押し込まれる時間帯はあったものの、攻守にアグレッシブな姿勢を見せ続け、ホーム最終戦となる明治安田J1リーグ第37節・ガンバ大阪戦を白星で飾った福岡。
前節から約3週間の中断期間、チーム全体で相手の背後への攻撃を重点的に取り組んできた中で、シャドーの重見柾斗とウイングバックの橋本悠の右サイドコンビが立ち上がりから福岡に勢いをもたらした。
ホーム・ベスト電器スタジアムに集った今シーズン最多17,587人の観客。「すごい声も聞こえましたし、本当にきつい時にあの声援を聞くとより一層走れるというか頑張れるなと改めて思いました。本当にあの後押しでハードワークできたので、良いものは見せられたのかなと思います」と重見が話すようにサポーターの大きな声援に背中を押され、二人とも前への推進力を見せる。重見の背後への効果的なフリーランニング、橋本の正確なキックからの配給。幅と深さを上手く使いながら相手の守備ブロックを揺さぶり、福岡の攻撃を活性化させて博多の森を何度も沸かせた。
「(橋本)悠は配給が上手いので、それに合わせての動き出しだったり、そういうことは意識しました。今週ずっとやってきたので、いろいろ話しながら上手くできたんじゃないかなと思います。悠がボールを持ったら(相手の)黒川選手の背後が空くというのは分かっていたので、そういうところと自分のポジショニングのところで黒川選手を迷わせるというところは、特に前半は良い形でできたのかなと思います」と重見は言い、橋本は「相手が4枚で来ていることを理解した上で、相手のサイドバックが自分に喰いついたところを重見さんのスピードを活かしたランニング、背後だったり、ポケットのところを取りに行くというところを(試合までの)1週間の中で練習してきました。そこからセンターバックを引き出してクロスを使って中央の(碓井)聖生や逆サイドの(藤本)一輝くんが(ゴール前に)入って来て、より数的優位な状態(でゴールを狙う形)を作ることだったりを狙っていました。
(3バックの右の)奈良(竜樹)くんと常にコミュニケーションをとりながら奈良くんと僕との距離、僕とシゲ(重見)との距離。そこを上手く見るのと同時に相手が奈良くんに対してどの選手が出てくるのかを見ながらそういうのをやっていけた分、スムーズに右側から攻撃できたと思う」と振り返る。
「橋本なんかは、相手の左サイドが黒川選手、奥抜選手で個の力がある選手ということで、多少の不安はありながらの起用でしたが、こうやってトライさせてあげることで、多少のイレギュラーもありましたけれど良さもたくさん出ましたし、それはシゲ(重見)もそうでしたね」と金明輝監督が評価するように、攻撃的なプレーが持ち味の二人は、ピンチを招く場面もあったが、積極的にプレスを仕掛け、攻守にチャレンジする姿勢を崩すことなく、お互いの良さを引き出しあった。
共に福岡大学出身で1学年違いの先輩後輩である重見と橋本。G大阪戦で躍動を見せた二人だが、今シーズンここまで順風満帆だったわけではない。
プロ2年目の重見は、1年目でリーグ戦35試合に出場し、今シーズンも開幕スタメンの座を掴んだが、その後、出場機会は減少。ここまで24試合の出場にとどまっている。ルーキーの橋本は、シーズン中盤のカップ戦でチャンスを掴み、後半戦はリーグ戦での出場も増やしているが、シーズン前半は、出場機会があまりなく、ベンチ外になる試合もあった。
チーム内の厳しい競争を勝ち抜き、年間を通じ、安定して高いレベルの力を発揮しなければ試合に出続けることが難しい世界。技術は高く、ポテンシャル抜群の二人であってもプロの高き壁にぶつかった。だが、決して下を向くことなく、ピッチで輝くべく真摯に自身と向き合ってきた。

「本当にサッカー人生で一番苦しかったというか、いろいろと考えた1年だったんですけど、その分、サッカー選手としてはもちろんですけれど、より人として成長できたなというふうに思います。いろいろありましたけれど、あれを乗り越えられたのでより自信になったというか、この先もっと苦しいことがあると思うんですけど、それの乗り越え方というのが分かったような気がして、結果としてみれば、とてもいい1年だったなというふうに思います」(重見)

