
塚原真也暫定監督の初陣となった明治安田J1百年構想リーグの開幕戦。前回の【取材ノート:福岡 狙うは開幕スタメン。輝く新星ボランチ前田快】 でご紹介した特別指定選手の前田快が衝撃のJリーグデビューを飾った。「気持ちよく足を振り抜いて枠に入れようという思いで蹴った。(サポーターの)声援でシュートを打ったぐらいの感覚があって、ボールが最後ポストの内側に当たって入ったというのは、本当にベスト電器スタジアムの声援の力だと思うんで、みんなのおかげで決めることができた」と嬉しそうに振り返るスーパーゴールで福岡は1-1の同点に追いつき、PK戦(6-5)の末、岡山を下して勝点2を掴んだ。
90分で決着がつかない場合、即PK戦。エンド決めのコイントスで福岡側のゴールで実施されることが決まった瞬間、スタジアムは大きく沸き、ゴール裏のサポーターは、相手選手のメンタルを揺さぶろうとする幕を掲げて盛り上げた。橋本悠は「勝ったから」と前置きをした上で「ホームでああやってサポーターたちもお祭り騒ぎぐらいなっていると相手も嫌だろうなと思いながら、新鮮で楽しかった」と振り返るように“リーグ戦の中で行われるPK戦”という28年ぶりのレギュレーションは、負けたら終わりのトーナメントのPK戦とはまた違った雰囲気を醸し出した。
J1の開幕節だけで4試合がPK戦にもつれた。GKの小畑裕馬は、自分たちの試合の前日までに行われたPK戦を目にしながら感じていた「みんな本当に練習をしているなという感覚」を実際にピッチで相手と対峙してより強く実感したと言う。その上で「やっぱり、よりゴールを小さく見せるというのはすごく大事なことだと思います。それが少しでも(相手の)プレッシャーになれば、隅を狙わないといけなくなって、そのプレッシャーからどんどんゴールから外れていく。それも本当に心理戦だと思うので、それがあったから外してくれたのかは分からないですけど、やっぱりそういう一つひとつ行動も心理的なものになってくると思うので、そういう駆け引きはやっていた」と明かす。相手選手が外した2本のシュートは、いずれもクロスバーを直撃し、ゴールに嫌われたもの。紙一重の差が、この試合の勝敗を分けた。
塚原暫定監督は、PKキッカーの選定について「去年からの自分の目もありますし、今年始まってから定期的にPKのトレーニングを入れているので、そういったところからまずは選考しました。その上で、自信がある選手はさらに前に出ていくというか、自分からというのもありましたけども、そういった形で考えていました」と基準を示す中で、この試合で重要な1番手を託されたのは橋本。相手GKのセーブに遭い、「自信があって、練習でも外したことがなくて、初めて外す側になった」彼に小畑はすぐさま駆け寄り、声を掛けた。「大丈夫、大丈夫。こういうのあるからみたいな言葉を掛けてもらいました。(小畑なら)止めてくれるだろうなと思っていて、サポーターの力も借りながら大丈夫だろうと思っていたので、それが思うような結果になってくれました」
サッカーはミスが付き物のスポーツ。仲間のミスが起きた時には、チーム全員でカバーする。仲間を信じ、チーム一丸となって戦い続ける。橋本と小畑の間で紡がれたやり取りを聞いたり、勝利が決まった後、選手やコーチングスタッフが大きな輪になって喜ぶ姿を見ていると、90分で決着がつかない場合、即PK戦という今大会のレギュレーションが、福岡の大事にするチームの一体感をより増幅させてくれる一助になるのではないかと感じた。
普段の90分では生まれないプレーやドラマが見られる今大会。そういった光景をここから約4ヶ月、毎週のように目にする可能性があるのは、この大会ならではであり、見る側の興味を引く大きなポイントになることを再認識させられた。
今大会、6位以上を目指す福岡。もちろん、90分以内での勝利を理想とするが、力が拮抗するリーグにおいてPK戦でどう競り勝てるか。それによってもたらされる一体感の醸成は、積み上げる勝点と同様にチームの大きな財産になっていくに違いない。
Reported by 武丸善章