
自身もチームも初めてのチャレンジとなった明治安田J2リーグでの戦いは、アウェイで迎えた最終節、J1昇格を目指して突き進むジェフユナイテッド千葉の勢いに飲み込まれて大敗する、何とも悔しい幕切れとなった。
「チーム全体で気持ちを引き締めて試合に入ったつもりでしたが、ひとりひとり心のどこかに隙があった。ちょっと緩かったし、甘かったです」
11分に先制を許すと、前半の内に追加点を奪われ、反撃に転じたはずの後半早々にも失点。19,103人が詰めかけたフクダ電子アリーナのスタンドは何度も沸き立ち、結局、FC今治は0-5で敗れた。5失点は今季ワーストで、一けたを目指した最終順位も11位に終わった。
「この試合で自分たちは失うものはありませんでした。先に点を取られて、“もっと攻撃的にやらないと”と思いましたが、なかなかうまく行かなかった。悔しい思いがありますね」
どんなクラブにとっても、“J2元年”は一度きりだ。今治は、Jリーグのトップチームで初めて指揮を執る倉石圭二監督を招へいし、開幕から臆することなく堂々と戦った。
そして、シーズン終盤まで昇格争いに絡んだが、第36節・モンテディオ山形戦で1-2と競り負けて、昇格プレーオフ圏内の6位以内が消滅。最終節、自動昇格の2位以内、さらにJ2優勝の可能性もある千葉の猛攻にさらされ、自分たちとは決定的な差がまだあることを、痛感させられた。
「ひとりひとり、千葉の選手の方が魂がこもっていたし、熱量も高かったです。サッカーの内容どうこう以前に、自分たちの気持ちも力も及ばなかった。それが感じた一番の差です。たとえ何もかかっていない状態でも、ひとりひとりが魂を震わせてプレーしていれば、もう少し試合も変わったんじゃないかと思います」
この悔しさを、バネにして。163cmと小柄ながら、球際でも勇敢に戦う地元・今治出身のサイドアタッカーは、すでに奮い立っている。
ホーム、アシックス里山スタジアムでの今季最終戦となったコンサドーレ札幌戦(第37節△1-1)でのプレーぶりが、何よりの“所信表明”だ。
1-0で迎えた76分。追加点を取って勝負を決めたい展開で、自ら相手陣内でボールを奪うと一気にドリブルで運んでいく。
右手にチームのエースでJ2得点王も視野に入れるマルクス ヴィニシウス、左手にチームのもう1人の得点源、横山夢樹が並走する。それでも迷わず、ペナルティエリア手前で右足を振り抜いた。が、シュートは札幌GK菅野孝憲に止められた。
札幌戦後に話を聞くタイミングがなく、最終節・千葉戦後のミックスゾーンでそのシーンを振り返ってもらうこちらの非礼にもかかわらず、にっこり破顔で答えてくれた。
「あれはもうパスなんて考えず、自分で行ったろう、と。全然、悔いはなかったです」
初めてのJ2で得られた手応えを新たなパワーに変えて、2026年も自分らしく、力を尽くす。さらなる高みを目指して、挑み続ける。
Reported by 大中祐二