明治安田J1は残り10試合となり、東京ヴェルディは現在14位(8勝8分12敗、勝点32)につける。目下の目標は至上命題のJ1残留だが、その鍵を握るのは、やはりシーズン通しての大きな課題となっている「得点」だろう。
そこで注目したいのがFW白井亮丞だ。高校3年次の2023シーズンから東京ヴェルディユース選手として2種登録でトップチームに在籍している。この年の天皇杯では2試合に出場し、2戦目のFC東京戦『東京ダービー』では途中出場ながら、投入2分後に同点ゴールを決め、ファン・サポーターに強烈にアピールしてみせた。
トップ昇格後、昨季はケガもあって1試合も出場することができなかったが、今季はキャンプから存在感を示しており、ブレイクが期待されていた。
しかし、ここまで28試合を終え出場は8試合、137分。スタメン起用は1試合にとどまり、ゴールも挙げられていない。課題とされてきた守備面の改善など、成長はピッチ上でも示してはいるが、それでもコンスタントに試合に出たり、結果を残したりができていない。その現実に誰よりももどかしさを感じているのは白井自身であり、また、原因も己が一番理解している。
「(レギュラーで出ている)ソメくん(染野唯月)は、競り合いや起点になるという部分でチームを支えている存在だと思うのですが、僕はそれができていない。でも、この体格(185cm)である以上、絶対にやらなければいけないことだとも思っています。ただ、試合に出て、僕がチームのために貢献するとなった時に、起点はもちろんですが、がむしゃらにやって、背後をついたりしての得点の部分なのかなとも思ったりもしていて。だからというか、ユースの時のボールの受け方ややり方が抜けない部分があって。当然、ユースとトップは違うので、割り切ってやらなければいけないのは理解しているのですが、どうしても理想というか、『こういう風に背後でボールを受けられたらな』とか、『味方がここまで運んできてくれたらうまく背後をとれるのにな』とか思いながら、体が勝手に動いちゃうんです。それじゃあダメなんですよね。やはり、チームのために身を粉にしてやってかなければ試合にも使ってもらえないと思うので、練習からソメくんみたいに動き出しやチームのために体を張るところをきちんと身につけて、プラス、自分の持ち味を出すところをしっかりと出して、ソメくんとか他の選手との違いも出せるようになりたいなと思っています」
とはいえ、簡単に改善できるものでもないのが“癖”というもの。「体を張る」部分に関しては、以前からずっと城福浩監督はじめ、森下仁志コーチ、チームの先輩選手たちからも常に言われ続けてきているという。
「『一歩出せ』とか『最後、足を当てろ』と言われるのですが、わかっていてもどうしてもそれが克服できていないんです」
そんななか、あらためて「本気でその課題と真剣に向き合わなければ」と思わされる出来事があった。7月にチームを去った翁長聖(V・ファーレン長崎)からの餞別の言葉だった。
「ひじくんから『おまえ、体当てられても倒れなかったら世界変わるぞ』って言われて。たぶん、もうチームからいなくなるって決めてたから教えてくれたと思うんですけど」
日頃の練習でも、ファウルかファウルじゃないかにかかわらずよく倒れるということは、白井自身自覚しているという。試合も含め、何度も何度も繰り返し「こけるな」「踏ん張れ」「力強くなれ」と、周りの選手からも、監督、コーチからも言われているだけに、「あまりに言われすぎて、正直、素直に聞き入れられなくなっていた部分もあったのかもしれない」と我が身を振り返る。だが、さすが翁長である。
「ひじくんが言ってくれたのが風呂場で。ちょうど2人の時だったので、ものすごく胸に刺さりました」
人前ではなく、個人的に、じっくりと言葉の届くタイミングを見計らっての気遣いだったに違いない。心の底から「世界を変えたい」と20歳FWは思った。
「先に体をぶつけるプレーの塊みたいな人なので、そのひじくんが言うんだから本当にそうだなと納得しました。ひじくんが言ってくれることは、絶対に間違いないんで。せっかく最後に言ってくれたんだから、僕自身、やりたくないこと、苦手なことでも割り切って、そういうプレーを習慣づけていくしかないなと、あらためて決意しました」
先日行われた練習試合のあと、城福監督はきっぱりと言った。「いまは、チャンスは平等に与えるという時期ではない。ここからはよりシビアになっていく」と。新加入選手も加わり、白井にとっても、ポジション争いがこれまで以上に厳しいものとなっていくだろう。そこをどう生き残っていくか。ポテンシャルの見せどころだ。
「今シーズン中に1点でも取れば、来季へ向けても大きな自信になって、すべての流れが変わってくると思うんです。残り10試合ありますが、なるべく早めにチームのためにも1点を取って、残留を決めたいと思います」
アカデミー出身選手だからこそ背負っていくべきこと、生え抜き選手だからできることがあることを、白井はしっかりと受け止めている。
「これから僕らの世代が、(森田)晃樹くんたちがやったみたいに、中心になってヴェルディを支えていかなければいけない。そのためにも、少しでも早く1点取って、苦手なプレーもしっかりとやって、城福さんが求めているサッカーを体現したい。ゴールでチームを勝たせられる選手になりたいです」
