東京ヴェルディは、不本意ながら第33節を終え10勝9分14敗、勝点39で16位と残留争い圏内での戦いが続いている。そんな状況下で、前節の湘南ベルマーレ戦(10月3日)の勝利で積み上げた勝点3はあまりにも大きかった。55分、エース・染野唯月がヘディングで決め決勝ゴール。そこに絶妙なクロスボールを入れて演出したのが松橋優安だった。松橋は後半頭から右のシャドウとして投入されると、持ち味とするスプリント力を発揮し、攻守にわたってチームを活性化させ、チームの勝利に大きく貢献した。
この試合、チーム全員が並々ならぬ思いで試合に臨んでいた。試合会場となったレモンガススタジアム平塚にチームバスが到着した時のことだ。東京ヴェルディのファン・サポーターがバスの到着ゲートに集結し、チャントの大合唱で選手たちを迎え入れた。そんな後押しを受けて、心に火がつかないわけはない。
「J1残留のために大事な試合だということはみんながわかっていたと思いますし、個人としても、あんなふうにチャントを歌ってバスを待っていてくれたことが胸に響いて。『絶対に自分が結果を出して勝たせるんだ』という強い気持ちをもって試合に挑めたことで、得点に直結する仕事ができました。本当にファン・サポーターのおかげです」と背番号「19」は感謝した。
松橋の今年へかける想いはひとしおだ。
ジュニアの頃から東京ヴェルディのアカデミーで育ち、ユース時代には背番号「10」を背負った世代のエリートだが、高卒からトップ昇格を果たしてからは茨の道が待っていた。なかなか試合に絡むことができず、2年目の2021年8月から2022年シーズン終了までSC相模原、2023年にはレノファ山口FCへと期限付き移籍。その中でも確固たる数字を残すことができないまま、2024年に東京ヴェルディに復帰した。
だが、そこから人生を大きく好転させた。2024年のチーム立ち上げ当初は、松橋自身のみならず、城福浩監督も「はっきり言えば、チーム内の立ち位置的には一番低かった」と認めている。だが、その立場を誰よりも自分が一番理解しているからこそ、鬼気迫るほどの日々の練習への取り組みで監督・コーチングスタッフからの評価を自らの力で上げ、J1で30試合に出場、1ゴールと大躍進を遂げた。シーズン終了後、城福監督は「今年一番成長を遂げたのは優安」だと、惜しみなく賞賛したほどだった。
そして迎えた今季である。周囲からの見られ方も、監督・コーチやチームメイトから求められるプレーも格段とレベルが上がった。「今年は自分が戦力として見られた状態で、『スタメンを奪うんだ』という気持ちで入りました。やはり、2年目が難しくなるというのは覚悟はしていましたし、だからこそ、今年しっかりと結果を残してこそ、本当の意味で認められるなということは、今もずっと意識しています。実際、チームとしてもJ1一年目の去年が良かった(6位)分、2年目の今年、今16位というのは見られ方的には(去年より)マイナスかもしれないですが、間違いなく個人としてもチームとしても通用している部分は増えてきています。なので、本当に、ここからの残り5試合が自分たちの真価を試される試合になると思っています」
ただ、決して「今の順位に納得しているわけではない」と23歳MF。「やはり、何かが足りないからこの成績なんだと思います」と真摯に受け止める。今後5試合の対戦相手は勝点差が近いチームが多く、結果次第では順位を大きく上げられる可能性も残っている。だからこそ、「それぞれが1試合にかける思いだったり、『人生をかける』とか『この今の立ち位置(J1)を絶対に失わないんだ』という強い覚悟を、本気で全員が持つことが必要だと思います」と力強く語った。
今の立場にいたるまでに苦労してきた分、身をもって学べたことも多い。「僕ももう6年目です。この世界で契約を勝ち取って、生き残っていくためには、コンディションや技術はもちろん大事ですが、やはり、何よりもメンタルの部分が本当にパフォーマンスにおいて響いてくるなということは感じています。負けたりミスをしたら落ち込みはしますが、それをどう捉えるかもその後の自分の行動、考え方次第。僕は、それでなんとか生き残っています」
どれだけ危機感を感じたり、覚悟をもって努力しても、それが必ずしも結果に結びつくとは限らないのが人生だ。だが、松橋は間違いなく人生を一変させられた。その秘訣はどこにあるのか。
「運とか出会いとかもありますが、それを引き寄せるのも、やっぱり普段の自分の行動だと思っています。素直に、愚直にやり続ければ、人生は必ず変わるということは、今回ヴェルディに帰ってきて身にしみました。この世界、試合に関われないとどうしてもメンタル的に腐ってしまったり、マイナスに向いてしまう部分も多い。実際、自分もそういう期間は全然ありました。ただ、その中でもやり続ける。そうすれば必ずチャンスは来るので、そのチャンスが来た時に掴める準備を常にしておくことが大事なのかなと思います」
湘南戦後、松橋は堂々と宣言した。
「残り5試合も、俺が全部勝たせます」
その言葉に込められた想いは相当だ。
