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【取材ノート:東京V】PK阻止連発でブレイク中の長沢祐弥が語る、あらためて感じる西川周作のすごさと東京ヴェルディへの思い

2026年5月1日(金)
明治安田J1百年構想リーグ・地域リーグラウンドも早くも第13節(全18節)を終えた。残り試合も少なくなってきている中で、かけがえのない学びと経験を重ねているのがゴールキーパー(GK)の長沢祐弥だ。

第5節鹿島アントラーズ戦の前半途中でGKマテウスが負傷交代となり出番が訪れると、第6節の浦和レッズ戦から第13節までスタメン&フル出場が続いている。

長沢は、2021年にアスルクラロ沼津(J3)から東京ヴェルディ(当時J2)に移籍加入した。今季で6年目を迎えているが、これまでJ1リーグ戦での出場機会は一度も巡ってこなかった。さぞや悔しさや焦燥感など、言葉にできない鬱々とした思いも抱えていたことだろうと思い、その心中を尋ねると、本人は意外なほどさっぱりとしていた。

「もちろん『1番手になりたい』とか『試合に出続けたい』というモチベーションを持ってやっているのは大前提だとして。それ以外の特別な感情は、別にないですね。ただ、毎日『ちゃんとやるか』ぐらい(笑)ある意味、変に割り切っていた部分もあるかもしれないですね。それが良いとか悪いとかはわからないですが、『自分は(試合に)出てないし、何を言ったところで』みたいな。だったら、もうやるしかないのかな、みたいな感じかもしれないですね」

だからこそ、急遽の出場となった鹿島戦でも、「別に、自分の番が来たとも思わなかったです。それよりも『とにかく勝ちたい』だけ。どんなにいいプレーをしても、勝たなければ評価されないですからね」と、特別な緊張はなかったという。

そして、初めてレギュラーGKとして試合出場を重ねている中で、芽生え始めた自信とともに、自身の「J1レベルのGK」としての現在地、および新たな成長欲をかき立てられているという。

「実際に試合に出ることで、できる部分はあるなと思ったりはします。けど、(第10節の)浦和レッズ戦で、西川周作さんのフィードとかを見たら、本当にすごい。『いやいや。自分なんて全然まだまだだな』と思いました」

当然、以前から西川は同じGKとして学ぶことも多く、リスペクトし続けてきた選手のひとりである。だが、これまでベンチやスタンド、映像などから見ているのと、真逆のサイドとはいえ同じピッチ上で感じるレベルの高さは、さらに違った。

「感じ方が全然違いました。心の底から『すげーな』と思いました。特にフィードがすごかったです。味方へのロングフィード1つにしても、『味方選手、競りやすそうだなぁ』って。それって、うち(のチーム)でいったらソメ(染野唯月)が頑張ってくれてますが、『もしGKが西川さんだったら、たぶんソメの競り合いの勝率はもっともっと上がってるだろうな』なんて思ったり。あれぐらいの質のボールが入ったら、もっとソメもやりやすいだろうなと思うので、『自分ももっともっと練習しなきゃ』と思わせてもらいました」

そうした、課題のレベルを上げられている一方で、「シュートストップ」という自身の最大の武器の大いなるアピールにも成功している。これも巡り合わせだろう。この明治安田J1百年構想リーグでは、特別ルールとして90分間で勝敗が決まらない場合はPK戦による決着が採用されている。そのレギュレーションにおいて、長沢はPK戦に至ったFC東京戦、第10節浦和戦あわせ、8本中5本を阻止。その阻止率は62.5%と圧巻だ。そこに対しても、「特に得意だとも苦手だとも思っていません」と話し、飄々とした表情で続けた。



「PK戦に限らず、普通に『無理なものは無理』だと思っています。もちろん、失点直後やその試合後は『うわー』ってなりますし、準備の段階も含めて『もっとやっておけばよかった』と思う時もありますが、でも、その時にできなかったんだからそれが実力だと思っています。なので、引きずっている時間があるなら『また頑張ろう』と。

自分は今まで試合に出ていなくて、チームに直接貢献することができていません。なので、どんな形であれ、チームに勝点を持ってこられるようなGKでありたい」

気がつけば、東京Vはいつの間にか自身のキャリアの中でも1番在籍期間の長いクラブになった。

「最初、入って来たばっかりの時は、正直『ヴェルディって、嫌なヤツ多いんだろうなぁ』みたいなイメージだったんです。けどなんか、そう言いつつも、どこかに『ヴェルディってカッコいいな。好きだな』みたいな思いがあって。その『なんか』が何なのかが自分でもよくわからないですけど(笑)。

で、実際にこっちに来ていろいろなチームメイトと出会って。1番大きかったのが杉本竜士くん(東京Vアカデミーからトップ昇格を果たし、他クラブも経験しつつ約9シーズン東京Vでプレー。2024年シーズン限りでザスパ群馬で引退)との出会いでした。公私ともに一緒に過ごす中で、“ヴェルディ愛”というのをすごく感じて、そこからヴェルディがもっともっと好きになっていきました。同時に、より一層アカデミー出身の子たちのチームに対する想いとか、他クラブから来た選手たちも本当にヴェルディのことが好きなんだなというのが伝わってきて、僕もより一層ヴェルディが好きになっていきました」

と、クールな表情ながら、その胸に宿る偽りない東京Vへの想いを吐露した。

その上で、自身の中で果たすべき役割を見据える。

「『ヴェルディの良さを後輩たちに伝えたい』とか『ヴェルディらしさを伝えていきたい』とか、そんな大役は自分にはできないと思う。その部分は、(森田)晃樹や(深澤)大輝がしっかりやってくれているので頼もしい。なので、そこは彼らに任せて、僕はせめてサッカーのプレー面で、少しでも何かヴェルディの力になりたいなと思っています」

決して感情を表に出して表現する熱血漢タイプではない。だが、話せば話すほど、その内に秘める感情の豊かさ、熱さが伝わってくる。

想いの伝え方、チームへの貢献の仕方は選手それぞれだ。その中で、またひとり“ヴェルディ愛”に溢れる選手が新たにピッチに立っている価値の大きさを感じずにはいられない。

Reported by 上岡真里江
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