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【取材ノート:長野】失敗を教訓に。『Grow Everyday』が試されるとき

2023年5月2日(火)


「サポーターと選手は100点満点で、自分が残念ながら1位の監督にふさわしくない采配だった」。シュタルフ悠紀監督は、明治安田生命J3リーグの前節・福島ユナイテッドFC戦後にそう悔やんだ。


第7節を首位で終えたAC長野パルセイロは、続く第8節でホームに福島を迎え、2-3と敗れた。前半は「順位にふさわしい戦い方」(シュタルフ監督)を演じ、2点リードで折り返したが、後半は試合が一転。途中出場の藤森亮志が2失点に絡むなどして、50分からわずか12分間で大逆転を許した。

ハーフタイム明けの出来事だった。前半に1点を決めるなど躍動した右ウイングバックの船橋勇真に代え、藤森を投入。3連戦の1試合目ということもあり、ケガのリスクを考慮したことと、優位性を保っていた右サイドでさらにギアを上げる狙いがあった。しかし、結果的にはその右サイドを福島に突かれて3失点。交代が裏目に出たことは言うまでもない。

「自分が送り出したがために、彼(藤森)にとってもつらい日になったと思う。しっかり準備したカードだったし、相手を想定した明確なプランはあったが、それが機能しなかったのは藤森の責任ではなくて自分の責任。彼に謝りたいし、2点目を決めた船橋にも申し訳ない」

そう指揮官は省みたものの、これは結果論でしかないのも事実だ。犯人探しをするわけではないが、敗因はいくらでもある。「前半のうちに2点ではなくて、3点、4点と決定的なゴールが取れていれば…」と話したのは、前半で途中交代となった船橋。2点リードの36分に決定機を迎えており、これを仕留めていれば試合が決まっていたかもしれない。

また、藤森の後ろに位置していた右センターバックの池ヶ谷颯斗は「(藤森)亮志が途中から入ってきていたので、僕が背後のケアのところで声をかけてあげれば…」と振り返る。最後方に構えるGK濵田太郎も「自分のポジショニングを変えていれば、DFのポジショニングも変わって失点しなかったかもしれない」と続けた。

これはライバルチームの指揮官の言葉だが、「ミスは(周りが)カバーすればミスにはならない」。シュタルフ監督と藤森は自身のミスを認めていたが、ミスが起きた後に誰かがカバーすれば問題はなく、逆転された後に追いつくための時間も30分はあった。『One Team』と謳っている以上、誰かの責任では済まされない。それは試合後の取材を通して、多くの選手が自覚しているように感じられた。

4試合ぶりの失点に動揺したという見方もあるが、そこで仕切り直す要素として『リタスクサークル』(失点後に全員で輪を作って話し合う場)がある。昨季はその甲斐もあって連続失点が少なかったが、今季の第4節・富山戦ではそれを怠ってしまい、連続失点を喫した。今節は失点ごとに輪を作っていたものの、相手の勢いを止めることができなかった。

では、どうすればいいか。軽い言葉に聞こえるかもしれないが、「こういうこともある」と捉え、失敗を教訓に変えていくしかない。これまでにも第2節・愛媛戦で学んだ『試合の締め方』、第3節・奈良戦と第4節・富山戦で学んだ『個人の責任感』など、試合ごとに得た教訓を生かしてきた。それこそが指揮官が掲げる『Grow Everyday』の真髄であり、首位まで登りつめた要因でもある。

今回得た教訓を言葉にするならば、『一瞬の気の緩み』だ。幸か不幸か、いまは一瞬の気の緩みも許されない3連戦の真っ只中。短い試合間隔ではあるが、福島戦で得た教訓を生かすべく、これまで通りに『Grow Everyday』を継続できるかが試される。そして、その小さな成長を積み上げた先に、優勝の二文字が待っている。

Reported by 田中紘夢