
監督交代から1週間もない準備期間で臨んだJ2・J3百年構想リーグ 地域リーグラウンド 第10節・ツエーゲン金沢戦は、0-0の末にPK戦で競り負けた。
特別大会でWEST-Aグループの10チーム中、9位に沈むFC今治が監督交代に踏み切ったのは4月8日のことだった。退任した倉石圭二監督を継いだのは、今年1月にクラブのホームグロウングループ、レディースグループを統括する執行役員に就いたばかりの塚田雄二新監督。任期は特別大会の終了までで、限られた期間で、その後に控える2026-2027シーズンにJ1昇格を目指す機運につなげるチームの改革が始まった。
塚田監督は、これまで倉石監督のもとで一貫していた3バックから、4-2-3-1にフォーメーションを変更。大卒ルーキーのDF丸山大和を初先発でプロデビューさせるなど、変化への強い意志を示した。
変革が始まるチームの中で、右サイドハーフで先発したのが技術、戦術眼ともに高く、経験豊富な加藤潤也だった。対戦相手の金沢は2023シーズンに所属し、9ゴールを挙げている古巣でもあった。
先発でも途中出場でも、シャドーの一角でもサイドハーフでも、たちまちチームを機能させるべく攻守に活気あふれる動きを見せる。それを2024年に途中加入した今治でも示してきた。しかし昨年4月に左足首をけがして、長期離脱を余儀なくされた。ようやく特別大会で出場を重ねられるようになってきたところで迎えた、監督交代という重大な局面をどう受け止め、金沢戦のプレーで表現しようとしたのだろうか。
「3バックから4バックに変わって、本当に時間がない中で多くを修正するわけにはいきませんでしたが、監督は自分たちが相手をどうはめて、どういう守備をやっていくか、その大枠をとても分かりやすく伝えてくれました。選手もそれを前半やれていたのですが、相手のシステムとのかみ合わせだったり、立ち位置の微妙な違いもあって、90分ずっとはできなかった。3バックと4バックとでは、微妙なんですけど、本当に全然違うともいえるんです。アジャスト(適応)していくには、どうしても少し時間が掛かるだろうし、それでもこれからもっとゴールに向かっていく回数を増やしていかないといけない」
立て直しが急がれるのは、守備よりも攻撃だ。10試合を終えて5ゴールはグループ最少。だが、大枠が提示された守備が攻撃に直結することを、金沢戦のピッチで感じ取っている。
「前半は特に風が強くて、少し状況的(風下)に難しい場面もあったんですけど、守備で相手にうまくプレスを掛けることができると、相手は長いボールを蹴るしかないという状況を作れました。それでマイボールにできる回数も、けっこうあった。
だからこそ、もっと攻撃する時間を長くしないといけないし、相手ゴールに向かっていく回数も増やさないといけません。風上の後半は相手が少し引いたこともあって押し込める時間も増えましたが、風下の前半でも自分たちはやれると思うし、トライしていきたいです」
攻守両面でチームを活性化させて、機能させるプレーが大きな魅力だ。金沢戦では右サイドバックの梅木怜と縦関係で好連係を見せて、このサイドがこれから今治の大きな武器になっていくことを予感させた。
「今治では中盤のセンターがメインだったので、『あれ?』と思う人もいるかもしれませんが、以前はサイドハーフでずっとやっていたので、違和感は特になかったです。自分に一番求められる役割は、怜をもっと生かすことだと思います。左サイドがドリブルで仕掛けられる分、右サイドは特に自分が間に入りつつ、突破していくことが重要になる。そうやって怜をうまく生かしながら、自分もゴール前に入っていって、点を取りにいきたいですね」
実際、金沢戦で最初の決定機は、右のコンビネーションから生まれている。相手のプレッシャーをGK立川小太郎が前方にフィードしてスイッチが入るという、シチュエーション的には塚田監督から提示されている守備から攻撃への大枠には当てはまらないが、チームは厚みを持って相手ゴールに向かっていった。
4分、GK立川が利き足とは逆に左足で浮かせたロングボールを右サイドに出すと、決して大柄とはいえない加藤が相手に寄せられながらもしっかり梅木につなぐ。目の前に開けたスペースに向かって一気に加速した梅木の背後に、加藤もしっかり付いていく。梅木のドリブルは戻った金沢の守備陣に止められるが、梅木がサポートしていた自分へバックパスしたところから、柔らかい浮き球パスをエジガル ジュニオに送り届ける。巧みなコントロールの落としにトップ下の駒井善成が反応。完全にGKと1対1の決定的なシーンを作り出した。
駒井のシュートは枠を捉え切れず、電光石火の先制点とはいかなかったが、新フォーメーションのチームがどうゴールを目指すのか、まず示された瞬間だった。
塚田監督のもと、初勝利を目指す次節はアウェイでアルビレックス新潟と対戦する。金沢戦でつかんだ手応えを、ただの好感触に終わらせず、結果につなげようと燃えている。
「新潟も守備では4-4-2になって、システム的には自分たちとかみ合うと思うので、どれだけ数的優位を作って前に出ていけるかがポイントになります。やっぱりここまでの自分たちは前に出ていく回数が少ない。自分も含めて前へのアクション、回数を増やしていきたいというのは、監督も求めていることだと思います。相手にとって、一番怖いことでもあるし。点を取るまで、みんなでやり続けます」
就任時に塚田監督が掲げた「DDフットボール」、ダイナミックでデリケートなフットボールとは、今のチームが苦境を乗り越えるために大胆さと繊細さのどちらも必要という自己認識から来ている。円熟のMFがプレーで見せるのは、まさにその両面。チームの推進力が、ここから生まれる。
Reported by 大中祐二