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【取材ノート:名古屋】名古屋グランパス四季折々:世界のスタンダードを知ったが故に。相馬勇紀は笑顔で“次”を見る

2022年12月8日(木)


もちろん悔しさもあっただろうが、それ以上に得るものが大きな経験だったのだと思う。カタールワールドカップから12月7日に日本代表チームが帰国し、一夜明けた8日にオンラインで会見を行なった相馬勇紀の表情はとても晴れやかで、そして堂々としていた。

「ワールドカップを戦った今の方がもっとサッカーに対しての意欲が上がった。悔しさは残るけど、本当に自分にとって、とても大きな意味のある大会になった」

相馬は具体的だった。もちろん、日本代表がどうあるべきか、自分が何をしていくかを詳細に語るようなことはない。それは彼のみにあらず、日本サッカー全体が考えていくべきことだからだ。ただ、世界最大の真剣勝負を経験し、その空気を肌で感じた選手には、目の前にある超えなければいけない“スタンダード”がはっきりと見える。

「自分がひとつ具体的に挙げられる、一番にまず必要だなって感じたのは、シュートのバリエーションを増やしていかなければいけないというところ。例えばインステップで打つシュートでも、Jリーグでは顔の高さでも入っていたかもしれないけど、ワールドカップだと本当に角に打たないと入らなかったり、角に打てても止めてくる。そういうスーパーなキーパーがいる。巻くのか、速く打つのかもそうだし、スペインのPK戦とかを見てもらってわかると思うけど、本当にキーパーのレベルが高い。そういったところは絶対に上げていかなければいけない」

試合そのものの雰囲気や球際の争いの激しさ、いろいろな国の戦い方への対応はもはや大前提の部分だ。その上で、試合を決めるためには何が必要かを問うた時に、相馬はやはり試合を決める男になりたいと誓う。「一瞬で終わる大会で、どれだけ結果を残せるか。もう本当にそこだけ」。今回の代表活動は1ヵ月ほどに及んだが、先輩たちの金言そのままに、ワールドカップは相馬にとっても瞬きに近い速さで終えていった。「その一瞬のために4年間かけて、そこで結果を出すことが大切」。出場するだけでも一生に一度に近い確率の大会に、懸ける思いの強さを彼は知った。

だからこそ、相馬の野心はたぎる。「海外のトップでバリバリに活躍できる選手が7人、8人、9人とピッチに立てるようになったら、ベスト8は達成できる」。その選手に自分がという気持ちは自然と口を突いて出る。

「ヒーローに、スターになれるように。あの短い大会で、決められた時間、決められた試合数の中で、どれだけ輝けるか」

難しい戦いを強いられたコスタリカ戦での出場機会は決して華やかな記憶ではないかもしれない。しかし、あらゆる経験から糧を得るのが相馬という男でもある。「英語と一緒なんですよ。いくら勉強しても、現地で使う危機感や肌感覚がないと、上達しない」。いま、相馬が持ち帰ったのは世界最高峰の真剣勝負の経験である。向上心の塊である彼がその体験から、自らに求める水準を大きく高めたのは間違いのないことだ。



戦いは終わり、そして戦いが始まった。自らを高め、高めるための環境を求め、そして次はチームの中心に立って闘うために。「メンバーに入るだけでは意味がない」。世界を経験した相馬勇紀の、4年後が今から楽しみだ。

Reported by 今井雄一朗