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【取材ノート:東京V】「言ってもらえるうちが華」。東京ヴェルディを選んだ意義をプレーで体現する吉田泰授の奮闘

2025年11月14日(金)
城福浩監督は常々、試合メンバーの選考基準の大きな1つに「普段の練習から、頭から湯気を出している選手」を挙げる。つまり、試合さながらの本気度で自身の成長とチームの勝利貢献のために取り組んでいる選手ということである。昨季は、松橋優安がその象徴として起用され、主力の地位を確立した。

そして今季、ここにきてその面からも評価を上げているのが吉田泰授である。今夏の8月20日にモンテディオ山形から完全移籍での東京ヴェルディ加入が発表された。以後、10月3日J1第33節の湘南ベルマーレ戦まで7試合、約1か月半もの間、一度もゲームに絡むことができなかった。それでも、25歳DFは「技術など基本的なレベルの高い東京Vでは、そんなに簡単には試合に絡めないと思っていましたし、むしろ、そういう環境に飛び込みたいという気持ちで来たので、まったく焦ってはいません。毎日の練習から全部を吸収して、自分の基準を上げたい」とひたすらポジティブに受け止め、己の成長だけにフォーカスして日々を過ごしてきた。「城福監督やコーチたちがいろいろ指摘して言ってくれるのが嬉しくて。言われるうちが華。全部自分のためだと思っています」。チームでは数少ない貴重な左利きの左サイドとしてアピールを続けた。

そして第34節アルビレックス新潟戦(10月18日)で初めてメンバー入りを果たすと、次の第35節清水エスパルス戦(10月25日)の79分から出場。J1初出場を果たした。吉田の起用について、城福監督は「走力やインテンシティの部分に関しては、彼はもともと(実力を)持っているのですが、それをどのように発揮するかというのを整理するのに時間がかかっていました。それと、必要なのは自信。ただ、こればかりはピッチで何分かでも立って、自分で獲得していくものなのですが、そのピッチに立てるようになるまでの間にどのようにもがいているか、どのようにトライしているか、し続けるかというのを我々(監督・コーチングスタッフ)は見てあげなければいけない。そこは、他の選手も同様、フェアに見て、彼をメンバーに選び、起用しました」と説明した。そして、清水戦での11分間のパフォーマンスについて「クロスとパスをしっかり使い分けたと思いますし、最後のシュートを含めて、今彼が持っている持ち味は出してくれたかなと思います。試合に絡めていない選手たちにとっても、今日の彼のプレーは勇気を与えるものだと思います」と、及第点を与えた。


「自分でもびっくりした」という、突如巡ってきた試合メンバー入り。その要因を、吉田自身は次のようにとらえている。

「エクストラ(東京Vではおなじみの、毎日の全体練習後に行われる、試合メンバー以外の選手による強化練習)で、細かいポジショニングの1つ1つまで言ってもらえるので、本当にためになっています。そこでの積み上げが本当になるんだなぁと、こうして試合に絡めるようになって改めて感じます。あの練習をやることで自分の成長が実感できることがすごく大きいです。

それに、森下仁志コーチから『おまえは走力で戦っている選手なのだから、その走力をもっと伸ばせ』と言われて、走り込みなどのメニューを仁志さんにも提案してもらいました。それを実践したら、自分でもびっくりするぐらいコンディションが上がって、アップダウンできる走力がさらについたんです。これまでも、走力が持ち味だと思ってこのチームに来たんですけど、そこをさらに磨いていけばJ1でも試合に出られるという、自分の武器がより明確になりましたし、まだまだ伸びしろがあると自信にもなっています」。

自身の現役時代、無尽蔵の運動量で攻守にわたりアップダウンを繰り返していた森下コーチの言葉だからこそ、より一層の説得力がある。「仁志さんの助言を受け止めて、しっかりと認めてもらえるようにやっていきたい」

「J1残留」と「試合に出る」。東京Vに加入して最初の目標が、チームとしても個人としても達成できた。だが、まったく満足感はない。「スタートは切れたので、今後はプレー時間を延ばしていくことと、スタメン出場が次の目標。常に現状に満足しないで、次の目標に向かって積み上げていきたい」。

目標達成のためにも、残り2節で「アシスト、ゴールなどの目に見える数字を残したい」と燃えている。

Reported by 上岡真里江