「テレビのバラエティー番組でも、前室とかで話していて、スベる人ってだいたいわかるんですよ(笑)。たとえば肩をぶん回してる人たちはあんまり良くなくて、やっぱり平常心が一番だなと思います」
前節・大宮戦で19歳のGK栗栖汰志をプロデビューさせた理由について聞いた際、槙野智章監督はこぼれ話として冒頭のように語った。先週は北村海チディが練習を離脱して、ゴールマウスを守る大任を誰に任せるか検討していた中で、候補選手たちと個別に話す機会を設けたという。
「(栗栖)汰志は目つきがすごく良かったですし、前々日に彼と話したときに、すごくリラックスしていて、言葉のキャッチボールでもすごく良いものを持ってる感触があったんです。もちろん汰志はキャンプから良かったですし、僕はコミュニケーションをとったときの感覚を大事にしたいと思っています」と、槙野監督は大胆起用を決断した決め手について語った。
と同時に「僕もJ1でレギュラーをつかんだ試合がアウェイ埼スタでの浦和戦だったのですが(広島時代)、今回もJ2上位の大宮とのアウェイゲームで初めて出るということで、ひとつ賭けでもあったと思います。だけど、失敗したら監督のせいにしていいし、またもう1回やろうという気持ちになれる。逆に結果が良かったら自信になるし、パーンと跳ねますよね。若い選手って本当に一つのプレーとか一つの勝利をきっかけにビックリするぐらい変わりますし、僕もそうだったので、そうなればいいかなと思って、あえて難しい状況で出しました」(槙野監督)という願いもあった。
ただ、「クロスに飛び出すところは自分の中でもとくに意識してました」と本人も振り返る中で、44分に左クロスに飛び出したが触ることができず、相手に決定機を与えてしまったシーンもあった。だが、そこでチャレンジを控えることなく、後半も積極的にクロスに飛び出し続けたのが栗栖らしさであり、プロ初出場の19歳として特筆すべきところだ。
「もちろん気にしてなかったわけではないですけど、これで出なくなったら選手として面白くない、ちっちゃい選手で終わるんだろうなと自分で思ったので、試合中ずっと1人で『やっていこう、出ていこう』みたいに自分に言い聞かせてました。デビュー戦は人生に1回なので、やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいと思って、思いきってチャレンジしました」(栗栖)
そうした精神的なタフさや前向きさは、GKにとって重要な資質のひとつであり、栗栖の持ち味でもある。それを信じて賭けに勝った槙野監督の慧眼と決断も見事と言う他ない。芸能界での経験をサッカーの監督業にしっかりと生かしているのも彼らしいところだ。
「彼が埼玉出身というのも知ってましたし。恩師が来るとか友人たくさん来るということも言ってました。僕はそういう姿勢は好きですし、全然ありだと思います。ゲームキャプテンをコロコロ変えるチームはあまりないと思いますが『彼女が見に来るからやりたいです』と言う選手がいたとしても、それがモチベーションになるんだったらやってもらえばいいですし、今後も(日替わりゲームキャプテンは)あると思います。ただ、ダメだったらダメですぐ降ろしますから(笑)」(槙野監督)
そんな中村優のどんな相手に対してもまったく物怖じしない積極性はご存じの通り。大宮戦では持ち味の攻撃だけでなく、身体を張った献身的な守備でもゲームキャプテンとしては責任を果たした。
ミーティングでも個別面談でも、監督やコーチが一方的に話すのではなく、お互いに言葉のキャッチボールを重ねていく「参加型」を大事にしている選手目線に近い38歳の若手監督。自分の考えをしっかりと伝えられて、ピッチ上で熱い気持ちや自分の強みを恐れることなく表現できる選手を、積極的に起用しているように見える。
面談等で、自分の考えを整理して自分の言葉で話せる選手が、試合でも力を発揮できるという考えもあるのかもしれない。栗栖の起用も、その成功例のひとつと言えるだろう。
開幕戦こそ岐阜に完敗したものの、その後は3勝(PK:1勝1敗)と着実に結果を出し始めている槙野MYFC。大卒ルーキー4人の大活躍や、昨年無得点に終わった松木駿之介の躍進など選手起用も大当たりして、チーム内の競争も非常に活性化し、個々の成長を促している。
大きな注目を集めている新監督が、プロチームを率いるのが初めてとは思えない手腕を随所で発揮していることは、クラブとしても発展途上の藤枝MYFCにとって大きな希望となっている。
Reported by 前島芳雄
前節・大宮戦で19歳のGK栗栖汰志をプロデビューさせた理由について聞いた際、槙野智章監督はこぼれ話として冒頭のように語った。先週は北村海チディが練習を離脱して、ゴールマウスを守る大任を誰に任せるか検討していた中で、候補選手たちと個別に話す機会を設けたという。
