2022年からセンターバックとして東京ヴェルディのディフェンスラインの中心を担い続けてきた谷口栄斗が、川崎フロンターレへの移籍でチームを去った。それに伴い、今季はDFラインが再編された中で、着々と存在価値を高めているのが鈴木海音である。
鈴木は、中学生の頃からジュビロ磐田のアカデミーで育ち、アンダー15(U-15)から各世代別日本代表の常連。ジュビロの至宝としてクラブの顔となるべく将来を嘱望されていた。だが昨季、キャリアアップのために断腸の思いで東京Vへの移籍を決断した。
J1チームでレギュラーを奪い、日本代表に選ばれ、海外クラブへ移籍して活躍する。プロサッカー選手であれば誰もが思い描くであろう青写真を、鈴木ももちろん胸に抱く。しかし、移籍1年目の昨季は、その最初のステップで躓いた。「昨年は、移籍を『正解』にできなかった」。リーグ戦出場は7試合にとどまり、うち、先発出場は1試合に終わった。
だが、試合に絡めない中でも、日々積み重ねてきた不断の努力は着実に鈴木の血肉として蓄えられてきた。
「去年、エクストラ(全体練習後に行われる、試合メンバー以外の選手による強化練習)も含め、とにかく練習がきつかったですが、1年間やり続けてきて、間違いなく成長はできていると思います」
その成長を、城福浩監督が見逃すはずはない。今季は開幕戦から右のセンターバックとして先発で起用され、ここまで行われた第8節のFC東京戦までチーム唯一全試合フルタイム出場を果たしている。
昨季中から「変化や成長はピッチでしか表現できない」と言い続けてきた鈴木。「今、こうしてピッチに立てていることがものすごく幸せに感じていますし、それ(成長)を表現しようという気持ちでいっぱいです」と、充実の表情で話す。
各世代代表に選ばれてきた実績が証明するように、持っているポテンシャルはもともと非常に高い。そのスピードや対人の強さ、積極的なボール奪取力などの特長がより発揮され、攻守にわたってチームに貢献できている印象だ。
ただ、鈴木には「満足感」は微塵もない。
「ゴール前で体を張るというところは個人的に自信を持ってやれてきていますし、僕自身も強く意識しているところです。でも、まだ8試合ですし、まだまだできることがある。自信を持ちながらプレーできていることはいいことかもしれませんが、パフォーマンス自体はもっと上げられると思っています」と、向上心は増す一方だ。
そんな鈴木の成長を、誰よりも間近で支え、促し続けてきたのが森下仁志ヘッドコーチだ。同コーチは、その変化を次のように話す。
「去年ヴェルディに来た時は、サッカーは常に状況が変わる中で、選択肢というか、見えているものや判断材料がまだまだ少なくて、判断1つで対応してしまうところが特にありました。それって『あるある』なのですが、元々、海音はものすごいスピードがあって、逆に、スピードがあるからこそ、どうしてもちょっとルーズになってしまうところがあったんです。多分それは、高校生とか若い時はそれでも間に合っていたと思うんですよ。それが間に合わないのがJ1のレベル。なので、この1年で、彼はより自分の速さを活かせる準備ができるようになってきた。自分の持っている能力を生かせるようになってきたということだと思います」
「でも、」と森下コーチは続けた。
「1番は、純粋にやるようになったことだと思います。最初に来た頃よりも素直になった。
もちろん、強い意気込みを持って来ただろうし、プライドもあっただろうし。でも、こっちが働きかけることに対して、すごく純粋に受け取れるようになった。ツナ(綱島悠斗)とかもそうでしたが、伸びる選手というのは、やはりそこの入り口がまず変わる。捉え方が、『でも』とか『なんで』が限りなくなくなってきます。そうなったら、ものすごく自分の能力を発揮できるようになる。他の選手もそうですが、海音も元々能力が高いので、ここからさらに伸びると思いますよ」
マインドの変化は、姿勢やプレーに必ず現れる。その変化は明らかだと同コーチは頷く。
「純粋に『フットボール』ができるようになってきたというか。つまり、試合をやっているのが1人ではなくなってきましたよね。例えば、今で言えば、隣(3バックの中央)でやっている井上竜太とか、ウィングバックやボランチの選手とだいぶグループとしてやれるようになってきました。それは、視野や見るものが増えてきているからです。もちろん、まだまだですし、海音ならもっとできるし。そこはこれからも追求していきたいと思います。
ポジションをやっと掴めてきたので、それで終わるのではなく、彼にはチームを勝たせられるディフェンダー(DF)になってもらいたいなと思います」
鈴木自身も、覚悟は相当だ。
「勝って、無失点で終われれば一番いいですが、たとえそれができたとしても、個人として完璧な試合なんてないと思う。なので、1試合1試合、試合に出られる喜びと感謝を感じながら、自分の課題だったりを克服して、自分の良さをたくさん出していくということを続けていければなと思っています。
今季は半年間という特別なシーズンですが、まずこの半年間、チームの勝利に貢献し続けたいです」
