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【取材ノート:神戸】アンドレス イニエスタがルヴァンカップで復帰。首位の神戸が“次”のフェーズへ。

2023年3月29日(水)
3月22日、今年3度目のファンクラブ会員向け公開練習が行われた。この時点で吉田孝行監督は週末に控えたJリーグYBCルヴァンカップ 横浜FC戦でのアンドレス イニエスタの起用について「その日その日の状況を見て判断」と明言を避けていた。この日の練習でもイニエスタは軽快な動きは見せていたが、“まだ起用はないだろう”というのが訪れた記者たちの見解だった。

だが、いざ蓋を開けてみるとイニエスタが今シーズン初のベンチ入り。横浜FC戦の注目度は一気に高まった。

イニエスタの起用に関しては賛否両論の声が聞こえてくる。「賛」は今さら説明はいらないだろう。攻撃面でイニエスタの存在は絶大で、彼が入ることで神戸はまるで別のチームになる。

気になるのは「否」の守備面である。現在、リーグ戦で首位に立つヴィッセル神戸の強みは大迫勇也、武藤嘉紀を起点に山口蛍、齊藤未月、酒井高徳らが連動するプレッシングにある。J1リーグ戦5試合で失点はわずか2。守備の安定感が躍進の原動力でもある。そこへ、今年5月で39歳を迎えるイニエスタが入るとどうなるか。守備の強度が低下し、神戸の良さが薄まるのではないかという議論がメディア陣の中で交わされている。イニエスタの復帰に伴い、神戸はサッカーのスタイルを変えるのではないか、守備の安定を維持できないのではないか…。以前、イニエスタが復帰してもハイプレスを続けるのかと吉田監督に尋ねたことがある。答えは「基本的には前から行く」だった。そして指揮官は「でも、前から行くことが全てではない。どう戦うかは相手次第」と続けた。イニエスタにハイプレスを要求するのだろうか…。

さまざまな憶測が残る中、イニエスタのプレーに注目した。


ルヴァンカップ・横浜FC戦の76分からピッチに立ったイニエスタは吉田監督の「攻撃にアクセントを加えたい」という狙いを体現するように、クオリティの高いプレーを連発する。バイタルエリアでボールをキープしながら裏抜けを試みた武藤嘉紀へスルーパスを送って決定機を演出。85分に大迫勇也が先制点を奪った場面では、自陣深くから汰木康也に精度の高いロングパスを供給し、決勝ゴールの起点となった。

アディショナルタイムを入れて20分少々の限られた時間の中でもイニエスタは決定的な仕事をやってのける。神戸の大黒柱は守備がどうこうといったメディアの疑念をあっさりと吹き飛ばしてみせた。イニエスタの復帰で神戸の進化は加速するだろう。チーム作りは“次”のフェーズに進んだと言えるかもしれない。

Reported by 白井邦彦