まさに値千金のゴールだった。J1自動昇格を目指すジェフユナイテッド千葉は、明治安田J2リーグ第32節終了時点で、2位のV・ファーレン長崎との勝点差は4の3位。J1自動昇格圏内の2位以内に入るため、とにかく勝ち続けなければいけない千葉は、勝点61で首位に立つ水戸ホーリーホックと第33節で対戦した。
両チームが攻め合う展開ながらも、互いに粘り強い守備もあって『1点』が遠い試合展開。千葉は90+2分から交代出場した米倉恒貴が、90+3分に決定的なシュートを放つもクロスバー直撃でノーゴールだった。5分と表示された後半のアディショナルタイムが終わりに近づき、スコアレスドローという結果が濃厚となる中、米倉の角度のないシュートを水戸の選手が防いで千葉がCKを得る。75分に交代出場した品田愛斗のCKのボールは水戸のGKの西川幸之介にクリアされたが、クリアボールはゴール前の密集から離れたところにいた杉山直宏の前に飛んでくる。これを拾った杉山は、利き足である左足とは逆の右足で冷静にシュートを打った。シュートはゴールマウスの左サイドネットに突き刺さり、ゴールとなったあとに試合終了。千葉が75分に交代出場した杉山が土壇場に奪った劇的な決勝ゴールで勝点3を得た。
「とにかく足に当てることを意識していました」
西川の位置は把握しておらず、ゴールマウスのどこに打つか意識して狙ったわけではない。ただ、トレーニングの積み重ねで得た感覚で右足を振り抜いたという。
この決勝ゴールが象徴するように攻撃面に魅力がある杉山だが、球際の攻防がポイントの一つだった一戦で、杉山は守備面でも粘り強く戦っていた。
2024シーズンの7月に加入した杉山は、千葉の守備のチーム戦術の習得に課題があり、『個』の守備にも課題が見られた。例えば2024シーズンのJ2リーグでは、千葉がリードしている状況で、ボールを前線でキープしたい場面でも相手選手に簡単にボールを奪われてしまうなど、やや淡白な印象が否めなかった。
しかし、2025シーズンになると次第に『個』の守備でもタフに戦い、粘り強さが増していった。
「1対1の局面でマイボールにできるかどうかというのは、小さい部分ではあるんですけど、試合を左右する部分ではあると思うので、そこの意識は前よりは高くなったかなと思います。日頃の練習でその部分をみんなで高め合っているという日常の成果かなと思っています。前線からの守備でボールを奪ってショートカウンターというのがジェフの攻撃の『形』でもあると思うし、それでけっこう自分たちのチャンスになるので、チームとしてのそこの強みは継続していきたいですね」
10月23日のリモート取材で、杉山は守備力アップを日々の練習の成果だと話したが、そこには2025シーズンが始まるにあたって千葉の小林慶行監督と改めて守備力の向上を課題としたという背景があった。小林監督は10月23日のリモート取材でこう話した。
「水戸戦ではまず守備の部分で相手のボールを奪うシーンを作れたりとか、プレスの迫力だったりとかでチームに流れを持ってきてくれたところがあった。ナオ(杉山)のプレスがあってボールを高い位置で奪えてチャンスにつながる場面もありました。チャンスがあれば前から襲いかかりたいという狙いを、途中から入ってきてチームにパワーをもたらしてくれていた。でも、ナオは攻撃にセンスがあってクオリティが高いけれど、ただ、一方で守備がというところは僕自身もそうですけど、彼本人もおそらく明確に感じている部分ではあったと思います。もちろん昨シーズンは途中から加入してきたので、昨シーズンは難しいところもあって、自分の特長を出すことがメインになってしまう。でも、今シーズンはキャンプから共に戦っていくという中で、最初にキャンプの時点でナオには守備面についてしっかりと提示しました」
課題を指揮官がしっかりと明示し、その課題のクリアに選手がしっかりと取り組む。水戸戦の杉山の守備での貢献は、シーズンインからの地道な努力の積み重ねがあったからだった。
第34節でブラウブリッツ秋田と対戦した千葉は複数の決定機を作りながらも『1点』が奪えず、スコアレスドローに終わった。攻撃で結果を残せなかった杉山だが、秋田が前へボールを運ぼうとするところでチームメイトと連係し、マイボールにする場面もあった。
