
J1昇格へ向けての大一番。明治安田J2リーグ第36節、RB大宮アルディージャは水戸ホーリーホックとの一戦へ、敵地に乗り込んだ。試合は一進一退で進んだ終盤、杉本健勇がコーナーキックから2発を決めて大宮が完勝を遂げた。やはりアウェイでの第34節モンテディオ山形戦同様、ここ一番で大きな働きをしてくれる杉本には感服させられるばかりだ。
同時に守備陣の働きにも目を見張るものがあった。立ち上がり5分、水戸・多田圭佑のシュートは村上陽介がブロック。セットプレーでも27分には危ない場面を作られたが、61分には加藤有輝がビッグセーブ、そのセカンドボールからのシュートにも小島幹敏が体を張った。市原吏音は「立ち上がりで切り替えや球際での強さを感じましたし、まずはそこをしっかり戦わないと(試合を)持っていかれちゃうなと思っていた」と相手の実力を認めつつ、「シンプルなロングボールや背後へのボール、クロスの質も高かったんですけど、自分らもそこ(への対応)は得意としてるところ。うまく対応できたんじゃないかなと思います。正直、やられる気はしなかった」と胸を張る。村上も「やっぱり勝てるチームは失点が少ないと思うし、徐々にですけど、そういう空気は出てきてると思います」とチームとしての向上を感じているようだ。

ケガ人が復帰し、守備陣に厚みが戻ったことは大きな要因である。U-20日本代表から市原が戻り、負傷からイヨハ理ヘンリーが復帰した。ルーキーの福井啓太がリーグ戦デビューを果たし、第32節ベガルタ仙台戦では貴重な決勝点を挙げた。第35節ブラウブリッツ秋田戦では、イヨハが「5~6年ぶり」と振り返る4バックでのサイドバックで久々の感覚を取り戻せた。水戸戦では、JFLラインメール青森から復帰した貫真郷が1点リードのひりつく試合終盤で抑えきる役割を果たした。茂木力也の離脱はもちろん痛手ではあるが、選手層の厚みが戻ってきたことで競争原理が働き、それが全体の能力アップにもつながってくる好循環が生まれている。

秋田戦で豪快なミドルシュートを決め攻撃でも貢献した村上は、その試合後に「人のことは意識したくないって僕は良く言うんですけど、これだけ(けが人が)帰ってくる以上、やっぱり意識せざるを得ない。自分自身も結果が欲しいっていう状況で、いい意味での危機感というか、やらなきゃいけないっていう気持ちが、あのゴールだったのかなと思ってます」と心中を明かし、復帰した側のイヨハは「その循環を生むためにも、出てない選手、出てる選手の責任や立ち振る舞いが大事になってくると思って過ごしてきました」と振り返る。
これは攻撃陣も同様だ。この試合で富山貴光はメンバー外、秋田戦でゴールを決めたファビアンゴンザレスはピッチを踏めず、泉柊椰も秋田戦、水戸戦とベンチに留まっている。当然、各々そこに納得しているわけはなく、練習ではしのぎを削り合い、そして試合では与えられた役割に全力を尽くす。そこで結果が出れば、また新たな競争につながる。チーム全体が良好なループに入っていると感じられる。
ラスト2試合。この状態で、この勢いで臨めば最良の結果が得られるかもしれない。上位チームの結果次第であることは変わらないが、やるべきこと、できることをやりきって、吉報を待ちたい。
Reported by 土地将靖