
FC今治の連勝が5で止まったホーム、アシックス里山スタジアムでの明治安田J2第28節・いわきFC戦。前半終了間際にFKで先制されると、後半開始早々、カウンターから追加点を奪われて0-2で敗れた。
セットプレー、カウンターと、最も警戒していた相手の術中にはまっての完封負けである。それだけに悔しさがいや増す。内容に目を向ければ、今治の前半のシュートは1本、後半は6本で、いわきは前半6本、後半1本と対照的だ。押し込まれ、守備の時間が長かった前半、いわきに12本の直接FKを与えた。連続する相手のセットプレーにも集中を切らさずしのぎ続けたが、ハーフタイム目前の44分に、そのうちの1本で仕留められてしまった。
今治の反撃が後半のいわきのシュートを1本に抑えた部分はある。だがリードを2点に広げ、いわきがリスク管理に比重を移したことを反映する数字でもあるだろう。
してやられての完敗が、チームを奮い立たせている。何といっても、ここから上位との直接対決が続く。28節を終えて8位の今治は、昇格プレーオフ圏内の6位・ベガルタ仙台とは勝点4差、自動昇格圏内の2位・ジェフユナイテッド千葉とは8差だ。そして今季残り10試合で、2位の千葉から7位の磐田まで6チームとの対戦を残す。たちまち次節はアウェイでの磐田戦である。
どうすれば、ここから加速できるのか。いわき戦の完敗をトリガーにするため、倉石圭二監督は次のように考える。
「いわき戦の前半は、守備はある程度うまく進んでいる感触はありました。しかし見方を変えれば、われわれが攻撃できていなかったということです。それは自分たちが、どこで守備をするのかということにも関係してくる。やはり、ちょっと低かったですね。
相手がマンツーマンで来ているからこそ、立ち上がりから裏返す攻撃ができればよかった。あるいはがっつり食いつかせることによって、特にヴィニ(マルクス ヴィニシウス)のところで1対1の優位性を発揮できたはずです。しかし、そうした作業をやらせてもらえませんでした」
そして勝負どころが浮かび上がる。いわきの田村雄三監督は試合後の会見で、後ろを「プラス1」ではなく数的同数で守る替わりに、今治の3バックに対して3人でプレッシャーを掛け、攻め手を封じに行ったことを明かした。倉石監督も、まさにそこでの攻防が試合の結果を左右したと捉えている。
「自分たちの後ろで数的優位を作る、時間を作ることができませんでした。もう少し私が早くベンチから提示するべきだったのか、ピッチの中で選手たちが変化させていくのか。その課題が出ました。
相手は2トップに中盤の石渡ネルソン選手が加わって3枚で前から来たんですけど、その分、中盤ではこちらが数的優位になれました。なので、ビルドアップの段階で安井(拓也)、梶浦(勇輝)、(ヴィニシウス)ディニスのうち、浮いているところに後ろからパスを刺せれば数的優位を生かせたし、それによってセンターバック3人のところでも時間を作ることができたはずです。いわき戦では、自分たちのそういう振る舞いが足りませんでしたね」
実際、前半の今治のシュートは35分、弓場堅真が右クロスをゴール前で競ったこぼれから安井が狙った1本だけだったが、そこに至る過程において中盤で浮いていた安井が右サイドの崩しに関わり、いわきのタイトな守備をかいくぐりながら、フィニッシュまで持ち込むことができた。
ならば、その回数を増やしていくという改善の方向性も見えてくる。いわき戦から磐田戦までの2週間、倉石監督は強度に加え、精度を上げることにこだわりながら、準備を進めている。練度を高めるチームは、トーナメントのような緊張感漂う上位との連戦に、いよいよ臨んでいくことになる。
「プレーオフ圏内を目指し、さらに自動昇格争いをする。このシチュエーションでJ2の上位チームと当たることに感謝しています。もっとも、よく6ポイントマッチといわれますが、実際に積み上げられるのは3ポイントですからね(笑)。意識しすぎず、シビアに行きたい。
上位との対戦ですが、われわれがやることは変わりません。泥臭く、したたかに勝利を目指す。それだけです。こういう機会を、どれだけ楽しめるか。相手に噛みつくだけではなく、噛みちぎるところまでいかないと」
強度、精度が増せば、練度が高まる。今治一丸となって、相手の対策が追いつかないスピード感で勝ち上がっていく。
Reported by 大中祐二