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【取材ノート:今治】この夏、FC今治で安井拓也は全力を誓う

2025年8月22日(金)


FC今治は明治安田J2第26節、アウェイでカターレ富山に勝利し、連勝を今季最多の4に伸ばした。前半で2点リードする優勢から一転、後半開始早々にヴィニシウス ディニスが退場して苦しい展開になったが、途中出場の選手を含め、チーム一丸となって勝ち切った。


順位は9位で前節から変わらず。しかし、プレーオフ出場圏内の6位・ベガルタ仙台との勝点差を3に縮め、勢いづいている。今季残り12試合プラス、プレーオフ。J1を視野に捉えての戦いが続く。

初めてのJ2に挑戦中の今治が、夏の移籍ウインドーが閉じる間際の8月19日、ジェフユナイテッド千葉から期限付き移籍で獲得したのがMF安井拓也だ。ヴィッセル神戸のアカデミーで鍛え、トップ昇格を果たした安井は、2023年にはFC町田ゼルビアのJ1昇格に貢献。J1、J2での経験豊富な技巧派MFに、今治が即戦力となることを期待するのも当然だろう。

安井が今治に求めているのも、今すぐに自身の力を存分に発揮することだ。昨年6月、天皇杯2回戦の筑波大学戦でゴールを決めた安井だったが、まさにその際の交錯プレーで右すねを骨折。全治6カ月、リハビリにさらなる時間を要する大変な重傷を負った。

2025シーズンがスタートしても、いまだリハビリの最中。シーズン序盤はプレーできない安井を完全移籍で獲得したのが千葉だった。

迎えた第3節・モンテディオ山形戦(○3-2)に途中出場し、ついに復帰を果たすと、同じく途中出場となった第6節・ヴァンフォーレ甲府戦では試合のまさにラストプレーという最後の最後にこぼれ球を押し込み、劇的な千葉での初ゴール。チームを2-1の逆転勝利、そして開幕から6連勝に導く大仕事をやってのけた。


アシックス里山スタジアム(アシさと)での第15節・今治戦(○0-1)にも途中出場した安井だったが、思うようにプレー時間は伸びていかなかった。リーグ戦は26節終了時点で7試合出場1ゴール、先発は2試合にとどまり、自分と向き合う時間が続いた。

そんな中で今治から届いたオファーが、ズシリと響いた。千葉が開幕から昇格争いを繰り広げる一方で、今治はシーズン序盤、13戦負けなしの快進撃を見せたあと、8戦未勝利と苦しい状況に陥った。そこから4連勝し、再び上位をうかがうのが現在地である。

「千葉で出場機会が限られる中で話をいただきました。今治は今、調子が良くて、J1を狙える状況で自分の力を必要としてもらえた。『こういうふうに貢献してほしい』という話にわくわくして、ぜひ力になりたいと移籍を決断しました」

今治が特に求めるのは、攻撃での貢献だ。チームの重要なコンセプトの一つが、アグレッシブにボールを奪いに行くことである。そしてひとたびボールを奪えば、一気に相手ゴールを目指す。その局面を含めて、中継役としてクオリティーを発揮する。技巧派MFへの期待は高い。

「チームとしてシュートへ行く回数は多い。だからこそ、その一つ前のボールでの自分の質、精度、回数を増やすところで自分の良さをどんどん出して、チームのプラスになりたいです」

対戦相手として、アシさとのピッチに立ったのは16分間。そのときのインパクトもあった。

「千葉の一員として対戦しましたが、今治はとても良いサッカーをするチームだと感じました。J3から上がってきたばかりでJ1をしっかり狙える位置にいるのが、そもそもすばらしいし、攻撃的で魅力的なサッカーでしたから。全員がハードワークして、対戦するととても嫌な相手でしたが、ベンチスタートの自分は最初、外から見ていても途中出場でプレーしても魅力を感じたし、それもあって(期限付き移籍を)決断したところがあります」

チームに最大限の貢献をするためにも、個人の数字を重視してもいる。アシストはもちろん、ゴールにこだわるのは当然だ。

「自分自身もフィニッシュに絡んでいきたいです。そのためには運動量、ハードワークが大事になってくる。その中で自分自身の特徴を発揮することで、より結果につながるし、しっかりコミュニケーションを取りながらやっていければ。数字を求めることで自分も成長できるし、全力でプレーします」

今季最終節のアウェイ、フクダ電子アリーナでの第38節・千葉戦は、契約上、出場することはない。プレーオフを含めても、残り試合は限られる。その中で、今治のために持てる力のすべてを発揮する日々が始まった。

Reported by 大中祐二
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