ついに、ついに、ついにその瞬間が訪れた。
2026年5月16日、明治安田J1百年構想リーグ第17節水戸ホーリーホック戦で、FW白井亮丞が待望のJ1初ゴールを決めた。
54分。左サイドからの新井悠太のクロスボールを寺沼星文がペナルティエリア内でスルー。その先に白井が走り込み、左足を合わせてゴール左隅に流し込んだ。特別大会のため、リーグ戦としての記録にはならないが、それでも価値ある「J1初ゴール」だ。2024年シーズンに東京ヴェルディユースからトップ昇格を果たして3年目の白井の「1点」を、誰もが待ち望んでいた。
「いやほんと、めちゃめちゃ時間がかかってしまいました」
と、21歳FWは苦笑しながら、でもとても嬉しそうに連敗を止めた殊勲ゴールを振り返った。
「日頃から死ぬ気で練習をやってきた結果、あそこで1点取れたというのは本当に大きかったです。正直、守備も攻撃もプレー自体はまだまだなので、そこはここからの課題なのですが、とはいえ、今季中に『1点』を取れたというだけでモチベーションにもなりますし、自信にもなりました。
本当に、ここからですね。残りのプレーオフラウンド2試合で1点でも取って、来シーズンにつなげられたらなと思っています」
「死ぬ気で練習をやってきた」
そんな白井の成長と変化を、周囲もしっかりと認めている。
全体練習後の通称「エクストラ(試合メンバー以外の選手によって行われる追加メニュー)」に参加することも多い白井。その指導を続けてきた森下仁志ヘッドコーチは、現在の白井の姿を次のように表現する。
「ソメ(染野唯月)は成熟してきている。でも、亮丞は、まだ未熟な状態ですが、着実に成熟に近づいてはきている。『成熟』というのは、『自分を扱える』ということです。どんな状況でも自分に矢印を向けている。極端に言ったら、どんな状況でも自分の責任にできる。そうなってきたら成熟している証拠です」
実際、以前は「自分なりに一生懸命やっているのですが、なかなか周りに理解してもらえない」というコメントが多く聞かれたが、最近では「自分のここが足りなかった」といった、改善の余地はまず自分にあるという発言に変わったことは明らかである。
アカデミー出身の先輩として、人一倍白井のポテンシャルの高さを買っている森田晃樹主将も、森下コーチの言葉に「本当にその通りだと思います」と深くうなずく。
「本当に、プレーも良くなってきていますが、一番は、精神的な成長がプレーにつながっているのかなと思いますよね。以前は、なんかもっと『サボる』じゃないですけど、そういうふうに見える部分がありましたが、そこがちょっとずつなくなってきたかなと。守備のところも厳しく行くようになっているし、試合に出られていることで自信もつけてるとも思いますし、その辺の変化は明らかに感じます」
森田は、白井がアカデミー時代に2種登録選手としてトップのメンバー入りを果たしていた時から「ヴェルディらしい選手」と評し、その技術の高さや鋭い感覚、物怖じしないメンタルの強さを認めてきた。だからこそ、たっぷりの愛情を込めて、あえてイジりながら叱咤する。
「初ゴール、遅いっすよねー。ちなみに僕は、カテゴリー(J1とJ2)が違うけど、FWじゃないのに1年目で3点取ったんで(笑)まぁでも、この1点を機に自信つけて、コンスタントに点を取れるようになってくれればいいと思います。
彼は考えてできる選手なので、『ここで行かない方がいいな』みたいなことを、周りを見て考えちゃう選手。それでたぶん遅れちゃうみたいなところがあるから、思い切りのよさみたいなものを出すのが、彼自身もすごく難しかったんだと思います。特にこのチームでは前線3人は思いきりよくというか、もう『後ろ(の選手は)ついてこいよ』ぐらいの感じで出なきゃいけない。そこで白井は、後ろを見て『間に合わなそう』と思ったら、ちょっとセーブしなきゃいけないなと思う頭の良さがある。そのバランスを考えながら少しずつやり続けていく中で、だいぶうまくできるようになってきてるのかなと思います」
歯に衣着せぬ言葉は、森田の白井への期待値の表れだ。「白井には厳しくしなきゃダメですよ(笑)強く言ったところでまったく不貞腐れることもないですし、むしろ『なにくそ』でやるやつだから。そこも含め、持っているものはものすごくいいと思いますし、きっかけがあれば、もっともっと上を目指せる選手だと思う。そういう意味でも、まだまだですね」
森田の指摘は、白井自身も十分自覚しているという。
「行くときにガッと行く。で、無理だったら戻るという判断が、今の前線陣にはあると思うのですが、僕はそこに迷いが生まれて、ガッといけないみたいなというところがあるんです。その『行く』『行かない』でメリハリをつける部分がずっと課題です」
また、城福浩監督からの要求も「まだまだ」だ。
