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【取材ノート:藤枝】にわかに高まったJ3降格への危機感。藤枝MYFCとして初めての苦境で、チーム全体で貫くべきこと

2025年11月6日(木)
「磐田に勝ったあたりから、何となくもう残留は大丈夫じゃないかという雰囲気がチームの中であったのは感じてました。僕はケガして外から見ていて、そこの緩さみたいなものも感じてましたが、そんなに甘い世界じゃないんだよということを、今まさに突きつけられていると思います」

Jリーグ通算400試合出場まであと1試合に迫ったところでケガをしてしまい、個人的にも非常にもどかしい日々を過ごしてきた36歳の梶川諒太は、今の状況についてこう語った。

第30節で静岡県内の大先輩=ジュビロ磐田に対する初勝利を挙げた時点では、残り8試合で降格圏と勝点11差。磐田戦で得た自信や内容の良さもあって、J2残留を楽観視する感覚は、恥ずかしながら冷静に状況を見るべき立場の筆者にもあった。

だが、その後は5戦勝ちなし(1分4敗)。前節ではJ2に同期昇格したいわきFCに1-3で完敗し、レノファ山口FCが連勝したこともあって、残り3試合で降格圏まで勝点5差という危機的な状況に至った。それは、2009年に静岡県リーグからスタートしてJ2まで駆け上がってきた藤枝MYFCにとって、初めての経験だ。残留争いを乗り越えた経験を持つスタッフや選手も少なく、未知のプレッシャーの中で残り3試合を戦わなければならなくなった。そんな中でどう戦っていくべきか、梶川は言葉を続けた。

「自分たちの理想は、みんながボールを受けて剥がしてパスをつないでいく戦い方ですが、そこを食うのが得意な千葉(次節の相手)と戦うときに、それでも本当に自分たちのやり方を貫くのか。逆に割り切ってリスクを減らしたサッカーをするという選択肢も僕は必要だと思いますが、いちばん良くないのは、中途半端につなごうとしたり、選手それぞれが違うことを考えていたりすることだと思います。もちろん戦い方を選ぶのは監督ですが、今は理想なんて言ってられない状況ですし、現実的に絶対勝点を取りにいこうとなったときは、藤枝らしくなくてカッコ悪いと言われようが、ダサいゲームと言われようが、絶対に勝点を取りに行くんだという覚悟が全員に必要だと思います。ここまで来てしまったのは自分たちの責任ですし、落ちたら本当に何もなくなってしまうので」(梶川)

ハイエナジーと“牙”は失うことなく

その考えは、須藤大輔監督をはじめスタッフ、各選手も共有している。

「一番はこのチームをJ2に残すこと。このところミス絡みでの失点で勝点を失っているし、そこも踏まえてチームとしてどう戦うのか、自分たちがやるべきことは何なのか、(今週の練習で)選手の表情やメンタルも含めたコンディションを見て決めたいと思ってます。とにかく一番やってはいけないのは、やるべきことを統一できていないこと。この時間はこれでいくよ、こういう状況だからこう行くよというのを、全員が同じ方向を向いてやれるようにしないと勝つ確率を上げられないので、それが迷いなくできるようにしっかり準備していきたいと思っています」(須藤監督)

「超攻撃的エンターテインメントサッカー」という理想を掲げ、そこを追求し続けてきた須藤監督。こだわってきた自分たちのスタイルと、残留のためのリスクを減らした戦い方には相反する部分が多く、そこは藤枝にとっての難しさでもあり、忸怩たる思いもあるだろう。

だが、自ら「ロマンチスト」と言う指揮官は、現実を見るという視点も備えていることを以前から示してきた。理想と現実のどちらに針を振るかという意味では、今は現実側に振りきることも必要な状況だが、それでも彼らしい前向きさは失っていない。

「本当は昇格争いして、その中で経験値を積みたかったですが、残留をかけたヒリヒリ感の中でしか成長できない部分もあるので、そこはプラスに捉えて、この局面を成長の糧にしようという話をしました。悲壮感しかないと、プレーも縮こまってしまうし、弱気なプレー選択、弱気なマインドになってしまうので、そこだけは避けたいと思ってます。あとは、どんな戦い方をするにしても、攻守においてハイエナジーを出すこと、相手を食ってやるという“牙”を持ちながら戦うことは、大前提として必ずやっていきたいです」(須藤監督)

前々節からチャンスをつかみ、熱い闘志と惜しみない動きでチームの火付け役になっている松木駿之介も、自分がやるべきことをしっかりと理解している。

「J3から昇格してここまできたクラブの歴史をつぶしてはいけないと思っているので、そこは責任を持って果たしたいです。エネルギーを出すとかプレーや声で発信するというところも、チームを引っ張るためにやり続けたいと思っています。どんなにプレッシャーがかかったとしても、強度を上げることはできるし、そこがなくなったら僕は生きれないので、誰にも負けちゃいけないと思っています」(松木)

もちろん、そうした想いを共有している選手は多い。試合のメンバーに限らず全員が気持ちを一つにして、「ハイエナジー」を同じ方向に集中させることができたら、どんなサッカーを表現できるのか。その化学反応は、ある意味楽しみでもある。

もちろん自動昇格に向けて勢いづく千葉にアウェイで勝つのは相当高いハードルだが、まずはチーム全体の覚悟と意志をどれだけ表現できるのかに注目したい。

Reported by 前島芳雄