
「自分が少し遊びの部分を作ることで、他の選手が自分らしいプレーができる」。
意図的にテンポを落としたり、相手の虚を突くパスで時間を作ったりする「遊び」のプレー。ピッチの中央でボールを受けるFC琉球・富所悠は、自身の役割をそう語る。
事実、コンディション不良で富所が一時的にピッチを離れていた間、琉球の攻撃には課題が見られた。「リスクを負わな過ぎて、攻撃回数が明らかに少なくなっていた」と当時を振り返った彼は、外から試合を見る中で、間で受けて攻撃のテンポを作るという自身の役割を再認識したという。
派手なプレーがあるわけではない。彼が持ち込むのは、テンポを落とし、時間を作り、味方に選択肢を与えるリズム感だ。前方に大きくボールを蹴り出せば、一気に相手陣内へ送り込み、偶発的なチャンスを狙えるかもしれない。しかし、それでは相手に回収されやすく、守備の時間が続いて自分たちの攻撃回数が減ってしまう。富所は「うちの中盤には細かい繋ぎができる上手い選手が揃っている。単純にそっちの方が強い」と語る。
「1つ2つミスしても問題はない。受けるのをやめる方が問題。そこは常に周りに伝えています」。
明治安田J2・J3百年構想リーグのプレーオフ第1戦FC今治戦の前の円陣、約2カ月ぶりの先発出場となった富所は「ミスしてもいいから、しっかりボールをつないで楽しんでやろう」と声をかけ、加藤悠馬ら若手選手たちはこの言葉を受けて、思い切ったプレーを見せた。そして61分の同点シーンでは富所のパスが起点となり、曽田一騎、井堀二昭とつながってゴールが生まれ、自身の役割を果たした。
こうした柔軟な思考と冷静な判断力は、自らのゴールという形でも現れる。明治安田J2・J3百年構想リーグの地域リーグラウンド最終節・サガン鳥栖戦。68分から途中出場し、0-2とリードを許して迎えた80分、ペナルティエリア内でボールを持った富所は真っ先に「(左横にいた)井堀(二昭)へパスを出して、ダイレクトでシュートを打たせようとした」と考えていたという。しかし、相手ディフェンダーがパスコースを切りに動いた瞬間、「とっさに切り替えた」と、富所はパスのモーションから瞬時に切り返して放ったシュートは、相手に当たってコースが変わりながらも右隅のゴールネットを揺らした。一瞬の状況変化を見逃さない富所の機転が導いたゴールだった。
途中出場という役割についても、出場時間が限られた中で力を発揮するには攻撃に専念できる状況の方が向いている。2点ビハインドで迎えた鳥栖戦でのプレーは「チャンスを作ることだけを考えていたから面白かった。さっさと仕事しないと試合終わっちゃうんで」と笑みをこぼしながらポジティブに捉えていた。
年齢を重ねる中で、自身の役割にも変化が生じている。「シーズン通して全部スタメンで、というのは年齢的にも厳しくなってくる」と富所は率直に語る。それでも「途中から出ても流れを変えられるようになるのは、これから生き残っていく1つの手段」と、自身の役割を冷静に見つめている。

明治安田J2・J3百年構想リーグの最終順位「33位または34位」を決定するプレーオフラウンド第2戦。対戦する福島ユナイテッドFCには、2025年シーズンを琉球でともに戦った永長鷹虎がいる。「テクニック的な部分では琉球にいた時も一番上手かった」と、富所は元チームメイトの実力を称賛している。また福島は琉球と同じようにショートパスをテンポ良くつないでくるチーム。「向こうも細かいところで繋いでくる。自分たちも中央でしっかりボールを握ってゲームを展開できれば。攻撃的なチームなんで、取り合いみたいな面白い試合ができたら」と語った。
そして、その一戦を終えた後には華やかな舞台が待っている。6月13日に国立競技場で開催される「JリーグオールスターDAZNカップ」。J1からJ3までの全60クラブの選手が集結する17年ぶりとなるオールスターゲームの舞台に、Jリーグ推薦選手として富所が選出された。
「お祭り感はあるが、選ばれた選手として記憶に留めやすい。お客さんがいっぱい入る中で1つ2つ面白いプレーができたらいい。琉球を代表して行くという思いもある」と語った。所属するWEST-Bの一員として共にプレーするであろう他クラブの選手たちについては、「遊び心を知ってそうな選手が揃っている。面識がなくてもパッとパス交換して繋がる、その感覚を楽しみたい」と笑みをこぼした。

17年ぶりの華やかな舞台でも、富所のプレースタイルは変わらない。これからもピッチの中央でボールを受け、チームを動かす「遊び」の空間を作り出していく。
Reported by 仲本兼進