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【取材ノート:福岡】チームと共に状態が上向く「アビスパの心臓」見木友哉

2026年5月8日(金)


誰が蹴るのだろうか。

明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第15節・京都戦は1点を追う展開。名古新太郎は出場停止。橋本悠は欠場。北島祐二が64分に途中交代し、これまでプレースキッカーを多く務めてきた選手は不在に。後半に入って徐々に押し込み始めた中で、筆者は、ゴールを奪う上で大きなカギとなるであろうセットプレーのキッカーのことをずっと考えていた。74分、コーナーキックのチャンスがやってくる。左のコーナースポットに向かったのは見木友哉だった。

「ツジ(辻岡佑真)が俺に言ってきたって感じですね」

事前に蹴ることは決まっていなかったが、冷静だった。ゴール前を見渡し、背番号11は的確な判断を下す。


「密集で相手も速いボールだったら結構クリアが遠くに飛んでいくんですけど、柔らかいボールだと相手が触ったとしても、そこまでクリアが大きくならないので、『密集の時は結構緩いボールでいいよ』と、去年とかもそういう話があったので、そこは意識しました」

ふわっとした柔らかいボールは、狙い通りゴール前の密集に。そこに反応したのは、サニブラウン ハナン。頭一つ抜け出す高い跳躍からのヘディングシュートでゴールを揺らし、同点に追いつくと、その勢いのままPK戦を制し、ホームで勝点2を手にした。

「ハナンがよく決めてくれました。あのスピードは魅力的だと思いますし、ヘディングも強いですし、分かりやすい長所がある選手だと思っているので、負けている状況とかで出てきたら、今日も点を取りましたけど取ってくれそうな雰囲気を感じさせてくれる存在だと思います」

自身にとって今シーズン2アシスト目。試合後のミックスゾーンでは少し頬を緩めながら今シーズン初ゴールを挙げた期待の後輩を称えた。

10番を背負った東京Vから福岡にやって来て2年目のボランチ。足元の高い技術、冷静な状況判断、豊富な運動量で攻守に大きな存在感を示し、昨シーズン、チーム最多の6ゴールを挙げた「アビスパの心臓」も今シーズンのスタート当初は、チームと共に苦しい時期を過ごした。開幕2戦目から6連敗。第3節・京都戦の直後には強い危機感を口にしていた。

「質のところは、去年よりも落ちていることは間違いないです。後ろも含めて重要な選手がいなくなり、間違いなく質が落ちている中で、『それを何人で補うの?』という部分で、新しく来た選手も含めて、もっとやらなくちゃいけないですし、自分も含めてですけど、去年からいた選手も、もっとやらなければいけません。チームとして全然物足りない」

第4節の神戸戦ではレッドカードを受け、一発退場。自分がチームを勝たせないと。自分がチームを引っ張らないと。副キャプテンも務める責任感の強い男は、実力を上手く発揮できずにどこか空回りしているように見えた。

そんな見木に変化が見られたのは、第8節のG大阪戦だった。「最後、ツジ(辻岡)が決めてくれなかったら、まず0ポイントでしたし、そういった意味でまず救ってくれましたし、PK戦でも(勝点)1じゃなくて2にしてくれたというのは本当に仲間に救われた」。試合中、PKを3度失敗。それでも、後半アディショナルタイムに辻岡が同点ゴールを奪い、チームメイトがPK戦での勝利を手繰り寄せてくれた。自分が上手くいかなくても頼もしい仲間が助けてくれる。チームの中心選手として背負っている重圧から解放され、少し肩の荷が下りたように感じた。

さらに、第5節の名古屋戦で大敗を喫し、第6節の長崎戦からプレスをかける位置を少し下げ、コンパクトな陣形による守備が機能し始めたことで、チームとして安定した戦いができるようになったことも重なり、見木の最大の特徴である攻撃力が遺憾なく発揮され始める。第10節の長崎戦で強烈なミドルシュートを決め、今シーズン初ゴールを挙げると、第11節の名古屋戦ではアシストを記録。第13節の広島戦では年間ベストゴール級の鮮やかなミドルシュートを沈める。ここまで2得点、2アシスト。決定機に絡むシーンは増え、チームと共に彼自身の状態も上向いている。




第7節以降の直近10試合で、90分での負けはわずかに1つ。着実に勝点を積み上げられるようになった一方、90分での勝利が3つにとどまっているだけに今の課題は、勝点3を奪うことだ。

「やっぱり勝点3を取らないと順位も全然上がらないという中で、シーズン序盤に(90分負けの)5連敗があった後からを見れば、最近は、多分、岡山にしか負けていないですし、勝点は積み上げられているとは思うんですけど、やっぱり引き分けが多いので今の順位にいると思います」

特に岡山や京都のように強度高く、シンプルな形でゴールに向かって圧力を掛けてくる相手に対して苦戦が続いているだけに見木は、次のようなことが大切だと考えている。

「ファーストに負けないとか、セカンドボールをマイボールにするとか、そういうところに長けたチームにそこで負けると、やっぱり相手もどんどん勢いを増してきますし、京都とかは『前に、前に』というチームなので、逆に相手をひっくり返すことができて、相手陣地でマイボールにすることができれば、自分たちの時間は作れると思うんですけど、なかなか(今節の京都戦の)前半は特に苦しくて、チームとしても、個人としても、そういうバトルに勝っていくことが前半の自分たちペースになる割合が多くなると思う」

次節の相手である清水も岡山や京都と同様に強度高く、縦に鋭く襲い掛かってくるチームだ。中3日で迎える7連戦のラストゲーム。アウェイでタフな戦いになることは必至だが、好調の見木は課題を乗り越え、勝点3を掴み取ることしか考えていない。

Reported by 武丸善章