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【取材ノート:福岡】最終戦で橋本悠と前嶋洋太が示した塚原アビスパの「色」

2026年6月9日(火)
千葉に乗り込んでの明治安田J1百年構想リーグプレーオフラウンド第2戦。先制点を許し、苦しい内容の前半から一転、後半に入って息を吹き返す。


57分、見木友哉が左ポケットでドリブルを仕掛け、ゴール前にグラウンダーのクロスを送る。そこに反応したのは、右ウイングバックの橋本悠。角度のないところから落ち着いてシュートを流し込み、2戦連発となる同点ゴールを決めた。



「左から良い感じで崩してきたし、(ボールを持っていたのが)見木だったので、シュートかなと思っていろいろ予測はしましたけど、とにかく走りを止めないことを意識し続けて、GKとDFの間が空いているのが見えましたし、もしかしたらという予測であの位置に走れたことが良かったかなと思います。シュートのところに関しては、コースはありませんでしたけど、迷わず(シュートを)打っちゃおうという気でいたら、それが良い感じで(足に)当たって良かったです」

勢いは止まらない。68分、相手の背後を取った途中出場の右ウイングバック山脇樺織が相手を振り切り、マイナス気味のパス。ゴール前に構えていた選手には合わなかったが、遅れて走り込んできた左ウイングバックの前嶋洋太が左足を振り抜き、逆転ゴールを沈めた。



「ゴール前に入っていったらボールが来たので、本当に思いっ切り気持ち良く(足を)振ったら入ってくれたという感じです。(山脇)樺織が入れ替わりそうだったので、中に入っていこうかなという感じで。多分、樺織も自分のことを狙ったわけではないと思いますけど、あれだけゴール前に人がいたら、ああやって事故じゃないけど、あるんだなというのは改めて感じました」

右の橋本、左の前嶋。両ウイングバックの選手によって生み出された2つのゴール。幅を広く使いながら、ボールサイドと逆のウイングバックもペナルティエリア内に侵入し、攻撃に厚みを持たせる。今年始動してから塚原真也監督がずっと取り組んできた「崩し」の成果を今シーズンのラストゲームでも発揮。試合後、指揮官は選手たちに大きな賛辞を贈った。

「非常によかったと思います。前節(プレーオフラウンド第1戦)も左から割って、クロスを相手の左サイドバックの上で橋本が叩くという狙い通りのシーンが出ましたけれども、今回も右、左と振りながら、ウイングバックが起点になって逆サイドが入っていくというのは非常によかったと思いますし、あの2つの得点は我々が狙っていた形だったので、完璧だったと思います」

両足から高精度なキックを繰り出すプロ2年目の橋本と抜群のサッカーIQの高さを見せる福岡に来て5年目の前嶋。昨シーズンまで左右のウイングバックで実績を残してきた二人だが、今シーズン、塚原監督に代わってそのポジションでの役割の変化を感じている。

「去年は、紺ちゃん(紺野和也)だったり、(岩崎)悠人くんだったり、(藤本)一輝くんだったりが個で剥がして、逆側で(自分が)もらってフリーでクロスを上げられるというのが僕のイメージ的にはあったんですけど、今年は中盤で作りつつも、逆に自分が剥がす側じゃないですけど、クロスを上げられるようには求められている」と橋本は口にし、「ゴール前に入っていくところだったり、攻撃的なところは求められる」と前嶋は言う。

チームの目指す得点力向上のために決して個人の能力だけに頼らず、組織的な崩しの仕組みを作ってゴールに迫る回数を増やす。中を使って外、外を使って中。シンプルなクロスからのサイドアタックだけでなく、3人目の動きを多用しながらポケットのスペースも効果的に使って崩していく。塚原アビスパの攻撃の特徴を発揮する上でウイングバックの役割は、昨シーズンまで以上に大きくなった。

橋本はキャリアハイとなるチーム2位の4ゴールをマークし、前嶋もチームで唯一全試合に出場して数字には表れない部分で大きく貢献した。確かな手応えを手にして挑む来シーズン。二人は次のようなことを考えている。

「(今シーズン)個人的に目標としていた数字よりもはるかに大きく得点のところは取れました。ただ、球際のところとか奪い切って攻撃につなげるところとかまだまだ課題はたくさんあります。

勝負強さというところとかまた得点に関与した時に『あぁ、橋本か』と思われるようなところを見せたいですし、それはこの(プレーオフラウンドの)2戦で見せられたと思います。そういったものは、自信につながりますので、そういったものを今後のリーグ戦だったり、他の場面でも存分に活かして、強いメンタルでどの試合にも挑みたいと思います」(橋本)

「個人的には、この半年はいろいろチャレンジしながらやれたと思うので、やれたことと、やれなかったことがはっきり見えたし、今までできていたことが新しいチャレンジをすることによってなかなか上手くいかないこともたくさんあったので、そこはもっともっと良い選手になれるなと確信できたのが収穫ですし、できなかったことはもっとやらなきゃと思いました」(前嶋)

アウェイのフクダ電子アリーナでクラブ史上初めて勝利を収め、2戦合計で4-3として19位でシーズンを終えた。ただ、福岡にとってこの順位は当然のことながら本意ではない。2023年にルヴァンカップで初タイトルを獲得し、リーグ戦最高位となる7位を記録して以来、毎年掲げているのがリーグ戦6位以上という目標。今シーズンも達成することができずに大きな悔しさが残った。

それでも最終戦には遠方のアウェイにも関わらず、約1,000人の福岡サポーターが駆けつけた。アビスパはこんなもんじゃない、もっとできる。スタジアムに響き渡る大声援には、来シーズンに向けて期待するそんな想いも込められていたはずだ。

「誰もが分かるように納得できるような順位ではないですし、ただ、そういった試合の中でもたくさんのサポーターの方が来ていただいて、自分たちも最下位決定戦とかそういう類の1試合ではなくて、どの試合でも変わらず同じ姿勢で挑めたというのが本当に今日(プレーオフラウンド第2戦)は大きかったと思います。これを本当に来シーズンにつなげたいですね。

もっと上を目指していますし、タイトルを獲ったチームがこういうところ(順位)にいたらいけないと思うので、もっともっと日頃の練習からバチバチ高め合っていきたいと思います」(橋本)

「チームとしては、やっぱり点を取るところは引き続き課題だと思うし、(今シーズンは)ちっちゃいミスから失点することが多かったので、今までのアビスパは、例えば今日(プレーオフラウンド第2戦)の前半みたいな試合をしていても0-0で折り返してきて、しっかりと後半は修正するというのができていたチームだったと思うので、そこは僕自身、細かなミスをして思うし、チームにも伝えていけたらと思っています。

この順位に納得している人は誰もいないので、もっと上にいけたという自信もみんなにあると思うし、本当にちょっとのところで勝点をこぼして今の順位にいると思うので、そこは前向きにというか、みんなで頑張らなきゃなという気持ちが強いです」(前嶋)

チームの両翼を担う二人は、決して現状に満足することなく、更なる高みを目指して成長を続けていく。

Reported by 武丸善章