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【取材ノート:千葉】17歳の若武者・姫野誠が大舞台で奪った値千金の同点ゴール

2025年12月11日(木)
衝撃的と言っていいほどの鮮烈なプロデビューとなった。ジェフユナイテッド千葉U-18に在籍し、17歳ながらすでに千葉とプロ契約を締結した姫野誠は、レギュレーションによって引き分けでも千葉が決勝に進出できる明治安田J1昇格プレーオフ2025準決勝で、値千金となる同点ゴールを奪った。


RB大宮アルディージャが3-0とリードした状況下の60分、1枚目の交代カードとして姫野は杉山直宏に代わってピッチに立った。

「状況が状況でしたし、何か状況を一変させたいという気持ちはありました。(姫野は)今週は明らかに目の色が変わっていて、明らかに自分がメンバーに入るんだという気持ちが伝わるようなトレーニングの姿勢がありました」

千葉の小林慶行監督は1枚目の交代カードに姫野を選んだ理由をそう話した。

ピッチに立つと、姫野はいきなり持ち味であるドリブルでの仕掛けを披露。62分、左サイドからペナルティエリアに進入すると、石川大地とのワンツーパスからシュートを打つ。その積極果敢なプレーからは、ある意味、プロデビュー戦だからこそ怖いもの知らずの若武者ならではの強気な姿勢が見えた。

このプレーでチームの雰囲気は一変し、フクアリの千葉サポーターのボルテージが一気に高まった。明らかに攻撃のギアが上がった千葉は、71分にカルリーニョス ジュニオが反撃の狼煙を上げるゴールを奪うと、77分、エドゥアルドが見事なミドルシュートで1点差とした。

そして、82分、姫野はGKの若原智哉のロングフィードを受けると、今度は右サイドから仕掛け、カットインからシュート。これは惜しくもゴールマウスを捉えられなかった。だが、直後の83分、エドゥアルドのハイボールのパスを呉屋大翔がヘディングでつなぎ、それを米倉恒貴が右足で前へ送る。このパスを受けた姫野誠は胸トラップをすると、すぐさまドリブル突破。大宮は村上陽介と下口稚葉が姫野の両脇から挟むように追うが、姫野は彼らをかわして前に出ると、大宮のGKの加藤有輝の頭上を越すループシュートを打った。

姫野にラストパスを出した米倉は開口一番、こう話した。

「自分のパスは普通のパスです(笑)。あれはもうあいつ(姫野)が持っているものを褒めたいなと思います。この大舞台で完全に歴史に名を刻んだと思うので、あいつがすごかったです」

チーム最年長の選手がチーム最年少の選手へつないだパスで生まれたゴールだった。

試合直後のヒーローインタビューで姫野は「変な形のシュートでしたけど、決めて良かったです」と話したが、千葉をJ1昇格プレーオフ決勝へと導く素晴らしいゴールだった。

「メッチャ嬉しいです。狙ったとおりのシュートではなかったんですけど、入ったので良かったなと思っています。米倉さんが自分のことをよく見てくれていたので、それをゴールという形でしっかり返せたので良かったです。フクアリはずっと目標にしていた舞台だったので、その場所で点が取れてすごくいい光景が見られました」

ゴールシーンについてそう振り返った姫野は、交代直後のシュートについてこう話した。

「あれが自分の武器であって、特長でもあるので、あれで自分にとっていいリズムになったのかなと思います。うちのチームは練習からメチャメチャ激しくやるんですけど、練習でいいパフォーマンスを見せられたので、今日の試合も自信を持って臨めました。『思いっきりやってこい』と言われましたけど、もともと自分も思いっきりやろうと思っていました。チームの状況は良くなかったですけど、その中で途中から入って消極的なプレーはできないので、積極的に行こうと思っていました」

自信があるからだろうか。姫野は終始、落ち着いているように見え、冷静な状況判断で正確なプレーをしているように感じた。例えば67分には鈴木大輔からサイドチェンジのロングパスをピタリと右足でトラップして止め、目の前の大宮の選手の股下を抜くパスを出している。これを受けようとした日高大は大宮のアルトゥール シルバのプレッシャーを受ける形になり、ボールロストすることになったが、ボールコントロールの正確性とパスのアイデアが見えるプレーだった。とはいえ、姫野はそれに満足していない。

「メンバー入りは試合前日に言われたんですけど、練習中からずっと試合を意識して出たいと思っていたので、メンバー入りを知った時は『やってやろう』という思いが強かったです。メッチャ緊張しましたけど、今日は自分のいつもどおりのプレーをしようと思ってピッチに立ちました。普段どおりとはいかなかったですけど、その緊張がいい方向に行ったかなと思っています。プレッシャーはありましたけど、自分のプレーに集中していました。もちろんあの場面ではもっといい選択があったのかなと思うんですけど、それは次の課題として来週の練習からまた頑張ります」

千葉アカデミーの選手の1人として千葉のJ1昇格への想いはひときわ強い。

「ジェフは伝統のあるクラブで、J1にいるべきクラブだと思っています。ずっとJ2の試合をやっているのをスタンドで見てきたので、アカデミーのみんなもそうですけど、フクアリでJ1の試合ができるように来週も勝ちたいです。次の練習からやることがまたいい結果を生むと思うので、練習からチーム全員でやっていきたいと思います」

河野貴志が87分に得点し、4-3の大逆転劇を演じた千葉だが、選手たちに慢心や驕りはなく、J1昇格プレーオフ決勝に向けて気を引き締めている。決勝の相手は堅守を誇る徳島ヴォルティス。それでも千葉は一体感を持って千葉サポーターとも共に戦い、いつもと同じように点を取って勝つことを目指す。

Reported by 赤沼圭子