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【取材ノート:千葉】千葉の選手として公式戦デビューを果たした若原智哉が改めて感じたGKの役割の重要性

2025年10月16日(木)
明治安田J2リーグ第31節終了時点で勝点55の3位のジェフユナイテッド千葉は、千葉とは勝点差1でJ1自動昇格圏内の2位となっているV・ファーレン長崎を、第32節でホームのフクダ電子アリーナに迎えた。千葉が勝てば長崎と順位が入れ替わるという重要な一戦で、千葉のゴールマウスを守ったのは今シーズン、長崎から完全移籍で加入した若原智哉だった。

若原は2024シーズンのJ2リーグ第37節で長崎のGKとしてフクアリのピッチに立ち、当時の千葉のエースだった小森飛絢のPKをキャッチする形でセーブするなど大活躍して、長崎の2-1の勝利に貢献した。2024シーズンの第36節終了時点で3位だった長崎は、続く最終節で愛媛FCに5-2で勝ち、3位の座をキープしてJ1昇格プレーオフに進出。だが、J1昇格プレーオフ準決勝でベガルタ仙台に1-4で敗れ、J2残留となっていた。

一方、2024シーズン第36節終了時点で4位だった千葉は、長崎に敗れて6位に後退すると、最終節でモンテディオ山形に0-4で敗れ、J1昇格プレーオフ出場圏外の7位でシーズン終了。明暗を分けた第37節の結果が、その後の両チームの試合結果、そして最終順位にまで影響を及ぼした感があったのは否めなかった。

失点数減少を目指す千葉は若原を獲得したのだが、若原は2025シーズンのJ2リーグ開幕前の沖縄キャンプ中だった1月16日に負傷。2月6日のクラブからのリリースで、右膝外側半月板損傷で全治5ヶ月の診断と発表され、その後は長いリハビリ生活が続いた。
「予想外の怪我だったので、(自分が2025シーズンに対して)イメージしていた感じではなかったですし、『何でこんなことになったんやろ』とリハビリ期間中には何回も思いました。でも、スタジアムの上のほうの席から試合を見ていて、チームがいい時も悪い時もいろいろ刺激をもらっていました」

自分の体を動かせない状況下で、家族が千葉への引越しを行い、若原の両親もサポートしてくれたという。リハビリ期間中のメディカルスタッフのケア、そして若原の気持ちが折れそうな時のチームメイトによるイジリや励ましも、若原にとっては大きな支えとなり、復帰へのパワーとなった。

若原の負傷を受けて、その後に千葉が獲得したホセ スアレスが正GKとして活躍してきたのだが、第31節からおそらく負傷欠場。第31節は鈴木椋大がスタメンとなり、熊本を相手に2-2の引き分けだった。そして、第32節で若原は奇しくも古巣との対戦で2025シーズンの公式戦初出場、そして前述の2024シーズンの対千葉戦以来となるフクアリでのプレーとなった。

「ずっと出場チャンスをうかがっていた中で、いろいろなアクシデントがありながらやっと復帰できたというのは嬉しいことですし、しかも古巣を相手にプレーできたというのは本当に幸せだなと思っています。あっという間の90分だったなと感じました。リハビリ期間中は自分がピッチに立った時にプラスに働くようにやろうと考えていたので、今日の試合で勝ちを持ってこられなかったのは本当に悔しいです。でも、リハビリ期間に腐らず、ちゃんとやれたのは良かったと思っています」

そう話した若原だが、長崎に先制点を奪われたシーンをまず悔やんだ。試合は立ち上がりから千葉が押し込む時間帯が長く、複数の決定機を作った。だが、長崎のGKの後藤雅明やDF陣のゴール前での粘り強い守備に阻まれ、無得点で試合が進むと45分、長崎のエジガル ジュニオがファーサイドに上げたクロスがゴールポストに当たってゴールイン。相手のミスキックが得点につながってしまうという、不運な形の失点となった。

「長崎はカウンター攻撃がすごいというのはスカウティングの分析の話にもあって、まずはリスク管理のところでもっと高い位置で相手の攻撃を潰せなかったのかという思いは、自分の中にあります。あとは、攻められた時にペナルティエリアの中にマテウス ジェズス選手がいたので、そっちにクロスが上がってくるんじゃないかという自分の予測がちょっと強すぎたのかなと思います。ボールホルダーのエジガル選手に対して、もっと集中して対応していれば、僕自身、ボールをかき出すことができたのではないかなと思っています」

少ないチャンスを確実に決めきって先制した長崎だが、24分にはボランチながらもゴール前に上がって来た長崎の山口蛍の決定的なシュートを若原がファインセーブ。1対1の局面でしっかりと失点を阻止するプレーもあった。

「ボールをディフェンスラインの背後に流されてから1対1になるなというのはイメージできていたので、山口選手が(ボールを)ワンタッチしたところで冷静にグッと距離を詰めることができたのが良かったんじゃないかなと思います。短い時間でしたけど、トレーニングゲームに何試合か出ていたので、そういった意味ではしっかり試合に入れたかなと思いますし、ビルドアップのところも落ち着いてできました。トレーニングゲームにはないスタジアムの雰囲気を感じられたのも良かったし、背中で感じる声援をすごく大きなもので『やってやるぞ』という気持ちになれました。その声援に応えられなかったのが悔しいので、もっとチームの力になれるように、攻撃面でも守備面でも存在感を出していければと思っています」

試合に復帰した長崎戦で、若原は改めてGKの役割の重要性を感じた。
「ここで決められるというような1本のシュートを、後藤さんは止めていた。そういったプレーが試合の流れを変えるというか、それを(千葉の攻撃を)後ろから見ていて感じました。GKがあれだけ(決定的なシュートを)止めてくれると、チームメイトは勇気づけられると思うので。そういう1つのプレーで流れをいいほうにも悪いほうにも持って行くのがGKなんですけど、今日は後藤さんがいいほうに持って行ったんじゃないかなと思います。改めてGKの力というのはすごいなと思いました」

0-2という苦い結果にはなったが、千葉での公式戦デビューを果たした若原。J2優勝争いを演じる水戸ホーリーホックと対戦する第33節に向けて、GK陣の熾烈なスタメン争いに改めてどう挑むのか問われ、こう話した。

「今までと変わらず、日々やっていきます。誰が出ると決まっているわけではないので、練習からしっかりアピールして自分の持ち味を出していきます。誰が出ても勝点3を持って帰ってこられれば一番いいと思っていますし、それが僕であったらベストなので、いい練習をして、いい準備をしたいです」

チームの底力がさらに試され、より一層総力戦となるシーズンの終盤戦。若原の復帰が千葉にもたらす好影響を期待したい。


Reported by 赤沼圭子