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【取材ノート:神戸】J1百年構想リーグ優勝の裏に、ミヒャエル スキッベ監督がもたらした“ストレッチ”効果あり

2026年6月11日(木)
明治安田J1百年構想リーグはヴィッセル神戸が鹿島アントラーズを2試合計5-2で下して幕を閉じた。これで神戸のタイトルは5つ目。AFCチャンピオンズリーグエリート(ACLE)に本大会から出場できるなど実り多き半年となった。

その結果もさることながら、このハーフシーズンはチームのバージョンアップに向けて有効な期間だった。成果として注目したいのはチームに柔軟性が生まれた点だろう。

吉田孝行前監督が2022年の途中から25年までに築き上げたスタイルは、前線からのハイプレスで押し込むダイナミックで力強いサッカーだった。天皇杯優勝とJ1リーグ2連覇の結果が証明する通り、それは一つの完成形を見たと言える。

このスタイルをピッチで体現するために吉田前監督は独自の基準を設けた。そして基準をクリアした選手しかピッチに立てなかった。勝負の世界では当たり前の試練だが、一方でフレームワーク(目標を達成するための枠組み)から外れた選手たちにはチャンスが訪れなかった。人体に例えるなら、余計な贅肉を削ぎ落とし、強靭な肉体を作り上げたイメージだ。

そこへ、今シーズンからミヒャエル スキッベ監督がやってきた。チームにもたらしたのは自由である。それを象徴する印象的な彼の言葉がある。

「選手たちには『自分にはこんなこともできたんだ』といった発見をしてほしい」

スキッベ監督が行ったのは、この3年間で固まった選手たちの筋肉(固定観念)をほぐすストレッチだった。同時に、ヴィッセル神戸U-18から昇格したばかりの濱﨑健斗や今まで試合に絡めてこなかった日髙光揮を積極的に起用し、ベガルタ仙台から復帰した郷家友太を主力に置くなど独自の方法でチームの筋肉もほぐした。

代償としてパワーをうまく伝達できない試合もあったが、バージョンアップするためには必要な行程だった。その証拠に、鹿島とのプレーオフラウンド第1戦では従来の戦い方とスキッベ監督がもたらした自由がうまく噛み合った。5-0の大勝の中で、特にジエゴが決めた3点目のシーンは新しい神戸を感じさせるものがあった。


69分。鹿島の猛攻をしのいだ神戸はロングフィードで陣地を回復すると、右サイドで郷家が残し、大迫がワンタッチで武藤嘉紀へバックパス、それを武藤がワンタッチで中央の井手口陽介へパスをつなぎ、井手口はさらに左サイドを駆け上がってきたジエゴに展開。最後はジエゴが左足を振り抜いて見事なゴールが生まれた。

この場面、昨シーズンなら大迫が相手を交わしてクロスを上げ、武藤が中央に走り込み、井手口がこぼれ球に備えるような展開になっていたかもしれない。シンプルにクロスを上げてゴール前に多くの選手が飛び込む戦いをしていたからだ。

だが、この場面ではワンタッチでのショートパスで局面を打開し、さらに反対サイドのジエゴまで展開している。非常に柔軟で、美しい崩しだった。

もちろん、J1百年構想リーグに優勝したから言える結果論だが、スキッベ監督はチームに“しなやかさ”をもたらしたと言えるだろう。柔軟性のある筋肉を手に入れた神戸が、8月からのJ1リーグでどんな戦いを見せるか楽しみである。

Reported by 白井邦彦