「(栗栖)汰志は目つきがすごく良かったですし、前々日に彼と話したときに、すごくリラックスしていて、言葉のキャッチボールでもすごく良いものを持ってる感触があったんです。もちろん汰志はキャンプから良かったですし、僕はコミュニケーションをとったときの感覚を大事にしたいと思っています」と、槙野監督は大胆起用を決断した決め手について語った。
と同時に「僕もJ1でレギュラーをつかんだ試合がアウェイ埼スタでの浦和戦だったのですが(広島時代)、今回もJ2上位の大宮とのアウェイゲームで初めて出るということで、ひとつ賭けでもあったと思います。だけど、失敗したら監督のせいにしていいし、またもう1回やろうという気持ちになれる。逆に結果が良かったら自信になるし、パーンと跳ねますよね。若い選手って本当に一つのプレーとか一つの勝利をきっかけにビックリするぐらい変わりますし、僕もそうだったので、そうなればいいかなと思って、あえて難しい状況で出しました」(槙野監督)という願いもあった。
「やらないで後悔するよりやって後悔したほうが」
これまでベンチにも入ったことのない高卒2年目のGKをいきなり先発起用するのは大きな賭けではあったが、大宮戦での栗栖は、相手サポーターのブーイングもある中で冷静に自分らしいプレーを続け、危ない場面での好セーブも見せて、チームにとって大きな価値のある勝利に貢献。指揮官の期待に見事に応えてみせた。ただ、「クロスに飛び出すところは自分の中でもとくに意識してました」と本人も振り返る中で、44分に左クロスに飛び出したが触ることができず、相手に決定機を与えてしまったシーンもあった。だが、そこでチャレンジを控えることなく、後半も積極的にクロスに飛び出し続けたのが栗栖らしさであり、プロ初出場の19歳として特筆すべきところだ。
「もちろん気にしてなかったわけではないですけど、これで出なくなったら選手として面白くない、ちっちゃい選手で終わるんだろうなと自分で思ったので、試合中ずっと1人で『やっていこう、出ていこう』みたいに自分に言い聞かせてました。デビュー戦は人生に1回なので、やらないで後悔するよりやって後悔したほうがいいと思って、思いきってチャレンジしました」(栗栖)
そうした精神的なタフさや前向きさは、GKにとって重要な資質のひとつであり、栗栖の持ち味でもある。それを信じて賭けに勝った槙野監督の慧眼と決断も見事と言う他ない。芸能界での経験をサッカーの監督業にしっかりと生かしているのも彼らしいところだ。
ゲームキャプテンは立候補制に?
大宮戦では、もうひとつ興味深いエピソードがあった。大卒ルーキーの中村優斗が初めてゲームキャプテンを務めたが、それは本人が槙野監督に「やりたいです」と言ってきたことによって実現した大胆人事だった。「彼が埼玉出身というのも知ってましたし。恩師が来るとか友人たくさん来るということも言ってました。僕はそういう姿勢は好きですし、全然ありだと思います。ゲームキャプテンをコロコロ変えるチームはあまりないと思いますが『彼女が見に来るからやりたいです』と言う選手がいたとしても、それがモチベーションになるんだったらやってもらえばいいですし、今後も(日替わりゲームキャプテンは)あると思います。ただ、ダメだったらダメですぐ降ろしますから(笑)」(槙野監督)
そんな中村優のどんな相手に対してもまったく物怖じしない積極性はご存じの通り。大宮戦では持ち味の攻撃だけでなく、身体を張った献身的な守備でもゲームキャプテンとしては責任を果たした。
ミーティングでも個別面談でも、監督やコーチが一方的に話すのではなく、お互いに言葉のキャッチボールを重ねていく「参加型」を大事にしている選手目線に近い38歳の若手監督。自分の考えをしっかりと伝えられて、ピッチ上で熱い気持ちや自分の強みを恐れることなく表現できる選手を、積極的に起用しているように見える。
面談等で、自分の考えを整理して自分の言葉で話せる選手が、試合でも力を発揮できるという考えもあるのかもしれない。栗栖の起用も、その成功例のひとつと言えるだろう。
開幕戦こそ岐阜に完敗したものの、その後は3勝(PK:1勝1敗)と着実に結果を出し始めている槙野MYFC。大卒ルーキー4人の大活躍や、昨年無得点に終わった松木駿之介の躍進など選手起用も大当たりして、チーム内の競争も非常に活性化し、個々の成長を促している。
大きな注目を集めている新監督が、プロチームを率いるのが初めてとは思えない手腕を随所で発揮していることは、クラブとしても発展途上の藤枝MYFCにとって大きな希望となっている。
Reported by 前島芳雄