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【取材ノート:今治】完敗直後に『受け入れられない』という表情を浮かべていたマルクス ヴィニシウスは、今、何を見据えるのか

2025年9月12日(金)


FC今治のキャプテンとして、試合後、サポーターにあいさつするために先頭に立つその表情は、『とうてい、この結果は受け入れられない』と言わんばかりに厳しく、険しいものだった。0-2で完封され、チームの連勝が5でストップした明治安田J2第28節のいわきFC戦の舞台はホームのアシックス里山スタジアムだっただけに、なおさら気持ちは熱くなった。


「悪いゲームをしてしまいました。自分たちが準備してきたものを、まったく見せられない試合だった。その前の試合(第27節○2-1ブラウブリッツ秋田)でできていたことも、まったくできなかったし」

スタイルを取り戻し、調子を上げてきたいわきに対し、拮抗した戦いを繰り広げられながら、前半終了間際に相手が得意とするセットプレーから失点。さらに反撃に出た後半早々、カウンターから追加点を奪われての完敗だった。

「ゲームを作り出す過程でロングボールばかりになってしまいました。でも今治は足元でつないでいくポゼッションがとても上手なチームです。いわき戦も状況に応じて足元でつないでいくことをやらないといけなかった」

高強度のマンツーマンでの守備を基盤に、パワフルでスピーディーな攻撃を仕掛けてくるいわきに対して、決して腰が引けた戦いになったわけではない。ただ、全力で応戦する中で、知らず知らずのうちにロングボールに偏っていったことを、悔しがった。

「なぜなら、その前の秋田も、いわきと似たサッカーだったからです。秋田戦では、それでも下からボールをつないでいって、ゴールにつなげました。練習でもしっかり取り組み、やれていることなんです。だったら、なおさら試合でやらないと。逆にいわきは練習して準備してきたことをやって、2得点した。それで負けたのだから、とても残念です」

秋田戦で仲間がつないだボールを受け、最後、抜け出して2ゴールを挙げたのが自分自身だからこそ、『俺たちは、やれる!』との思いは強い。そして、ここから自分たち自身との戦いになってくることに、気を引き締めている。

「上位で戦うためにも、いわき戦はとても大切な試合でした。何より、ホームだったし。それなのに、ああいう負け方をしたのだから許しがたい結果だったけれど、しっかりと受け止めて、ここからの10試合に臨みます。

いわき戦では、枠内シュートがほとんどありませんでした。一番、フラストレーションが溜まるのは、自分たちが得意とすることを、試合でできないことなんです。

自分たちが得意とするのは攻撃です。シュートを枠内に飛ばし、ゴールを決めて、勝っていくことです。ここから負けたら終わりの決勝トーナメントのつもりで、すべての試合に臨んでいきます」

28節を終えて8位の今治は、昇格プレーオフ圏内の6位・ベガルタ仙台との勝点差は4、自動昇格圏内の2位・ジェフユナイテッド千葉との勝点差は8だ。そして残り10試合で、2位の千葉から7位のジュビロ磐田まで、6チームとの対戦を残す。ライバルたちを倒し、自分たちの力で勝ち上がっていくことができる、最高のシチュエーションだ。たちまち次節は、アウェイで磐田との対戦となる。

「J1優勝など磐田はとても歴史のあるクラブで、サポーターが熱いことも、よく分かっています。その上で自分たちは磐田をしっかり分析し、隙を逃さず、今治のストロングを生かしていきます。

大事なのは、相手のことばかり考えるのではなく、自分たちにできることをやれるかどうか、ということです。アウェイで難しい試合になるからこそ、アウェイでの勝利は格別にすばらしいものになります。自分たちは自覚と責任感とをもって、しっかり準備しています。勝って、目標であるJ1昇格に近づいていきます」

いわき戦に敗戦したとき、『受け入れられない』という表情をしていたキャプテンは、すでにその結果を受け止め、乗り越えて先に進むため、しっかりと前を向いている。

Reported by 大中祐二