「彼のゴールで勝点3を取れたことは非常に大きなことなので、そこは自信を持ってほしいですし、周りからの信頼ももっともっと勝ち得てほしいと思います。が、細かく見ると、まだまだなんです」
特に「プレッシャーで相手のフィードを足に当てに行くような迫力であったり、切り替えの時の強度など、守備の連続性や本当に最後の際のところの強度は、『やれている』とは思わないでほしい」とキッパリ。
さらに、熱血漢の城福監督だからこそ、プレー以上の部分に求めることも大きい。
「もちろん、個々人のキャラクターがあるので、急に変えることはなかなかできないけれども、白井にはもっと野心を持たせたいですし、彼なりの、若い選手なりのギラギラしたものを出させたい。そのギラつかせ感をどう促していくのかは、僕ら(コーチングスタッフ陣)も日々戦っているところです」
監督・コーチングスタッフも、クラブの未来を担うプロスペクトへ日々全力サポートを続けている。
その闘争心こそが、さらなる成長への鍵ともなり得ることは、白井自身も感じている。
「僕に足りないものはそこ(ギラギラ感)だと思いますし、それが出るようになれば、本当にもう1段階上に行けると思います。とはいえ、それを出すことは簡単ではない。自分の中でどうやってスイッチを入れるか。そこは僕自身すごく苦手なのですが、そんなことをいつまでも言っていられない。試合に出る以上、信用される選手にならないと」
振り返ると、トップでの初ゴールは衝撃的だった。2種登録選手だった2023年。FC東京との天皇杯での「東京ダービー」で68分からピッチに立った白井は2分後の70分、同点弾を突き刺した。
「あの時はまだ高校生で、正直、よくわからずという感じで。あのゴールがどれだけチームにとって価値のあるものだったのか。それすらもあまりわからずだったのですが、今になって、ようやく『1点』が取れて、初めてチームを勝利に導けたことで、本当の意味で『1点』の重みのすごさを実感しました」
プロのFWとして背負っていく責任の大きさを、いま、白井は強く噛みしめている。
「ミスを恐れずにボールを受けにいって、コンスタントに点を取って、試合に出たら『点取りそう』という雰囲気を出しつつ、きちんと守備でも貢献できる選手になっていきたい。1つ1つ着実にできることを増やしていきたいと思います」
攻守にわたり闘争心むき出しで、ギラギラ感漂う白井亮丞へ変貌していく姿を想像すると、今から楽しみで仕方がない。
Reported by 上岡真里江
2026年5月16日、明治安田J1百年構想リーグ第17節水戸ホーリーホック戦で、FW白井亮丞が待望のJ1初ゴールを決めた。
54分。左サイドからの新井悠太のクロスボールを寺沼星文がペナルティエリア内でスルー。その先に白井が走り込み、左足を合わせてゴール左隅に流し込んだ。特別大会のため、リーグ戦としての記録にはならないが、それでも価値ある「J1初ゴール」だ。2024年シーズンに東京ヴェルディユースからトップ昇格を果たして3年目の白井の「1点」を、誰もが待ち望んでいた。
「いやほんと、めちゃめちゃ時間がかかってしまいました」
と、21歳FWは苦笑しながら、でもとても嬉しそうに連敗を止めた殊勲ゴールを振り返った。
「日頃から死ぬ気で練習をやってきた結果、あそこで1点取れたというのは本当に大きかったです。正直、守備も攻撃もプレー自体はまだまだなので、そこはここからの課題なのですが、とはいえ、今季中に『1点』を取れたというだけでモチベーションにもなりますし、自信にもなりました。
本当に、ここからですね。残りのプレーオフラウンド2試合で1点でも取って、来シーズンにつなげられたらなと思っています」
「死ぬ気で練習をやってきた」
そんな白井の成長と変化を、周囲もしっかりと認めている。
全体練習後の通称「エクストラ(試合メンバー以外の選手によって行われる追加メニュー)」に参加することも多い白井。その指導を続けてきた森下仁志ヘッドコーチは、現在の白井の姿を次のように表現する。
「ソメ(染野唯月)は成熟してきている。でも、亮丞は、まだ未熟な状態ですが、着実に成熟に近づいてはきている。『成熟』というのは、『自分を扱える』ということです。どんな状況でも自分に矢印を向けている。極端に言ったら、どんな状況でも自分の責任にできる。そうなってきたら成熟している証拠です」
実際、以前は「自分なりに一生懸命やっているのですが、なかなか周りに理解してもらえない」というコメントが多く聞かれたが、最近では「自分のここが足りなかった」といった、改善の余地はまず自分にあるという発言に変わったことは明らかである。
アカデミー出身の先輩として、人一倍白井のポテンシャルの高さを買っている森田晃樹主将も、森下コーチの言葉に「本当にその通りだと思います」と深くうなずく。