「『結果を残す』という思いは誰にも負けていないと思いますし、自分が先頭に立って引っ張って、自分が結果を残してチームを勝たせたいという覚悟の表れです。もちろん、自信がなければ出てこない言葉です。残り5試合に人生かけて戦います」
甘いマスクの陰で燃えたぎる覚悟は、ただただ勇ましく頼もしい。
Reported by 上岡真里江
この試合、チーム全員が並々ならぬ思いで試合に臨んでいた。試合会場となったレモンガススタジアム平塚にチームバスが到着した時のことだ。東京ヴェルディのファン・サポーターがバスの到着ゲートに集結し、チャントの大合唱で選手たちを迎え入れた。そんな後押しを受けて、心に火がつかないわけはない。
「J1残留のために大事な試合だということはみんながわかっていたと思いますし、個人としても、あんなふうにチャントを歌ってバスを待っていてくれたことが胸に響いて。『絶対に自分が結果を出して勝たせるんだ』という強い気持ちをもって試合に挑めたことで、得点に直結する仕事ができました。本当にファン・サポーターのおかげです」と背番号「19」は感謝した。
松橋の今年へかける想いはひとしおだ。
ジュニアの頃から東京ヴェルディのアカデミーで育ち、ユース時代には背番号「10」を背負った世代のエリートだが、高卒からトップ昇格を果たしてからは茨の道が待っていた。なかなか試合に絡むことができず、2年目の2021年8月から2022年シーズン終了までSC相模原、2023年にはレノファ山口FCへと期限付き移籍。その中でも確固たる数字を残すことができないまま、2024年に東京ヴェルディに復帰した。
だが、そこから人生を大きく好転させた。2024年のチーム立ち上げ当初は、松橋自身のみならず、城福浩監督も「はっきり言えば、チーム内の立ち位置的には一番低かった」と認めている。だが、その立場を誰よりも自分が一番理解しているからこそ、鬼気迫るほどの日々の練習への取り組みで監督・コーチングスタッフからの評価を自らの力で上げ、J1で30試合に出場、1ゴールと大躍進を遂げた。シーズン終了後、城福監督は「今年一番成長を遂げたのは優安」だと、惜しみなく賞賛したほどだった。
そして迎えた今季である。周囲からの見られ方も、監督・コーチやチームメイトから求められるプレーも格段とレベルが上がった。「今年は自分が戦力として見られた状態で、『スタメンを奪うんだ』という気持ちで入りました。やはり、2年目が難しくなるというのは覚悟はしていましたし、だからこそ、今年しっかりと結果を残してこそ、本当の意味で認められるなということは、今もずっと意識しています。実際、チームとしてもJ1一年目の去年が良かった(6位)分、2年目の今年、今16位というのは見られ方的には(去年より)マイナスかもしれないですが、間違いなく個人としてもチームとしても通用している部分は増えてきています。なので、本当に、ここからの残り5試合が自分たちの真価を試される試合になると思っています」
ただ、決して「今の順位に納得しているわけではない」と23歳MF。「やはり、何かが足りないからこの成績なんだと思います」と真摯に受け止める。今後5試合の対戦相手は勝点差が近いチームが多く、結果次第では順位を大きく上げられる可能性も残っている。だからこそ、「それぞれが1試合にかける思いだったり、『人生をかける』とか『この今の立ち位置(J1)を絶対に失わないんだ』という強い覚悟を、本気で全員が持つことが必要だと思います」と力強く語った。
今の立場にいたるまでに苦労してきた分、身をもって学べたことも多い。「僕ももう6年目です。この世界で契約を勝ち取って、生き残っていくためには、コンディションや技術はもちろん大事ですが、やはり、何よりもメンタルの部分が本当にパフォーマンスにおいて響いてくるなということは感じています。負けたりミスをしたら落ち込みはしますが、それをどう捉えるかもその後の自分の行動、考え方次第。僕は、それでなんとか生き残っています」
どれだけ危機感を感じたり、覚悟をもって努力しても、それが必ずしも結果に結びつくとは限らないのが人生だ。だが、松橋は間違いなく人生を一変させられた。その秘訣はどこにあるのか。
「運とか出会いとかもありますが、それを引き寄せるのも、やっぱり普段の自分の行動だと思っています。素直に、愚直にやり続ければ、人生は必ず変わるということは、今回ヴェルディに帰ってきて身にしみました。この世界、試合に関われないとどうしてもメンタル的に腐ってしまったり、マイナスに向いてしまう部分も多い。実際、自分もそういう期間は全然ありました。ただ、その中でもやり続ける。そうすれば必ずチャンスは来るので、そのチャンスが来た時に掴める準備を常にしておくことが大事なのかなと思います」
湘南戦後、松橋は堂々と宣言した。
「残り5試合も、俺が全部勝たせます」
その言葉に込められた想いは相当だ。
「『結果を残す』という思いは誰にも負けていないと思いますし、自分が先頭に立って引っ張って、自分が結果を残してチームを勝たせたいという覚悟の表れです。もちろん、自信がなければ出てこない言葉です。残り5試合に人生かけて戦います」
甘いマスクの陰で燃えたぎる覚悟は、ただただ勇ましく頼もしい。
Reported by 上岡真里江