自らが選んだ「東京ヴェルディに来た」意義を、今年は結果で証明してみせる。
Reported by 上岡真里江
鈴木は、中学生の頃からジュビロ磐田のアカデミーで育ち、アンダー15(U-15)から各世代別日本代表の常連。ジュビロの至宝としてクラブの顔となるべく将来を嘱望されていた。だが昨季、キャリアアップのために断腸の思いで東京Vへの移籍を決断した。
J1チームでレギュラーを奪い、日本代表に選ばれ、海外クラブへ移籍して活躍する。プロサッカー選手であれば誰もが思い描くであろう青写真を、鈴木ももちろん胸に抱く。しかし、移籍1年目の昨季は、その最初のステップで躓いた。「昨年は、移籍を『正解』にできなかった」。リーグ戦出場は7試合にとどまり、うち、先発出場は1試合に終わった。
だが、試合に絡めない中でも、日々積み重ねてきた不断の努力は着実に鈴木の血肉として蓄えられてきた。
「去年、エクストラ(全体練習後に行われる、試合メンバー以外の選手による強化練習)も含め、とにかく練習がきつかったですが、1年間やり続けてきて、間違いなく成長はできていると思います」
その成長を、城福浩監督が見逃すはずはない。今季は開幕戦から右のセンターバックとして先発で起用され、ここまで行われた第8節のFC東京戦までチーム唯一全試合フルタイム出場を果たしている。
昨季中から「変化や成長はピッチでしか表現できない」と言い続けてきた鈴木。「今、こうしてピッチに立てていることがものすごく幸せに感じていますし、それ(成長)を表現しようという気持ちでいっぱいです」と、充実の表情で話す。
各世代代表に選ばれてきた実績が証明するように、持っているポテンシャルはもともと非常に高い。そのスピードや対人の強さ、積極的なボール奪取力などの特長がより発揮され、攻守にわたってチームに貢献できている印象だ。
ただ、鈴木には「満足感」は微塵もない。
「ゴール前で体を張るというところは個人的に自信を持ってやれてきていますし、僕自身も強く意識しているところです。でも、まだ8試合ですし、まだまだできることがある。自信を持ちながらプレーできていることはいいことかもしれませんが、パフォーマンス自体はもっと上げられると思っています」と、向上心は増す一方だ。
そんな鈴木の成長を、誰よりも間近で支え、促し続けてきたのが森下仁志ヘッドコーチだ。同コーチは、その変化を次のように話す。
「去年ヴェルディに来た時は、サッカーは常に状況が変わる中で、選択肢というか、見えているものや判断材料がまだまだ少なくて、判断1つで対応してしまうところが特にありました。それって『あるある』なのですが、元々、海音はものすごいスピードがあって、逆に、スピードがあるからこそ、どうしてもちょっとルーズになってしまうところがあったんです。多分それは、高校生とか若い時はそれでも間に合っていたと思うんですよ。それが間に合わないのがJ1のレベル。なので、この1年で、彼はより自分の速さを活かせる準備ができるようになってきた。自分の持っている能力を生かせるようになってきたということだと思います」
「でも、」と森下コーチは続けた。
「1番は、純粋にやるようになったことだと思います。最初に来た頃よりも素直になった。
もちろん、強い意気込みを持って来ただろうし、プライドもあっただろうし。でも、こっちが働きかけることに対して、すごく純粋に受け取れるようになった。ツナ(綱島悠斗)とかもそうでしたが、伸びる選手というのは、やはりそこの入り口がまず変わる。捉え方が、『でも』とか『なんで』が限りなくなくなってきます。そうなったら、ものすごく自分の能力を発揮できるようになる。他の選手もそうですが、海音も元々能力が高いので、ここからさらに伸びると思いますよ」
マインドの変化は、姿勢やプレーに必ず現れる。その変化は明らかだと同コーチは頷く。
「純粋に『フットボール』ができるようになってきたというか。つまり、試合をやっているのが1人ではなくなってきましたよね。例えば、今で言えば、隣(3バックの中央)でやっている井上竜太とか、ウィングバックやボランチの選手とだいぶグループとしてやれるようになってきました。それは、視野や見るものが増えてきているからです。もちろん、まだまだですし、海音ならもっとできるし。そこはこれからも追求していきたいと思います。
ポジションをやっと掴めてきたので、それで終わるのではなく、彼にはチームを勝たせられるディフェンダー(DF)になってもらいたいなと思います」
鈴木自身も、覚悟は相当だ。
「勝って、無失点で終われれば一番いいですが、たとえそれができたとしても、個人として完璧な試合なんてないと思う。なので、1試合1試合、試合に出られる喜びと感謝を感じながら、自分の課題だったりを克服して、自分の良さをたくさん出していくということを続けていければなと思っています。
今季は半年間という特別なシーズンですが、まずこの半年間、チームの勝利に貢献し続けたいです」
自らが選んだ「東京ヴェルディに来た」意義を、今年は結果で証明してみせる。
Reported by 上岡真里江