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【取材ノート:長野】信州ダービーで再認識した武器。サイド攻撃にさらなる磨きを

2022年11月2日(水)
悔しい敗戦の中にも光明があった。AC長野パルセイロは前節、松本山雅FCとの信州ダービーで1-2と敗戦。リーグ屈指の守備力を誇る松本に対し、チャンスの数では上回ったが、シュタルフ悠紀リヒャルト監督は「決定力の差が勝敗を分けた」と振り返る。それでも敵将の名波浩監督が「長野の左サイドが特に躍動していた」と言うように、サイド攻撃で脅威を与えていたのも事実だ。


前半はサイドで苦戦を強いられた。長野は攻撃時に4-2-3-1、守備時に3-1-5-1となる可変システム。対する松本は3-4-1-2でスタートし、左右ウイングバックの外山凌と下川陽太がハイプレスを仕掛けた。下川と対峙した左サイドバックの杉井颯は「抜け出し方が分からなくて、ずっとはめられていた」と回顧。左サイドハーフの森川裕基へのパスコースが遮られ、得意のオーバーラップやクロスといった形に持ち込めなかった。

0-1で前半を折り返すと、後半は立ち位置を修正。杉井がやや低い位置でボールを受け、森川がタッチライン際まで幅を取ることで、「(松本の右センターバック・篠原弘次郎の)スライドが間に合っていなかった」(森川)。左サイドを完全に制圧すると、63分には森川のマイナスの折り返しから、最後は右サイドハーフの三田尚希が中央で押し込んだ。

すると松本の名波監督は、66分に3枚替えを決断。右センターバックに野々村鷹人、右ウイングバックに宮部大己と、対人能力の高い2人を当てはめた。長野は左サイドの勢いをやや失い、85分に勝ち越し弾を献上。それでも88分には杉井が森川とのワンツーからクロスを上げるなど、最後まで深い位置に進入し続けた。



左サイドで崩し、右サイドで仕留める――。長野の鉄板と言える攻撃パターンで、同点弾もその形から生まれた。杉井は「(左サイドハーフの)モリくん(森川)とカル(デューク カルロス)は1対1で勝てるので、自分がいかに良い形でボールを入れられるか。あとはオーバーラップするかしないかの判断ができれば、基本的には崩せると思う」と話す。相棒の森川も「(杉井)颯とか(左ボランチの水谷)拓磨と何回もやることで、お互いの特徴とか『こう走ったらこう出してくれる』というのはだんだん深まってきている」と自信を示している。



とはいえシュタルフ監督は「結果的に左から崩して右からフィニッシュという形になっている。右から崩して左からフィニッシュという形も、同じようにできないといけない」と本音を漏らす。右サイドバックは船橋勇真の負傷が続き、中盤を本職とする佐藤祐太の起用が続いている。編成上も左サイドを得意とする選手が多く、ここまで試行錯誤を重ねてきた。

次節の鳥取戦は、佐藤が累積警告で出場停止。右サイドバックの代役として期待されるのは、松本戦で19試合ぶりの出場を果たした川田拳登だ。今季はわずか2試合の出場に留まっているが、終盤に来てコンディションは上向き。低い位置からボールを運べるタイプで、「ひとまず相手陣地に自分がボールを運べば、全体も押し上がる。そうすると得点する機会も増える」と役割を口にする。

現状でも十分にチャンスは作れているが、右サイドがより活性化されれば、さらなる得点力アップを期待できる。今季は残り3試合となったが、まだまだ進化の過程。チームコンセプトの「Grow Everyday(日々成長)」を最後まで体現し、来季に繋げたいところだ。

Reported by 田中紘夢