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【取材ノート:今治】ゴールネットを揺らすため藤岡浩介は感覚を研ぎ澄ませ続ける

2025年10月6日(月)


生粋のゴールハンターが、リーグ戦はいまだノーゴール。苦悩がにじむ。

今季、FC今治にFC岐阜から完全移籍で加入した。新天地では、19ゴールで昨季のJ3得点ランクトップを分け合ったマルクス ヴィニシウスが絶大な存在感を放つ。初めてのJ2に挑むチームにおいてJ3得点王のダブルスは、この上ない戦力になることが期待された。

だがここまで、2025JリーグYBCルヴァンカップの1stラウンド1回戦・徳島ヴォルティス戦(○2-1)、2回戦・セレッソ大阪戦(■3-4)で2試合連続ゴールを挙げるにとどまっている。J1昇格プレーオフ出場圏内を目指す中での上位対決となった明治安田J2第32節徳島ヴォルティス戦も、1点を追う79分に投入されて2本のシュートを放ったが、ネットを揺らせず。チームも0-1で競り負けて、9位の順位こそ変わらなかったが、昇格争いからじわりと後退することになった。


「PKでやられてしまって(58分)、ロングボールは対応されているのもあったし、自分が入ってからリズムを作りづらいところもありました。それでもチャンスはあったので、残念です」

実際、2度決定的なシュートを放っている。1本目は85分。右のポケットを取った新井光の折り返しをニアで合わせたが、分厚い徳島の守備陣に阻まれ、ディフレクションとなったボールはGK田中颯にキャッチされた。

さらにゴールに近づいたのがアディショナルタイムの90+2分。山田貴文が右サイドから上げたアーリークロスをMヴィニシウス、パワープレーで前線に上がっていたセンターバックの大森理生と連続で頭でつないで、ゴールエリア手前にポジションを取る自分のところにボールが飛んで来た。胸トラップからシュートに持ち込もうとする間に徳島の選手が次々と殺到したが、こぼれ球に素早く反応して左足を振る。しかし厚くボールを捉えることができず、再びGK田中にキャッチされた。

「うまく行ったシーンでしたが、相手も堅く守ってきた。自分に決め切る力がありませんでしたね。続けていくことが大事だと思います」

もっと得点感覚を研ぎ澄まさなければならないと痛感。そして、継続するだけではなく、さらに変化を加えることも欠かせないと強調する。

「チームとしてやるべきことはある。でも、ずっと同じことをやるだけでそれ一辺倒でもだめだし、試合展開や相手をみながらやらないと崩せないと思います。チームの戦い方で勝っているのは間違いないから良いところは続けつつ、しっかり崩すところも出していくことで、残り6試合の勝ちも増えていく。自分はそんなふうに思っています」

徳島戦は残り10分強というところで交代出場すると、Mヴィニシウスと2トップを形成。174㎝と決して長身ではないものの、高いボールテクニックを生かして相手DFを背負ってもしっかりとロングボールを収めて、チャンスにつなげようと尽力し続けた。

86分のことだ。GK立川小太郎が大きく蹴ったフィードの落下地点に入った。徳島ゴールを背にする格好で、そこに183㎝の徳島DF山田奈央がジャンプしながらのしかかってきた。

そのまま倒れれば相手のファウルになって、良い位置でのFKを取れるかもしれない。ところがグッと踏ん張り、ターンすると、すぐさま前にボールを持ち運んだ。ゴールを決めようとする強烈な思いがほとばしった瞬間だった。

「たぶんファウルだったですけど、入れ替われそうな雰囲気もあって。チャンスになると思ってのプレーです。まあ、たまたまっす」

深刻になりすぎず、最後、少しだけだが軽やかに振り返ったところが彼らしい。力みが取れ、ネットを揺さぶる能力が解き放たれるとき、チームは浮上する大きな力を得る。

Reported by 大中祐二