「本当に、プレーも良くなってきていますが、一番は、精神的な成長がプレーにつながっているのかなと思いますよね。以前は、なんかもっと『サボる』じゃないですけど、そういうふうに見える部分がありましたが、そこがちょっとずつなくなってきたかなと。守備のところも厳しく行くようになっているし、試合に出られていることで自信もつけてるとも思いますし、その辺の変化は明らかに感じます」
森田は、白井がアカデミー時代に2種登録選手としてトップのメンバー入りを果たしていた時から「ヴェルディらしい選手」と評し、その技術の高さや鋭い感覚、物怖じしないメンタルの強さを認めてきた。だからこそ、たっぷりの愛情を込めて、あえてイジりながら叱咤する。
「初ゴール、遅いっすよねー。ちなみに僕は、カテゴリー(J1とJ2)が違うけど、FWじゃないのに1年目で3点取ったんで(笑)まぁでも、この1点を機に自信つけて、コンスタントに点を取れるようになってくれればいいと思います。
彼は考えてできる選手なので、『ここで行かない方がいいな』みたいなことを、周りを見て考えちゃう選手。それでたぶん遅れちゃうみたいなところがあるから、思い切りのよさみたいなものを出すのが、彼自身もすごく難しかったんだと思います。特にこのチームでは前線3人は思いきりよくというか、もう『後ろ(の選手は)ついてこいよ』ぐらいの感じで出なきゃいけない。そこで白井は、後ろを見て『間に合わなそう』と思ったら、ちょっとセーブしなきゃいけないなと思う頭の良さがある。そのバランスを考えながら少しずつやり続けていく中で、だいぶうまくできるようになってきてるのかなと思います」
歯に衣着せぬ言葉は、森田の白井への期待値の表れだ。「白井には厳しくしなきゃダメですよ(笑)強く言ったところでまったく不貞腐れることもないですし、むしろ『なにくそ』でやるやつだから。そこも含め、持っているものはものすごくいいと思いますし、きっかけがあれば、もっともっと上を目指せる選手だと思う。そういう意味でも、まだまだですね」
森田の指摘は、白井自身も十分自覚しているという。
「行くときにガッと行く。で、無理だったら戻るという判断が、今の前線陣にはあると思うのですが、僕はそこに迷いが生まれて、ガッといけないみたいなというところがあるんです。その『行く』『行かない』でメリハリをつける部分がずっと課題です」
また、城福浩監督からの要求も「まだまだ」だ。
「彼のゴールで勝点3を取れたことは非常に大きなことなので、そこは自信を持ってほしいですし、周りからの信頼ももっともっと勝ち得てほしいと思います。が、細かく見ると、まだまだなんです」
特に「プレッシャーで相手のフィードを足に当てに行くような迫力であったり、切り替えの時の強度など、守備の連続性や本当に最後の際のところの強度は、『やれている』とは思わないでほしい」とキッパリ。
さらに、熱血漢の城福監督だからこそ、プレー以上の部分に求めることも大きい。
「もちろん、個々人のキャラクターがあるので、急に変えることはなかなかできないけれども、白井にはもっと野心を持たせたいですし、彼なりの、若い選手なりのギラギラしたものを出させたい。そのギラつかせ感をどう促していくのかは、僕ら(コーチングスタッフ陣)も日々戦っているところです」
監督・コーチングスタッフも、クラブの未来を担うプロスペクトへ日々全力サポートを続けている。
その闘争心こそが、さらなる成長への鍵ともなり得ることは、白井自身も感じている。
「僕に足りないものはそこ(ギラギラ感)だと思いますし、それが出るようになれば、本当にもう1段階上に行けると思います。とはいえ、それを出すことは簡単ではない。自分の中でどうやってスイッチを入れるか。そこは僕自身すごく苦手なのですが、そんなことをいつまでも言っていられない。試合に出る以上、信用される選手にならないと」
振り返ると、トップでの初ゴールは衝撃的だった。2種登録選手だった2023年。FC東京との天皇杯での「東京ダービー」で68分からピッチに立った白井は2分後の70分、同点弾を突き刺した。
「あの時はまだ高校生で、正直、よくわからずという感じで。あのゴールがどれだけチームにとって価値のあるものだったのか。それすらもあまりわからずだったのですが、今になって、ようやく『1点』が取れて、初めてチームを勝利に導けたことで、本当の意味で『1点』の重みのすごさを実感しました」
プロのFWとして背負っていく責任の大きさを、いま、白井は強く噛みしめている。
「ミスを恐れずにボールを受けにいって、コンスタントに点を取って、試合に出たら『点取りそう』という雰囲気を出しつつ、きちんと守備でも貢献できる選手になっていきたい。1つ1つ着実にできることを増やしていきたいと思います」
攻守にわたり闘争心むき出しで、ギラギラ感漂う白井亮丞へ変貌していく姿を想像すると、今から楽しみで仕方がない。
Reported by 上岡真里江