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【取材ノート:琉球】突然の出番で示した大和優槻の確かな成長

2025年9月18日(木)


明治安田J3も残り12試合という状況で迎えた前節の金沢戦(○1-0)。J2昇格プレーオフ圏を狙う両者のつばぜり合いは、前半37分に津覇実樹がプロ初ゴールを決め、琉球が先制に成功する。だが津覇はその直後、金沢の加藤大樹との空中戦の末に負傷退場というアクシデントに見舞われる。この緊急事態、背番号22・大和優槻に出番が訪れた。

突然の交代。それでも大和の表情に焦りはなかった。巡ってきた機会を冷静に受け止め、「ここで自分ができることを示そう」という思いを胸にピッチへと歩みを進めた。今季7試合目の出場は、22歳の若きセンターバックにとって自らの成長を証明する絶好の機会だった。



投入直後は「前半をしっかり締めること」を意識。後半に入ると金沢の攻撃が厚みを増し、シュート数は前半よりも約2倍の9本に達した。ただそれでも大和は冷静に対応した。空中戦では187cmの高さを生かしてゴールキックのターゲット役を務め、1対1の場面でも体をぶつけて五分の勝負に持ち込む。フィジカルコーチとの筋力トレーニングで磨いた「反発の力」が、確かな強さとなって現れた。

また、守るだけの存在にとどまらない。3バックの両脇に立つ選手に求められるのは、守備的な選手が攻撃参加する「プラスワン」だと自覚している。後半序盤には、裏へと抜け出しクロスを上げる場面を作ったり、富所悠へ差し込むパスでリズムを与えたりした。「縦パスは(柏)ユースの頃からの強み。琉球に来て、また出せるようになった」と語るその言葉通り、彼のボール運びはチームに新しい可能性を示した。

73分、相手選手へのチャレンジでイエローカードを受けたが、それも積極的な守備意識の表れ。終盤には3試合連続ゴール中の土信田悠生の決定機を阻止するカットも見せ、このまま琉球はウノゼロで勝利。GK佐藤久弥のクリーンシートとともに、大和の粘り強い守備も勝点3に寄与したことは間違いない。



その大和の姿を平川忠亮監督も高く評価している。
「想像以上に難しい状況での入りだったと思うんですよ、あのアクシデントで。それでもいかに彼が準備してきたかが非常に現れた試合だった」と、彼の冷静な対応を称賛。「日頃の練習から彼の姿勢は素晴らしい。紅白戦でどちらのチームに入ってもベストを尽くし、声をかけてチームを鼓舞している。だからこそ突然の出番でもああいうパフォーマンスが出せる」と、日常の積み重ねを指揮官は評価した。

大和自身、今季は開幕戦から2試合連続で出場機会を得ながらもミスで悔しい経験をし、第3節以降はスタメンから離れる苦しい時期を過ごした。それでも「常に自分に矢印を向け、練習で手を抜かない」姿勢を貫き、再びピッチに立つ準備をしてきた。彼は監督が語る「経験が財産になる」という言葉を体現する存在へと変わりつつある。



「誰が出ても役割を果たせるようになってきている」と平川監督は語る。大和はまさにその象徴的な一人だ。センターバックとして「ゼロで守る」強さを持ちながら、攻撃参加で新たな脅威を与えることができれば、琉球の終盤戦に大きな力をもたらすだろう。
「守備のゼロにこだわるのはもちろん、攻撃面でチームにプラスを与えたい」と、大和は力強く語る。今節の栃木SC戦を皮切りに上位との対戦が続く終盤戦。琉球がプレーオフ圏に食い込むためにも、彼の覚悟と成長が不可欠だ。同じポジションを争う津覇を「ライバルであり同志」と表現する大和。その視線の先には、個人の成長とチームの飛躍、その両方がある。

金沢戦のピッチで示した冷静さと覚悟。その一歩は、大和優槻の未来を切り拓く確かな証となった。


Reported by 仲本兼進