちの時間を作ることもできると思うので、そこも大事かなと思います」(世瀬)

攻め急いでやみくもに突っ込んでボールを失い、カウンターを食らうというシーンも今の藤枝にはよく見られる。ゴールを最優先にして狙いに行く貪欲さと、試合の流れを読んで時間を使う作るべきところは使うという冷静さの的確な使い分けは簡単ではない。ただ、チームとして一つ殻を破るという意味では、やはり必要なことだろう。そこは須藤監督と中川創が指摘する得点後の試合運びにも影響してくるからだ。

今回出てきた話がすべてではないし、やるべきことは多い。ただ、どれも藤枝の選手たちにできないことではない。自分の力とチームのスタイルを信じて、リーグの残り3分の1に向けてどれだけ勝ち切る力を高めていけるのか。ひとつきっかけをつかめれば、各要素が相乗効果を生んで成長速度が急加速する可能性もある。

そんな好循環を早期に生み出すことができれば、プレーオフへの滑り込みも奇跡ではなくなるのではないだろうか。

Reported by 前島芳雄