「プロ1年目ということで難しいのは覚悟していましたけれど、序盤はなかなか試合に絡むこともなく、メンバー外のときもあって、思っていたよりも悔しさがあるシーズンなのかなというふうに考えていました。でもいろんな先輩方から、1年目だからといって考えすぎることなく、もっと楽に考えて、自分ができることを自分の特徴を消さないようにというお話をいただいたことや、カップ戦やリーグ戦の途中出場などを通して少しずつ自信が付いてきて、プレー時間も長くなってきたり、『橋本はこういう選手だ』というのをみなさんに分かってもらえるぐらい見せることができるようになったと思うので、選手として、人として成長できた1年だったなというふうには思います。
試合に出られない時期というのは、高校時代からも経験しましたし、その乗り越え方というか、気持ちの作り方というのは学生時代から身につけたものがありました。1年間という長いシーズンの中ではいろんなことがあるもので、チャンスは必ず来るというのは分かっていたので、自信をなくさずに、いつも通りに継続することが大事なんだというふうに考えてやることができたから今があると思っています」(橋本)
試合に出られない悔しさを糧に日々成長を重ね、この1年でスケールアップした二人。更なるレベルアップへ。今、共に強く意識しているのは、ゴールに関わることだ。その為に重見はボールに関わる回数とペナルティエリアの深い位置への侵入を増やした上でのゴール前の質の向上、橋本はゴール前に侵入する回数を増やした上で得点を決め切る力の向上を目指している。
福岡の右サイドに新たな息吹をもたらし、相手の脅威となる形を構築しつつある重見と橋本。今シーズン残るはアウェイでの名古屋戦のみ。背番号6と47が再び躍動し、ゴールを決める瞬間に出会えることに期待したい。
Reported by 武丸善章
前節から約3週間の中断期間、チーム全体で相手の背後への攻撃を重点的に取り組んできた中で、シャドーの重見柾斗とウイングバックの橋本悠の右サイドコンビが立ち上がりから福岡に勢いをもたらした。
ホーム・ベスト電器スタジアムに集った今シーズン最多17,587人の観客。「すごい声も聞こえましたし、本当にきつい時にあの声援を聞くとより一層走れるというか頑張れるなと改めて思いました。本当にあの後押しでハードワークできたので、良いものは見せられたのかなと思います」と重見が話すようにサポーターの大きな声援に背中を押され、二人とも前への推進力を見せる。重見の背後への効果的なフリーランニング、橋本の正確なキックからの配給。幅と深さを上手く使いながら相手の守備ブロックを揺さぶり、福岡の攻撃を活性化させて博多の森を何度も沸かせた。
「(橋本)悠は配給が上手いので、それに合わせての動き出しだったり、そういうことは意識しました。今週ずっとやってきたので、いろいろ話しながら上手くできたんじゃないかなと思います。悠がボールを持ったら(相手の)黒川選手の背後が空くというのは分かっていたので、そういうところと自分のポジショニングのところで黒川選手を迷わせるというところは、特に前半は良い形でできたのかなと思います」と重見は言い、橋本は「相手が4枚で来ていることを理解した上で、相手のサイドバックが自分に喰いついたところを重見さんのスピードを活かしたランニング、背後だったり、ポケットのところを取りに行くというところを(試合までの)1週間の中で練習してきました。そこからセンターバックを引き出してクロスを使って中央の(碓井)聖生や逆サイドの(藤本)一輝くんが(ゴール前に)入って来て、より数的優位な状態(でゴールを狙う形)を作ることだったりを狙っていました。
