
2026年の始動日に激震が走った。1月5日、クラブはコンプライアンスに抵触する行為が確認されたとして金明輝監督との契約解消、これまでヘッドコーチを務めていた塚原真也氏が暫定監督として指揮を執ることを発表。アビスパ福岡に関わる人々に動揺が起こる中で10日、今年初の実戦となる東海大福岡高校とのトレーニングマッチ(30分×3本)が行われた。約600人の観客が見守る中、周囲の不安を取り除くかのようにエネルギッシュなプレーを見せる選手たち。北島祐二もその一翼を担った。
暫定監督から指名を受けて2本目からキャプテンマークを巻き、チームを引っ張りたいという強い気持ちを持ってピッチに立ったアタッカーは、攻撃のタクトを振るう。持ち前の足元の技術の高さを活かしながら局面ごとに相手の嫌がるポジションをとり、ビルドアップの出口となってチームの前進をサポート。的確にボールを捌いて自らもゴール前へと侵入し、得点を挙げた。
「監督も代わってどういう方向でどういう戦術でやっていくかを確認する初めての機会だったので、みんなの方向を一つに向かせるという意味では良いゲームだったと思います。
(個人的に)思ったよりは動けたかなと思います。ただ、心肺的にも筋肉的にも(プレーしたのは)30分だけだったんですけど、疲労はきたので、これを(開幕まで)残り1ヶ月弱でどれだけ上げていけるかというところでコンディションを見ながら怪我をしないように、そのギリギリのラインを攻めていかないといけないと感じました」
北島自身、リーグ戦30試合以上の出場を目標に掲げて臨んだ昨シーズンは波乱の一年となった。開幕当初はベンチスタートが続いた中で、3月にチャンスを掴み、先発した公式戦は9戦負けなしと存在感を示して一気に攻撃の要へと成長。6月21日の新潟戦では、幼い頃から夢見ていたホーム・ベスト電器スタジアムでJ1初ゴールを挙げた。しかし、シーズン中、怪我に悩まされ続け、2度の長期離脱。背番号25がピッチで輝きを見せる姿は少なく、リーグ戦は12試合の出場にとどまった。
「(昨シーズンは)考えることが多かった一年なのかなと。開幕してすぐはベンチで(試合に)出られないこともあったんですけど、(シーズン)途中できっかけを掴んで出て、ただ、怪我もあってというところで、いろいろな立場になりました。試合に出られない立場、出て活躍する立場、怪我で出られない立場。いろいろな思いをして、他の選手がどう感じているかというのが分かったので、去年の経験をよりチームに還元したいと思います。チームが良い方向に、勝てるように、培った自分の力を今年以降チームに還元できたらと思います」
昨シーズン、福岡のゴール数はリーグ17位タイの34。チームの最大の課題である得点力アップへゴール前での崩しが重要なテーマとなる中で、攻撃に違いを生み出せる北島が担う役割は大きい。
「ゴール前でよりスペースと時間がない状況でボールを受けることが多くなると思うので、そこでどれだけ冷静でいられるか、ボールだけじゃなくて顔を上げて、いろいろなことを見ておけるかというのが大事になると思います。そこは感覚とイメージが本当に大事になってくると思うので、いろいろな状況をイメージしながら練習していけたらまた質は上がると思います」
今年、自身に課しているのは、味方のビルドアップを助けながらゴール前へと侵入し、シュートを打つ場面を増やすこと。その為に「予測」が重要になると言う。
「自分がボールを出した後に、その出した選手がどこを見てどこに出そうとしているか。その先の選手がまたどういう判断をしそうかというのを瞬時に判断してどこにボールが来るかというのを予測することが何より大事だと思います。あとはそれに付いていける身体、スピードだったり、コンディションの面も調整しつつやらないといけないと思います」
5歳の時にアビスパ福岡サッカースクール(幼児クラス)でサッカーを始めた北島は、その後、小郡東野SC、アビスパ福岡U-15、アビスパ福岡U-18を経て、2019年にトップチームに昇格。2023年、東京ヴェルディに期限付き移籍し、翌年復帰した25歳は、今やユース出身選手として最年長となる。昨シーズン加入した前田一翔とサニブラウン ハナンに加え、昨シーズン途中には前田陽輝と武本匠平がプロ契約。ユースの後輩が次々とトップチーム昇格を果たしている。「やっぱり育成の選手、ユース上がりの選手が活躍しないと。活躍するクラブが本当に強いクラブだと思いますし、そういう小さい頃から育った選手がいないとそのクラブの価値というのは上がらない」と以前語っていた彼に今の思いを聞いてみた。
「どんどんユースからトップチームに上がってくる選手が増えて、練習参加する選手も増えて、本当に良い流れだと思います。ただ、そこで終わるんじゃなくて、試合に出てからがプロサッカー選手なので、そこに持っていくための手助け、声掛けだったり、メンタルのところだったり、プレーのこともそうですけど、何か僕がこれまで感じてきたこと。『こうしておけば良かったな』と思うことを伝えていけたらまた良い選手がここから生まれると思うので、そこは自分の経験をより伝えるということが今年以降大事になると思います。
アビスパで育った選手がトップチームで活躍する。それほど価値の高いものはないので、まずはその先頭に僕が立てるように。僕がプレーで見せないと言葉は響かないと思うので、まずは自分のプレーを最大限発揮して、見せていけたらと思います」
2月に開幕する百年構想リーグでの目標は全試合出場。その為に日々自らの身体と向き合い、怪我をしないよう細心の注意を払っている。
「本当に全試合出場するのがどれだけ難しいことなのかというのは、去年、身に染みて分かったので、敢えて(自身に)高いハードルを課す。(チームの)中心選手になっていくためには全試合出場をしないといけないので、身体のコンディションの管理と身体のケアに集中して全試合出場したいと思います。(自身の身体の)どこが張っているのか、どこが痛めそうなのか敏感になること。去年から自分の身体にもっと気を遣うようになりました。それまでは『そんなに気にし過ぎてもよくないでしょ』という感じでやっていたんですけど、怪我も増えたので少しでも張りだったり、筋肉痛だったり、痛みが出そうなときは早めに処置をするというのを心掛けています」
2026シーズンから副キャプテンに就任し、アビスパを引っ張る立場の一人となった北島。チームの中心選手としてピッチで輝きを見せ続けられるかが福岡の浮沈の鍵を握っているといっても過言ではない。
Reported by 武丸善章