
待ちわびた瞬間だった。明治安田J2・J3百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第9節、ホームにロアッソ熊本を迎えたこの一戦。
今年からFC琉球に加入したDF千葉和彦がついに初出場初先発、フル出場を果たしたのである。
雷雨の影響でキックオフが1時間遅れるという不安定なコンディションの中でも、40歳という年齢を感じさせない冷静なプレーで最終ラインの中央からチームを支えた。
「皆さんの前でプレーできて非常に幸せな時間でした」
しかし試合は0-1の惜敗。
「応援してくれる方に勝点3を届けたかった」と悔しさを隠さない。
それでも、千葉がもたらした守備の安定感は際立っていた。
平川忠亮監督は「彼がいることで細かいラインコントロールやオフサイドトラップがより密にでき、ハイプレスに対して落ち着く時間を作ってくれる。中央へ差し込むパスの質やスピードは他の選手も追いつかなければいけないレベル」と語った。

また、広島時代に選手とコーチという間柄だった、今季から熊本を率いる片野坂知宏監督も「千葉ちゃんがいるだけでビルドアップが安定する。あの年齢であれだけプレーできるのは素晴らしい」と称賛した。
プレッシャーを受けてもキックフェイントで相手の足を止め、フリーの味方へ配球する。派手さはないが、予測力とコーチングで試合の流れを整える、知性に満ちたプレーだった。
しかし、周囲の評価とは対照的に千葉本人の自己評価は厳しい。
「個人としてもチームとしても非常に悔しい」前半は相手の激しいチェックを受け、
「自陣からの組み立てでうまく剥がしたり、味方に時間やスペースを作るプレーがなかなかできなかった」と振り返る。
前半をスコアレスで折り返しただけに後半6分、相手の左サイドからのスローインの流れで一瞬の隙を突かれた決勝点は重かった。
「ディフェンダーとして責任を感じた失点だった」と、千葉が発した言葉にはチームを背負う覚悟がにじんでいた。また守備面だけではなく、攻撃面への意識も高い。
「もっと楽に前進できる形を作りたいし、後ろからゴール前にシンプルに侵入できるシーンを作りたい」
ビルドアップの起点としてテンポを作るセンターバックで戦っているからこその信念が言葉の端々からうかがえた。
今節、琉球はアウェイでレイラック滋賀FCと対戦する。
滋賀は第8節で、開幕から7連勝で首位を独走していたテゲバジャーロ宮崎に1-0で土をつけて勢いに乗っている。
対戦を前に千葉は「(熊本戦は)エンジンがかかるのが少し遅かった。自分たちからムーブを起こさないと前半からチャンスは作れない」と口にした。
一つの判断、一つのパス。その積み重ねが琉球に新しいリズムを生み出す。歴戦のDFが踏み出した新たな一歩はまだ始まったばかりだ。

Reported by 仲本兼進