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【取材ノート:今治】「飛鳥FCでの経験があったから」佐藤璃樹は飛躍してその言葉を証明する

2026年1月29日(木)


うまくいかないことを、勝敗や勝点に左右されることなく、ポジティブに変換していく。トレーニングマッチならではのメリット、“うま味”ではないだろうか。洗い出された個人やチームの課題解決に、大胆かつ率直に取り組める。開幕前、プレシーズンであれば、なおさらだ。

昨年、初めての昇格で迎えた明治安田J2リーグを、FC今治は11位で終えた。2年目のJ2が始まる。2026年最初のJクラブとの対外試合となった高知ユナイテッドSCとのトレーニングマッチは、まさに実りのための種子を得る機会となった。

試合は高知キャンプ中の1月18日に、30分×3本で行われた。今治は、3本目に登場した横浜FCから新加入の駒井善成(期限付き移籍)のゴールによって、1-0で勝利。しかし90分トータルで見れば、必ずしも効果的な前進、チャンスメークを図れたわけではなかった。

始動から2週間。まだまだチームづくりの途中なのは、当然だ。新チームがもっと良くなるための課題を見つけることができた高知戦。飛鳥FCへの半年間の期限付き移籍から復帰した佐藤璃樹は、1本目で新井光とボランチのコンビを組み、ビルドアップから崩しに掛かるスイッチャーとしてチャレンジを続けた。

昨季からメンバーの入れ替わりを経たチームは、ほとんどシュートを打てないまま、最初の30分間を終えた。それでも、起こったエラーをプラスに捉える。

「チームでやりたいことを、みんな共通認識として持っていて。やろうとして失敗することが多かった。そこをキャンプで突き詰めていけば、必ず質は上がっていくはずです」

このオフ、チームの得点源で、精神的支柱だったブラジル人FWマルクス ヴィニシウスが名古屋グランパスに移籍。さらに破壊力満点のドリブルと得点力を兼ね備えた若きアタッカー、横山夢樹がセレッソ大阪に、チーム戦術上、極めて重要な役割を担うウイングの弓場堅真がサガン鳥栖に移籍。中盤の位置から見回すチームは、大きく様変わりしている。

その上で、チームでやろうとすることは明確。ブレていないことは重要だ。あいまいになるかならないかによって、今後、進む道は大きく変わってくる。

「シャドーの選手がサイドやセンターバックからボールを受けて、“3人目”である自分たち中盤の選手に落とす。レイオフの場面を作ろうと、何度もトライできました。流動的な3人目の動きを、みんな意識していたと思います。合わせていけばもっとうまく行くし、チャンスも作れて、点も取れる」

神村学園高校から今治に加入したのが2022年。技術が高く、センスあふれる配球が武器のMFとして早くから期待された。だが、たび重なる太もものけがに苦しみ、最初の3年間のリーグ戦出場は10試合にとどまった。

チームが初めてJ2を戦った昨年は、途中出場で2試合プレーしたあと、7月にJFLの飛鳥に育成型期限付き移籍。環境を変えて鍛えることになった。

「飛鳥で、本当に苦しい経験をしました。試合に絡んではいたんです。でも自分は何の結果も出せず、チームも(関西リーグ1部に)降格してしまいました。飛鳥をJFLに残すために行ったにも関わらず、それができなかった。とても悔しさがあります。

それでも今治が、こうしてまた自分を呼び戻してくれて、その期待に応えないといけない。勝負の年です。覚悟を持って戦います」

突き動かす熱源が、さらにもう一つ。母校の神村学園高が全国高校選手権に初優勝。夏の全国高等学校総合体育大会での優勝に続き、二冠を達成したのだ。

「夏冬二冠ですからね。試合映像もいくつか見ましたけど、みんなしっかり走るし、戦うし。その上で結果もちゃんと出して、優勝している。パワーをもらいましたし、自分も負けていちゃいけないな、と。後輩たちからパワーをもらうんじゃなくて、活躍して自分が後輩にパワーを与えないといけない」

飛鳥に半年間の武者修行に行く前、そのプレーぶりは、どちらかといえば大らかで、ギラつくような野心とは少し距離があった。ピッチを離れれば後輩の面倒見が良い、朗らかな兄貴分。それが今、高知とのトレーニングマッチ後に話す表情は、たくましさを確実に増している。

昨年の夏、チャンスを求めて挑んだJFLでは9試合に出場して無得点。今治に復帰するにあたり、クラブを通して「この先、飛鳥でのあの経験があったからと言えるようにサッカー選手として大きくなります!」とコメントした。

その言葉を実行に移す新たなチャンスが、目の前に広がる。明治安田J2・J3百年構想リーグが、間もなく開幕する。

Reported by 大中祐二