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【取材ノート:琉球】「やっと来たか」の先へ――MF志慶眞巧洋が見据える終わりなき成長

2026年6月18日(木)


「嬉しかったですし、やっと来たかという気持ちもありました」。

今年、琉球U-18から昇格したルーキー・志慶眞巧洋がプロ初出場を果たしたのは3月8日、明治安田J2・J3百年構想リーグ地域リーグラウンド 第5節のガイナーレ鳥取戦だった。ピッチの外から戦況を見つめる日々を過ごしながら準備を重ねてきた司令塔に訪れたデビュー戦。「緊張は全然なかったです」と、試合を振り返る本人は冷静だった。キャンプ時期からJ1・J2チームとの実戦を経験し、日常のトレーニングでも強度を保ってプレーしてきたからこそピッチに入っても「そこまで変わる感じはなかった」という。

むしろ彼の頭にあったのは、何をするべきかということだった。最終盤まで0-0で進んだ鳥取戦で途中出場の彼に与えられた時間は1分だったが、チームがゴールを必要とする中、「背後に抜けることを言われていました」と振り返る。ボールを受けるために走るのではなく、自らが動いて相手を引きつけ、スペースを生み出す。自分がボールに触れなくても攻撃を前進させるアクションを起こし続けた。
「自分が走ることで相手がついてきて、その空いたスペースを使えればと思っていました」と志慶眞。そこには、勢いや野心だけでなく、状況を読み解く戦術的な思考も垣間見えた。

続く第7節・大分トリニータ戦(◯3-2)では、リードを守る局面で投入された。試合状況に応じてプレッシングの強度を調整し、時間を使うべき場面では冷静にプレーする。出場時間の中でも、求められる役割を理解しながらプレーしていた。

その姿勢は試合に出ていない時間にも表れている。ベンチでは「相手のどこが空いているか、自分が出たらどういうプレーをしようか考えながら見ている」と、隣に座ることが多いベテラン・千葉和彦とも意見を交わし、会話は新たな視点を得る時間になっている。

「そういう見え方があるんだなって。勉強になることがたくさんあります」と、試合に出られない時間を「待つ時間」にはせず、志慶眞はプロの世界で生き残るために必要な知識や視点を吸収し続けている。その積み重ねは結果として表れ始めている。



第13節・レノファ山口FC戦(●0-2)では後半から45分間プレー。続く第14節・鹿児島ユナイテッドFC戦(△1-1)ではボランチとしてプロ初先発を果たし、65分間ピッチに立った。デビュー当初は1分だった出場時間が伸びている。
だが志慶眞は、その現状に満足していない。「もっと試合に出たいという気持ちはあります」と言い切る表情に迷いはない。トップチームでの出場機会を掴み始めた今も、彼は「ここがゴールじゃない。ここから自分がどれだけ上に行けるか」と語っている。プロの舞台に立つことは夢の達成ではなく、挑戦の始まりである。

志慶眞の武器は技術力。狭い局面でも失わないボールコントロール、相手のプレッシャーを剥がすトラップとパス。試合の流れを読みながら選択肢を導き出す判断力だ。168cmの体格だが、パリ・サンジェルマンのポルトガル代表ヴィティーニャのように、技術で世界に通用するプレーメーカーを自身のモデルに据えている。自ら希望して掴み取った背番号「6」には、そのプレースタイルへの自負も込められている。
一方で、自身の現在地も見つめている。90分間クオリティを維持するスタミナ。守備の強度。ボール奪取能力。トップカテゴリーで戦い続けるために磨くべき部分は多い。



だが、悲観してはいない。これまでも膝や肋骨の骨折で離脱しながら、「他の人にできないことをやる」という意識で筋力トレーニングに励み、パワーアップして復帰してきた。課題や試練は弱点ではなく、伸びしろだと考えている。だからこそ、彼の視線は前を向いている。

「周りの選手に負けたらダメだと思うので。毎日の練習が勝負だと思ってやっています」。

テクニシャンが並ぶ琉球の中盤でポジション争いは簡単ではない。それでも志慶眞は焦らず、自分の武器を磨き続けている。その胸には、「沖縄県にいい選手がいると見せつけたい」という地元への誇りも秘められている。

プロデビューを果たした鳥取戦から約2か月。「やっと来たか」と語った司令塔はいま一歩を踏み出している。しかし、彼自身はまだ何も成し遂げたとは思っていないだろう。プロの舞台に立つことが目標ではなく、その舞台からさらなる高みへ羽ばたく選手になること。志慶眞巧洋の果てなき挑戦はまだ始まったばかりなのである。



Reported by 仲本兼進