(3バックの右の)奈良(竜樹)くんと常にコミュニケーションをとりながら奈良くんと僕との距離、僕とシゲ(重見)との距離。そこを上手く見るのと同時に相手が奈良くんに対してどの選手が出てくるのかを見ながらそういうのをやっていけた分、スムーズに右側から攻撃できたと思う」と振り返る。
「橋本なんかは、相手の左サイドが黒川選手、奥抜選手で個の力がある選手ということで、多少の不安はありながらの起用でしたが、こうやってトライさせてあげることで、多少のイレギュラーもありましたけれど良さもたくさん出ましたし、それはシゲ(重見)もそうでしたね」と金明輝監督が評価するように、攻撃的なプレーが持ち味の二人は、ピンチを招く場面もあったが、積極的にプレスを仕掛け、攻守にチャレンジする姿勢を崩すことなく、お互いの良さを引き出しあった。
共に福岡大学出身で1学年違いの先輩後輩である重見と橋本。G大阪戦で躍動を見せた二人だが、今シーズンここまで順風満帆だったわけではない。
プロ2年目の重見は、1年目でリーグ戦35試合に出場し、今シーズンも開幕スタメンの座を掴んだが、その後、出場機会は減少。ここまで24試合の出場にとどまっている。ルーキーの橋本は、シーズン中盤のカップ戦でチャンスを掴み、後半戦はリーグ戦での出場も増やしているが、シーズン前半は、出場機会があまりなく、ベンチ外になる試合もあった。
チーム内の厳しい競争を勝ち抜き、年間を通じ、安定して高いレベルの力を発揮しなければ試合に出続けることが難しい世界。技術は高く、ポテンシャル抜群の二人であってもプロの高き壁にぶつかった。だが、決して下を向くことなく、ピッチで輝くべく真摯に自身と向き合ってきた。

「本当にサッカー人生で一番苦しかったというか、いろいろと考えた1年だったんですけど、その分、サッカー選手としてはもちろんですけれど、より人として成長できたなというふうに思います。いろいろありましたけれど、あれを乗り越えられたのでより自信になったというか、この先もっと苦しいことがあると思うんですけど、それの乗り越え方というのが分かったような気がして、結果としてみれば、とてもいい1年だったなというふうに思います」(重見)

「プロ1年目ということで難しいのは覚悟していましたけれど、序盤はなかなか試合に絡むこともなく、メンバー外のときもあって、思っていたよりも悔しさがあるシーズンなのかなというふうに考えていました。でもいろんな先輩方から、1年目だからといって考えすぎることなく、もっと楽に考えて、自分ができることを自分の特徴を消さないようにというお話をいただいたことや、カップ戦やリーグ戦の途中出場などを通して少しずつ自信が付いてきて、プレー時間も長くなってきたり、『橋本はこういう選手だ』というのをみなさんに分かってもらえるぐらい見せることができるようになったと思うので、選手として、人として成長できた1年だったなというふうには思います。
試合に出られない時期というのは、高校時代からも経験しましたし、その乗り越え方というか、気持ちの作り方というのは学生時代から身につけたものがありました。1年間という長いシーズンの中ではいろんなことがあるもので、チャンスは必ず来るというのは分かっていたので、自信をなくさずに、いつも通りに継続することが大事なんだというふうに考えてやることができたから今があると思っています」(橋本)
試合に出られない悔しさを糧に日々成長を重ね、この1年でスケールアップした二人。更なるレベルアップへ。今、共に強く意識しているのは、ゴールに関わることだ。その為に重見はボールに関わる回数とペナルティエリアの深い位置への侵入を増やした上でのゴール前の質の向上、橋本はゴール前に侵入する回数を増やした上で得点を決め切る力の向上を目指している。
福岡の右サイドに新たな息吹をもたらし、相手の脅威となる形を構築しつつある重見と橋本。今シーズン残るはアウェイでの名古屋戦のみ。背番号6と47が再び躍動し、ゴールを決める瞬間に出会えることに期待したい。
Reported by 武丸善章