9月15日(月)『東京ダービー』。再びファン・サポーターに衝撃を与えるには最高の舞台だ。
Reported by 上岡真里江
そこで注目したいのがFW白井亮丞だ。高校3年次の2023シーズンから東京ヴェルディユース選手として2種登録でトップチームに在籍している。この年の天皇杯では2試合に出場し、2戦目のFC東京戦『東京ダービー』では途中出場ながら、投入2分後に同点ゴールを決め、ファン・サポーターに強烈にアピールしてみせた。
トップ昇格後、昨季はケガもあって1試合も出場することができなかったが、今季はキャンプから存在感を示しており、ブレイクが期待されていた。
しかし、ここまで28試合を終え出場は8試合、137分。スタメン起用は1試合にとどまり、ゴールも挙げられていない。課題とされてきた守備面の改善など、成長はピッチ上でも示してはいるが、それでもコンスタントに試合に出たり、結果を残したりができていない。その現実に誰よりももどかしさを感じているのは白井自身であり、また、原因も己が一番理解している。
「(レギュラーで出ている)ソメくん(染野唯月)は、競り合いや起点になるという部分でチームを支えている存在だと思うのですが、僕はそれができていない。でも、この体格(185cm)である以上、絶対にやらなければいけないことだとも思っています。ただ、試合に出て、僕がチームのために貢献するとなった時に、起点はもちろんですが、がむしゃらにやって、背後をついたりしての得点の部分なのかなとも思ったりもしていて。だからというか、ユースの時のボールの受け方ややり方が抜けない部分があって。当然、ユースとトップは違うので、割り切ってやらなければいけないのは理解しているのですが、どうしても理想というか、『こういう風に背後でボールを受けられたらな』とか、『味方がここまで運んできてくれたらうまく背後をとれるのにな』とか思いながら、体が勝手に動いちゃうんです。それじゃあダメなんですよね。やはり、チームのために身を粉にしてやってかなければ試合にも使ってもらえないと思うので、練習からソメくんみたいに動き出しやチームのために体を張るところをきちんと身につけて、プラス、自分の持ち味を出すところをしっかりと出して、ソメくんとか他の選手との違いも出せるようになりたいなと思っています」
とはいえ、簡単に改善できるものでもないのが“癖”というもの。「体を張る」部分に関しては、以前からずっと城福浩監督はじめ、森下仁志コーチ、チームの先輩選手たちからも常に言われ続けてきているという。
「『一歩出せ』とか『最後、足を当てろ』と言われるのですが、わかっていてもどうしてもそれが克服できていないんです」
そんななか、あらためて「本気でその課題と真剣に向き合わなければ」と思わされる出来事があった。7月にチームを去った翁長聖(V・ファーレン長崎)からの餞別の言葉だった。
「ひじくんから『おまえ、体当てられても倒れなかったら世界変わるぞ』って言われて。たぶん、もうチームからいなくなるって決めてたから教えてくれたと思うんですけど」
日頃の練習でも、ファウルかファウルじゃないかにかかわらずよく倒れるということは、白井自身自覚しているという。試合も含め、何度も何度も繰り返し「こけるな」「踏ん張れ」「力強くなれ」と、周りの選手からも、監督、コーチからも言われているだけに、「あまりに言われすぎて、正直、素直に聞き入れられなくなっていた部分もあったのかもしれない」と我が身を振り返る。だが、さすが翁長である。
「ひじくんが言ってくれたのが風呂場で。ちょうど2人の時だったので、ものすごく胸に刺さりました」
人前ではなく、個人的に、じっくりと言葉の届くタイミングを見計らっての気遣いだったに違いない。心の底から「世界を変えたい」と20歳FWは思った。
「先に体をぶつけるプレーの塊みたいな人なので、そのひじくんが言うんだから本当にそうだなと納得しました。ひじくんが言ってくれることは、絶対に間違いないんで。せっかく最後に言ってくれたんだから、僕自身、やりたくないこと、苦手なことでも割り切って、そういうプレーを習慣づけていくしかないなと、あらためて決意しました」
先日行われた練習試合のあと、城福監督はきっぱりと言った。「いまは、チャンスは平等に与えるという時期ではない。ここからはよりシビアになっていく」と。新加入選手も加わり、白井にとっても、ポジション争いがこれまで以上に厳しいものとなっていくだろう。そこをどう生き残っていくか。ポテンシャルの見せどころだ。
「今シーズン中に1点でも取れば、来季へ向けても大きな自信になって、すべての流れが変わってくると思うんです。残り10試合ありますが、なるべく早めにチームのためにも1点を取って、残留を決めたいと思います」
アカデミー出身選手だからこそ背負っていくべきこと、生え抜き選手だからできることがあることを、白井はしっかりと受け止めている。
「これから僕らの世代が、(森田)晃樹くんたちがやったみたいに、中心になってヴェルディを支えていかなければいけない。そのためにも、少しでも早く1点取って、苦手なプレーもしっかりとやって、城福さんが求めているサッカーを体現したい。ゴールでチームを勝たせられる選手になりたいです」
9月15日(月)『東京ダービー』。再びファン・サポーターに衝撃を与えるには最高の舞台だ。
Reported by 上岡真里江