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【取材ノート:東京V】「『頑張れ』なんて、軽々しく言えない。でも『頑張れ』としか言えない」山田剛綺がたどり着いた「自分だからこそ示せるエール」とは

2026年5月14日(木)
2026年5月10日 明治安田J1百年構想リーグEAST グループ第16節FC東京対東京ヴェルディ。どちらのクラブにとっても格別な意味合いを持つ一戦「東京ダービー」で、東京Vはあらためて自分たちの最大の強みである「チーム一丸」を強調して挑んだ。


キックオフ直前のスタメン選手による集合写真撮影の際、東京Vの選手たちは、左膝前十字靭帯損傷の山見大登選手、左膝複合靭帯損傷および半月板損傷の吉田泰授(ともに5月4日にクラブ公式からリリース)という、長期離脱の大怪我を負った両選手の背番号「11」と「55」のユニホームを掲げた。その意図を、副主将の林尚輝は「日頃、どうしても試合に出てピッチ上で戦っている選手がフォーカスされますが、それだけでは決してない」と話し、試合に出たくても出られずに、成長を目指して毎日必死に練習している選手、山見や泰授のような大きな怪我から復帰できるようにつらい状況から前を向いて復帰を目指している選手、そして、そうした選手ひとりひとりを一日でも早く成長を促して試合に絡めるようにだったり、復帰できるようにサポートして下さるコーチやスタッフの方々も、毎試合、常にピッチ上の選手たちとともに心一つに戦っていること。また、その存在の重要性を強く主張した。

そんな中で、今回の山見、吉田の大怪我を人一倍我がことのように心を痛めているのが山田剛綺である。山見は関西学院大の1つ上の先輩であり、山田が公私ともに敬愛している存在。昨年6月末に右膝前十字靭帯を損傷した際は、ともにリハビリに励んだ。吉田についても、自身も昨季3月に吉田と同じ左膝複合靱帯および半月板損傷で全治約8ヶ月の診断を受け、並々ならぬ治療とリハビリを乗り越え、11月30日に復帰を遂げた経験をしているがゆえに、まだ記憶が鮮明に残っている分、どうしても当時の自分の感情をリンクさせてしまうのだという。

「ヤマミに関しては、今回が2回目やったんで、もう、どんな声をかけていいのか難しくて。何も言えなかったですね。前回は、自分もリハビリにいたので、『一緒に頑張ろう』という感じだったのですが、今回は、いろいろ考えた末、もういつも通り接するしかないかなと思って。
泰授は、本当初めての怪我みたいなので、自分が怪我した時にいろいろな人から食事や着替えの手助けや、送り迎えなど、本当にたくさん助けてくれる人がいてくれたことが嬉しかったので、もちろんヤマミにもですが、僕が手助けできることは助けたいなと思っています。
それに、僕だけじゃなくて、(白井)亮丞とかもご飯を取りに行ってあげるとか、本当にチームのみんながそれぞれできる形でサポートしている。2人がどれだけ日々努力しているかをみんな知っているので、本当にチームのみんなが悔しいと思っています。それだけに、みんながみんな、『困ったときはお互い様』だと思っているんだと思います」

そう話した際の山田も、松葉杖の吉田の帰宅に合わせて氷の入ったクーラーボックスを車まで運ぶなど、献身的なサポートをしていた。

「松葉杖の時って、自分だけじゃどうしても限界があるんですよ。そこは、自分がやってもらった分、仲間が同じような大変な状況の時にはやらなければいけないと思っています」

そして、あらためて日々の練習に参加し、試合メンバー入りへ向けて、また、自身の技術向上へ向けて全力を尽くせることがどれほどまでにありがたいことかを再認識していると話す。

「あらためて思ったのが、怪我をした時にどれほどサッカーがしたいと思ったか。歩けるようになったことだけでも嬉しかったし、ジョグできるだけで嬉しかった。そういう気持ちを、また思い出させられています。そう考えると、ピッチに入れているのは決して当たり前じゃないと思えますし、それすらもできない人がいるということを思いながらピッチに立たなければなと思いますよね。もちろん、以前からピッチに立つ責任はもってやっていたつもりではありますが、今回のことで、より、強く考えさせられています」

「『頑張れ』だなんて、軽々しく言えない。でも、『頑張れ』としか言えない」と、山田はもどかしげな表情を浮かべる。

「頑張れ」の言葉以上の想いを伝えるには・・・

考えに考えた末、山田にだからこそできる答えに辿りついた。

「自分が試合に出て、ピッチ上で良いプレーをしてみせられれば、(同じ怪我の)泰授も『俺もここまで戻れるぞ』という励みになって、あいつも頑張れると思う」。最後に、「ま、あいつはそんなことをなくても頑張ると思いますけどね(笑)」と、すでにさらなる進化を遂げた姿での復帰を目指して現実と向き合っている吉田への最大のリスペクトを口にした。

山田自身、開催中の明治安田J1百年構想リーグでは故障期間もあり、2試合23分の出場にとどまっている。だが、その先の新シーズンも含め、自分だけではない「誰かの励みになるために」の想いを背負って戦う覚悟は、何よりの勇気とモチベーションになるに違いない。

山田だけではない。新井悠太やその他多くの選手が「ケガをしてこのピッチに立てない選手もいる。毎日サッカーをできるのが当たり前じゃない」と、自らも常に大怪我のリスクと隣り合わせであり、だからこそ、最大限の準備とケアを怠らずに毎日の練習と試合に挑まなければならないこと。そして、怪我なくプレーし続けられていることの価値と感謝を感じながら日々鍛錬を重ねているのである。

明治安田J1百年構想リーグも残り2節。それぞれがそれぞれの想いを胸に全身全霊で戦っていく。

Reported by 上岡真里江