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【取材ノート:清水】ブラジルへと旅だった若武者・松岡大起。清水での1年8カ月で得たもの、学んだこと

2023年3月24日(金)
静岡ダービー翌日の3月19日(日)、松岡大起のグレミオ・ノボリゾンチーノ(ブラジル2部)への期限付き移籍が発表された。遅かれ早かれその知らせが来ることは予想されていたが、冬のマーケットが閉じる直前、少し予想外の国へと旅立つことが決まった。

そして出発に先立ち、サポーターにも公開された3月21日(火)の練習で、松岡が自らの意思でサポーターへのお別れと取材対応に臨んだ。そこで彼が語った言葉の中で、印象的だったのは次のような一節だ。
「自分がエスパルスに来て一番良かったと思うことは、自分自身サッカーがさらに楽しくなったことです。また、サッカーがより大好きになりました。それは心の底から言えることですし、本当に感謝しています」

その「大好き」について、もう少し詳しく聞いてみた。
「エスパルスの選手は本当に個の能力が高くて、高いレベルの中で練習し合えたことは、自分にとって大きなプラスになりました。どうしたら自分がもっと良くなるのか、より考えさせられた期間でもありました。以前より自分で考えて何事もやるようになって、よりサッカーの深みを感じられたことは、本当に大きかったと思います。だから映像を見るのも前より楽しくなって、そこでもいろいろ考えて、エスパルスに関わる全ての人から学んだことは本当にすごいものです。この経験があったからこそという部分を次のステップで生かしていきたいですし、ここからがまたスタートなので、自分自身もっともっと突き詰めてやっていきたいと思ってます」

その他の言葉の中でも、松岡が「エスパルスに来て本当に良かった」と何度もくり返したことは、サポーターの胸に強く響いたことだろう。2021年の8月から1年8カ月。在籍期間が長かったわけではないが、彼は清水で多くのことを学び、サッカー選手としてバックボーンとなるものを培ってきた。将来彼がビッグネームになったときも、それは清水サポーターの誇りとなるはずだ。

練習終了後も、最後の1人になるまでピッチに残ってサポーターとの別れを惜しんだ松岡。日頃の言動からも、最後まで丁寧にサポーターと接する姿や語った言葉からも「本当に真面目でストイックな選手」という印象を受ける。だが、これまでも本人にストイックさについて何度か聞いてみたが、決まって「べつに頑張っているつもりはなくて、楽しいからやっているだけですよ」と返ってきた。

ポルトガル語は「まだ全然です」と言うが、ここ2年は1回30分の英会話レッスンを休むことなくやり続けて、英語でのコミュニケーションはかなりできるようになっている。どこに行っても物怖じせず、人との壁を作らない彼の人間性を考えれば、ブラジルに行ってもコミュニケーションの面で困ることはないだろう。

三浦知良以来、ブラジルに渡って成功した日本人は少ないが、人材の宝庫としてヨーロッパのスカウト網が張り巡らされているので、2部であっても活躍すればヨーロッパへの道は切り拓かれる。

ただ、未知のリーグなので実際に成功できるかどうかは何とも言えない。だが、「この先どんなことがあっても、前を向いて明るく、大好きなサッカーでたくさんの人を笑顔にできるように頑張ります」と語る松岡が、ブラジルでもたくましく成長を続けることは間違いないだろう。

だから彼に「頑張って」と言う必要はない。むしろハードワークしすぎて心身ともに疲れ切ってしまうことのほうが心配な選手だ。取材からの帰り際にたまたま彼と顔を合わせることができた際には、成功を強く願いつつも「頑張りすぎないでね」と声をかけさせてもらった。

Reported by 前島芳雄