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【取材ノート:東京V】「スタートは横一線ではない」指揮官の一言に感化された食野壮磨が挑む、東京ヴェルディでの2度目の挑戦

2026年7月23日(木)
Jリーグが新たな歴史を迎える。1993年の発足以降30年以上続いた2~3月開幕、12月終了の「春秋制」が、2026/27シーズンから8月開幕、翌年6月閉幕の「秋春制」へと移行となる。そのプレ期間として、2026年は2月から6月まで「明治安田百年構想リーグ」が開催された。そして、8月7日からの新シーズン開幕と、ある意味、選手にとっては今年だけで2回の「開幕」を迎えることになる。
「開幕」は、選手にとっては「お正月」だとも表現される。お正月といえば、誰もが「今年こそ」「今年は○○に挑戦する」など、志高く新たな気持ちを抱くものだろう。選手も同様で、その中で、新たな自分を求めて移籍を決断する選手、残留を決意し、在籍クラブでのさらなる向上を目指す選手など、選択はそれぞれだ。
そんな中、2026年に訪れた2度の分岐点で、2度とも「覚悟」の二文字を背負って挑んでいるのが食野壮磨だ。

今年1月に栃木SCへの期限付き移籍を決断。その際「(2024年にガンバ大阪から東京ヴェルディに加入して)この2年間で結果を残すことが出来ず悔しい思いをしました。しかし城福監督をはじめ、素晴らしいスタッフと選手の皆さんのお陰でたくさんのことを学ばせていただきました。頑張ってきます!」とのコメントを残し、栃木SCでの武者修行に励んだが、結果としては全18試合中14試合出場1得点と、自身が求める結果を残すことはできなかった。そして、栃木SCとは契約満了。次のクラブを探すか、東京Vに戻るのか。自問自答を繰り返した末、東京V復帰を選んだ。

7月5日の東京Vの始動日。半年ぶりにヴェルディグラウンドに戻った食野の表情は笑顔ではなく険しかった。初日の練習の感想を聞かれ、次のように答えた。

「(クラブハウスなどの)施設が久しぶりだなと思いながら練習しました。でもそれ以上に、『厳しいな』という気持ちでやっていました」

「厳しい」の感情がどこからくるのか。食野はさらに続けた。

「前回ここでプレーしていた時より、自分自身の置かれている立場はたぶん違うと思う。今日(始動日)、監督もミーティングでおっしゃっていたのですが、『何かが始まる時、スタートラインは横一線ではない』と。その言葉は、まさに自分に当てはまると思いました」

東京Vで試合に出続け、着実に「主力」として実績と信頼を積み重ねてきている選手たちとは、現時点での評価や立ち位置が違うのは当然と言えば当然だろう。その現実を、25歳MFは目をそらさずに受け止めている。
半年前、栃木SCへの移籍も強い覚悟をもっての決断だった。だが、思うような結果を残すことができなかった。

「覚悟をもって(栃木に)行ったつもりではありましたが、その覚悟というのがどれほどのものであったのかというのは、半年やってみて、まだまだ足りないなと。『足りない』という表現が正しいのかはわからないですが、ただ、『覚悟』という言葉がどれだけ重いかということは、簡単に口に出して言えることではない。そこは強く感じました」

今回の東京Vへのレンタルバックも、並々ならぬ「覚悟」をもっての決断だ。だが、それを証明する術は1つしかないことを、食野は誰よりも理解している。

「すべてはグラウンドで示すしかないですから。自分の意気込みなど、いろいろな思いはありますが、どれだけそれを口で言っても状況が変わるわけではないので。しっかりと自分自身と向き合いながら日々を過ごしていかなければいけないなと思っています」

プロサッカー選手である以上、「結果」こそが最大の説得力であることを痛感させられた。

一方で、半年という短期間ではあったが、栃木SCで得られた収穫もまた大きかった。

「もう一度、自分が何で勝負しなければいけないのかということを再確認できました。それと同時に、自分の伸ばしていかなければいけないところもより鮮明になった。試合に出させてもらえたことで、長所と短所がより明確になりました」

危機感を抱えながら挑む新シーズン。あらためて勝負を挑むのは「ラストパスなどゴールにつながるプレー。自分がこの世界に入れたのはそこが評価されたからだと、栃木であらためて思えたので、そういった決定的なプレーを見せながら、パス1つ、ゲームコントロール1つなど、攻撃でのクオリティで他の選手との違いを見せてチームを勝利に導いていきたい」と、より高みを目指すことを誓った。

明治安田百年構想リーグからの短いオフ期間中、今年1月に入籍を発表した新妻とハワイへ新婚旅行に行ったことを明かした。

「ダイヤモンドヘッドに行ったのですが、めちゃくちゃ綺麗でした」

ようやく食野らしい、柔らかい笑顔が見られた。

キャンプも終了し、いよいよカウントダウンに入る新シーズン。毎試合後、食野はじめ、多くの東京V選手からこんな笑顔が見られたらと、心から願う。

Reported by 上岡真里江