J1自動昇格という目標を達成するため、杉山には得点やアシストという攻撃での数字で見える結果だけなく、数字での結果としては記録されなくとも失点阻止のために必要不可欠な守備での活躍も求められている。
Reported by 赤沼圭子
							
						両チームが攻め合う展開ながらも、互いに粘り強い守備もあって『1点』が遠い試合展開。千葉は90+2分から交代出場した米倉恒貴が、90+3分に決定的なシュートを放つもクロスバー直撃でノーゴールだった。5分と表示された後半のアディショナルタイムが終わりに近づき、スコアレスドローという結果が濃厚となる中、米倉の角度のないシュートを水戸の選手が防いで千葉がCKを得る。75分に交代出場した品田愛斗のCKのボールは水戸のGKの西川幸之介にクリアされたが、クリアボールはゴール前の密集から離れたところにいた杉山直宏の前に飛んでくる。これを拾った杉山は、利き足である左足とは逆の右足で冷静にシュートを打った。シュートはゴールマウスの左サイドネットに突き刺さり、ゴールとなったあとに試合終了。千葉が75分に交代出場した杉山が土壇場に奪った劇的な決勝ゴールで勝点3を得た。
「とにかく足に当てることを意識していました」
西川の位置は把握しておらず、ゴールマウスのどこに打つか意識して狙ったわけではない。ただ、トレーニングの積み重ねで得た感覚で右足を振り抜いたという。
この決勝ゴールが象徴するように攻撃面に魅力がある杉山だが、球際の攻防がポイントの一つだった一戦で、杉山は守備面でも粘り強く戦っていた。
2024シーズンの7月に加入した杉山は、千葉の守備のチーム戦術の習得に課題があり、『個』の守備にも課題が見られた。例えば2024シーズンのJ2リーグでは、千葉がリードしている状況で、ボールを前線でキープしたい場面でも相手選手に簡単にボールを奪われてしまうなど、やや淡白な印象が否めなかった。
しかし、2025シーズンになると次第に『個』の守備でもタフに戦い、粘り強さが増していった。
「1対1の局面でマイボールにできるかどうかというのは、小さい部分ではあるんですけど、試合を左右する部分ではあると思うので、そこの意識は前よりは高くなったかなと思います。日頃の練習でその部分をみんなで高め合っているという日常の成果かなと思っています。前線からの守備でボールを奪ってショートカウンターというのがジェフの攻撃の『形』でもあると思うし、それでけっこう自分たちのチャンスになるので、チームとしてのそこの強みは継続していきたいですね」
10月23日のリモート取材で、杉山は守備力アップを日々の練習の成果だと話したが、そこには2025シーズンが始まるにあたって千葉の小林慶行監督と改めて守備力の向上を課題としたという背景があった。小林監督は10月23日のリモート取材でこう話した。
「水戸戦ではまず守備の部分で相手のボールを奪うシーンを作れたりとか、プレスの迫力だったりとかでチームに流れを持ってきてくれたところがあった。ナオ(杉山)のプレスがあってボールを高い位置で奪えてチャンスにつながる場面もありました。チャンスがあれば前から襲いかかりたいという狙いを、途中から入ってきてチームにパワーをもたらしてくれていた。でも、ナオは攻撃にセンスがあってクオリティが高いけれど、ただ、一方で守備がというところは僕自身もそうですけど、彼本人もおそらく明確に感じている部分ではあったと思います。もちろん昨シーズンは途中から加入してきたので、昨シーズンは難しいところもあって、自分の特長を出すことがメインになってしまう。でも、今シーズンはキャンプから共に戦っていくという中で、最初にキャンプの時点でナオには守備面についてしっかりと提示しました」
課題を指揮官がしっかりと明示し、その課題のクリアに選手がしっかりと取り組む。水戸戦の杉山の守備での貢献は、シーズンインからの地道な努力の積み重ねがあったからだった。
第34節でブラウブリッツ秋田と対戦した千葉は複数の決定機を作りながらも『1点』が奪えず、スコアレスドローに終わった。攻撃で結果を残せなかった杉山だが、秋田が前へボールを運ぼうとするところでチームメイトと連係し、マイボールにする場面もあった。
J1自動昇格という目標を達成するため、杉山には得点やアシストという攻撃での数字で見える結果だけなく、数字での結果としては記録されなくとも失点阻止のために必要不可欠な守備での活躍も求められている。
Reported by 赤沼圭子