
千葉をホームに迎えた明治安田J1百年構想リーグプレーオフラウンド第1戦のヒーローは二人。1点ビハインドから同点ゴールを奪った碓井聖生と一時は逆転ゴールとなるヘディングシュートを決めた橋本悠である。
ただ、筆者はこの試合、影のヒーローの一人である重見柾斗に話を聞きたいと思ってミックスゾーンで彼を待った。
背番号6のポジションは3-4-2-1の右シャドー。相手の4-4-2のシステムとのミスマッチを突き、チームの機能性を高める効果的なプレーを見せた。
「相手のボランチの脇で受けるところと、そこからの抜け出しとか、システムのミスマッチのところ、ギャップ(の位置)に立ってボールを受けるという意識でした」
24分にライン間で見木友哉からの楔のパスを受けて、この日チーム初シュートとなるミドルを放ち、その直後には相手のサイドバックの背後に抜け出し、ゴール前にクロスを送る。さらに、54分には碓井の強烈なミドルシュートのこぼれ球に素早く反応。自ら押し込むことはできなかったが、背番号7が再びシュートを打てる状況を演出し、ゴールにつなげた。
攻撃だけでなく、守備でも魅せる。前線から的確なプレスで相手のビルドアップを制限。ラインブレイクを許してもすかさずプレスバックし、ボールを奪い切る力強さを何度も見せた。
クレバーかつ運動量豊富に強度高くプレーすることができる重見。プロ3年目となる今シーズン、本職のボランチではなく、シャドーでの出場機会が多くなった。
「ボランチだとバランスをとるところだったり、ゲームをコントロールするところなんですけど、シャドーになると相手の背後だったり、嫌なことをやり続けるのはすごく意識しています」
左サイドは、足元の技術に長けた名古新太郎、見木、辻岡佑真らが左肩上がりで局面の優位性を作りながら攻撃を展開。その一方で右サイドは、足元のパスで攻撃を組み立てる以上に相手の背後を取ってペナルティエリアに侵入し、ゴールを狙うことが多い。深さを効果的に使ってチャンスを創出したい中で「元々運動量もありますし、スピードもあるタイプ」(塚原真也監督)の重見はまさにうってつけの存在。縦への走力を遺憾なく発揮し、自らの特徴を示している。
「重見のように逆サイドのシャドーの選手がえぐって動いてくることも、相手にとっては捕まえづらい」(塚原監督)
攻守にオフザボールで効果的な働きを見せ、シャドーとしてプレーの幅を広げている重見。だが、本人は全く満足していない。
「自分の中では良い感触ではあるんですけど、前の選手なのでアシストだったり、ゴールというのがまだ少ない」
今シーズンはここまで1ゴール1アシスト。得点に直結するプレーが求められるポジションだけに自身の中で物足りなさを感じている。
隣で大勢のメディアに囲まれながら取材を受けるチーム得点王の碓井を重見はちらっと見て、54分のゴールシーンを「あれはほぼ俺のゴールです」と少し笑みを浮かべながら振り返ったが、心の内は自らが決め切れなかった悔しさで溢れていたはずだ。
「日々の練習の積み重ねでしかないと思うので、より練習でゴールを意識することだったり、常にゴールを意識することが大事だと思います」
シャドーとしてボールを持った時に何が表現できるか。目に見える数字を残す“ストライカー”になるべく挑戦を続ける24歳。今シーズン、中堅選手の域に入ってきた中で心境の変化があったと言う。
「自分がチームの中心と思って、そういうふうな振る舞いだったり、プレーで示そうと強く思っています。本当に今シーズンは(所属選手の)年齢がすごく若くなっているので、そこで自分も上の方(の年齢)に入っていると思うので、プレーだけじゃなくてそういうところは監督からすごく求められているので、もっとやらないといけないですし、プレーでも、言葉でも、引っ張っていきたい」
ここまでプレーオフラウンドを含め、全19試合で17試合に出場し、そのうち先発は14試合。塚原監督に重宝され、飛躍のシーズンとなった百年構想リーグもアウェイでの第2戦が最後の試合になる。
「(塚原監督に)本当にすごく試合に使ってもらっているので、そういう期待に応えたいというのはすごくありますし、より成長できると自分も思っているので、試合だったり、日頃の練習でもそうですけど、成長してアビスパのために良い結果を残したいです。
(第2戦は)本当に勝つしかないと思っているので、内容ももちろん大事ですけど、まずは勝つというところをチーム全員で意識してやっていきたいです」
第1戦は一時逆転したものの、終盤に同点に追いつかれ、ドロー。今シーズン、90分で勝ち切れない試合が多いだけに最後は90分で勝ち切って有終の美を飾りたいところだ。重見がゴールに直結するプレーを見せ、チームを勝利に導くヒーローになってくれることに期待したい。
Reported by 武丸善章