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【取材ノート:今治】今治に戻って、やるべきことがある。梅木怜の強い思い

2025年10月14日(火)


J1昇格プレーオフ圏内まで勝点6差のFC今治が、明治安田J2リーグ第33節・レノファ山口FC戦に向け、1週間のトレーニングをスタートさせた10月14日。ピッチには、FIFA U-20ワールドカップチリ2025の舞台で、世界を相手に戦ってきたばかりの2人の若武者の姿があった。U-20日本代表の梅木怜、横山夢樹が、この日から合流したのだ。

チームを率いる倉石圭二監督から、特段、何か言葉がかけられたわけではない。「やることは変わらない。こちらは同じように接するし、彼らにも同じように、気負うことなく、活躍してほしい」との指揮官の思いがそこにはある。トレーニングの初めに、今治の仲間の前で2人から話をしてもらい、そこからはいつものように高強度で、引き締まった空気の中、トレーニングが始まった。

言葉にするまでもなく、倉石監督はプレーの一つ一つ、立ち振る舞いから、若い彼らの成長を感じ取っている。

「時差ぼけはあると思いますが、刺激を受けて帰って来たのがよく分かります。それぞれ、いろいろな思いがあると思います。梅木は悔しかったというのが大きく、横山は充実していたと話してくれました。いろいろな経験をして、その中で今治に還元できるものを出そうとしている。そんなトレーニングの風景だと私は感じました」

梅木の悔しさは、もちろんノックアウトステージ初戦のラウンド16、フランス戦でのことだ。

無失点で3連勝し、首位突破したグループステージは初戦のエジプト戦、続くホスト国のチリ戦に先発。第3戦のニュージーランド戦も途中出場した右サイドバックは、0-0で延長戦までもつれ込んだフランス戦も先発し、最後まで戦い続けていた。そして、PK戦まであとわずかという延長後半のアディショナルタイム。逆サイドから上がってきたクロスのこぼれ球が左手に当たり、自ら取られたハンドによるPKが決勝点となって、チームは0-1で敗退した。

自身は試合後、とめどなくあふれる涙とともに、「チームに戻ってやることがたくさんある」と思いを新たにした。倉石監督の期待も大きい。

「コンスタントに日の丸を背負ってスタメンで出続けることがすばらしい。その中での、最後のワンプレーでした。その悔しさは、充実感でもある。もっとできたんじゃないかという気づき。ただ試合に出るだけではなく、チームに貢献したい、このチームで活躍したいという思い。目線が、また変わった印象です」

世界レベルを肌で感じる前と、後と。すでに、チリでの経験を生かすフェーズに突入している。

「U-20の代表チームが始動してから船越(優蔵)監督のもと、みんなでやってきて、試合ごとに成長していくのを選手自ら感じていました。優勝したいという思いがみんなにあった中で、自分がハンドしてしまった。みんなには『お前は悪くない』と言われましたけど、言われると余計に『俺のせいだ』と思うところもありました。でも、みんなポジティブな声掛けをしてくれたのが大きかったです。これも経験として無駄にすることなく、今後のサッカー人生に生かせていければ」

生かす場は、すぐに来る。今季、J2は残り6試合。前節、徳島ヴォルティスとの上位対決に競り負けて、チームは昇格争いから一歩後退。しかし、まだまだチャンスは十分ある。

山口戦で先発させるか、途中から起用するのか。コンディションを見極めたいという倉石監督は、ワールドカップにおける梅木のラストシーンは、今治と地続きなのだと捉えている。

「PKは仕方ないかな、というのはありますが、本当にちょっとした、普段から言っているところなので。工藤(直人)コーチが『微差は大差』と言っている通りです。

トレーニングのちょっとした寄せの甘さが試合に出たとき、J3だとやられずに済む。J2だとシュートを打たれる。J1だとそのシュートを決められる。その微差、ほんのわずかなところが結果につながるという経験を、梅木も横山も大舞台で経験しました。

だからこそ、チームにもたらせてくれるものがとてもあるんじゃないのかな、と思います。ちょっとした体の向き、ボールの置きどころ。そういったところ、微差が勝敗を分ける。勝負の際、肝を世界の舞台で戦って経験したことは、チームの大きな財産です。どんどん落とし込んでいってほしい」

指揮官と同じく、若い彼らの成長を追いかける喜び、楽しみは尽きない。冒険譚は続く。

Reported by 大中祐二