Js LINK - Japan Sports LINK

Js LINKニュース

【取材ノート:今治】J2元年のFC今治で歴戦の三門雄大が見詰め、体現し続けてきたもの

2025年12月25日(木)


2025シーズンの明治安田J2リーグ最終節、アウェイのジェフユナイテッド千葉戦を控えて、プロ17年目でチーム最年長の三門雄大は“For the team”よりも、“For yourself”の心持ちを強調した。自分に向けてではなく、チームメートへのもので、チームのJ1昇格の可能性が無くなったことを踏まえた上でのアドバイスである。

「クラブとしてより良い順位、ひとケタ順位で終わるのは大事なことです。今治がJ2の1年目でどこまでやれたのか、歴史に残りますから。僕個人としても、やはりそこが一番です。

でも一人の選手として考えるとき、常に『より高いレベルで――』と目指してほしいし、成り上がっていくべきだとも思っていて。そこはプレーオフがなくなったからとか、チームの最終順位が…とかで左右されるものではなく、次の千葉戦での活躍次第でJ1のチームから引っ張られるかもしれないし、このクラブでの評価を高めることもできるだろうし。

クラブのためにサッカーをすることが、自分につながってくる。そして、自分のためにサッカーをすることが、クラブにつながってくる。循環だと思うんですよね。17年間、そういう姿を見せることが大事だと、ずっと思いながらやってきたので」

最終節、チームはJ2優勝とJ1昇格を懸けた千葉に粉砕され、0-5で完敗した。自身もメンバー入りしたものの、出場はならず。リーグ戦31試合に出場し、2ゴールを挙げてJ2昇格に大きく貢献した昨季とは打って変わり、今季は7試合出場無得点にとどまった。

アルビレックス新潟でプロとなり、横浜F・マリノス、アビスパ福岡、大宮アルディージャ、そして今治と、J1、J2、J3すべてのカテゴリーでプレーしてきた歴戦の勇者である。2025シーズン、1人の選手として戦い続けると同時に、初めてのJ2という航海に漕ぎ出したチームの座標を、常に感じ取っていた。

「僕が大宮で初めてJ2を戦ったとき、(マイケル)オルンガやクリスティアーノ、(マテウス)サヴィオのいる柏が上位で、そういう別格がリーグにいたんです。

今年のJ2を見ると、走ったり球際で戦うところが昔よりフォーカスされて、それはサッカー的に自分たち向きだし、だから変にビビることなくやれたんだと思います。実際、開幕のブラウブリッツ戦も0-1で負けたけれど、しっかりやれると感じたし、ホームのV・ファーレン長崎戦では4点取って勝っているし(第8節○4-1)。

過信になってはダメだけれど、どんなチームに対しても戦えると感じられた1年でした」

だからこそ、個人のクオリティーがカギとなる。決めるべきところで決め、決められてはいけないところで決めさせない。シンプルだが決定的なところが差となって、目標であるJ2元年でのJ1昇格には届かなかった。

「夏にタク(安井拓也)が千葉から期限付き移籍で入ってきて、練習からうまいんですよ。“やっぱり、さすがだな”と思う反面、そんな彼もジェフでは試合に出られなくて、出場機会を求めて今治にやって来た。

そういうことをみんなが自覚して、毎日の練習から真摯に取り組んでいく。持っているクオリティーを出し切る。これまでの今治がそうだったように、やり続けることでみんなうまくなっていくはずです。

誰かが言い続けないといけない。監督なのか、コーチングスタッフなのか、『いや、そこは選手でしょ』という意見もあるでしょう。今年、僕やフク(福森直也)、ヤマ(山田貴文)がみんなに言い続けてきて、言われた選手がさらにつないでいってくれれば、今治は自然に強くなる。今治の真面目さ、ひたむきさを、選手が変わっていっても、失ってほしくないですね」

まさに選手とクラブの循環、仲間から仲間へのバトンパス、連鎖だ。

「3年前に僕が今治に来たとき、ケイシ(楠美圭史、現SHIBUYA CITY FC)とよく話していたんですよ。『こういう泥臭いところ、失くしてほしくないよね』って。シュウさん(修行智仁GKコーチ、昨季まで今治でプレー)は、『それができるのがかっこいいんだよ』と言っていたし。

うまいのは、もちろんかっこいいですよ。1本のパスやシュート、1本のフリーキックでウワッ! と盛り上がるのも事実。でも、あきらめずに最後までボールを追いかける姿、粘り強く戦う姿に温かく、熱量を持って歓声を挙げてくれるのが今治のサポーターなんです。みんながここまでつないできたものを、これからもずっと続けていってほしいという思いがありますね」

百戦錬磨のフットボーラーだからこそ、見据えることができる今治のあるべき姿と近未来。2026年のチームにとって、実に頼もしい指標である。

Reported by 大中祐二