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【取材ノート:福岡】魅せるサニブラウン ハナン。抜群の身体能力を活かしてゴール量産へ

2026年5月26日(火)


「ああやって盛り上がってくれると、すごく自分の力にもなるし、自分の力を100%じゃなくて120%発揮できるし、すごく感謝しかないです」

明治安田J1百年構想リーグ地域リーグラウンド第18節・神戸戦。1点ビハインドの72分からピッチに立ったサニブラウン ハナンは、ホーム・ベスト電器スタジアムに集うサポーターを何度も沸かせた。


「右サイドでは、サイドから縦、斜めに抜けていくことを意識したのと、逆にツジくん(辻岡佑真)のほう(左サイド)にいったら、縦じゃなくてプルアウェイすることを意識して抜けていました」

1トップのポジションに就いたサニブラウンの狙いは明確。相手の背後のスペースを突き、得点を奪うこと。89分、GK藤田和輝からの裏へのボールに反応し、ゴールに向かって神戸のセンターバックの2人の間を割って入ろうとスプリントを仕掛け、90+5分には右サイドの背後へのパスに反応し、相手DFを置き去りにして中央へクロスを送るが、どちらも間一髪のところで相手の好守に阻まれてビッグチャンスにはならず。「自分の中で不完全燃焼」と言うようにゴールにつながる活躍ができずに敗れ、悔しさが残った。

この試合で自己最速を0.2キロ更新する35.4キロのトップスピードを記録。明治安田J1百年構想リーグでは全体で2番目となる数字をマークした速さに加え、高い跳躍力を特長に持つ。陸上男子100メートルの前日本記録保持者のサニブラウン ハキームを兄に持つ身体能力に優れたFWは、2025年に福岡のU-18からトップチームに昇格を果たしたが、シーズン当初に怪我を負って長期離脱。リハビリに多くの時間を費やした。チームに怪我人が続出し、本来であれば自分にチャンスが回ってくる状況にもかかわらずピッチに立てない。焦りがつきまとう中で「落ち着いて」と自分に言い聞かせながら今できることに集中した。

「あの時は本当に焦ってたんですよ。なかなか治らないし、同期の(前田)一翔は試合に出るし、チームには怪我人が多かったので、逆に言えば普段は試合に出られない選手にとってはチャンスだったのに、自分も怪我をして出られないし、そんなことで焦りがあったんです。でも、結局、やることは変わらないんで、まず怪我を治すことに注力しつつ、いつチームに戻ってもすぐにやれる準備を怠らずにやっていて、復帰した後も全然練習にも入れなかったんですけれど、その時もまずはできることをやると。全体練習の横でできることをやるだったりとか、余った時間でスタッフとかを捕まえてやるとか、いろいろやりましたね。あの時もやれることをやって、無駄なく時間を過ごすという感じでした。

先輩にいろいろと教えてもらったりもして。結構、野田直司(フィジカルコーチ)さんが、自分のケアというか復帰に向けてのトレーニングとかも見てくれたので、一番はそこですかね。怪我をしている間は、先輩方にいろいろと治した方がいいところとかを教えてもらって、それを少しずつ改善しながら、トレーニングに復帰してからは、野田さんと一緒にトレーニングをする中で、メンタル面をケアしてもらいながら、『まずはやれることをやる』というのは教えてもらいました。野田さんと先輩方のおかげです。

怪我はしない方がいいんですけれど、絶対にそれのおかげで変われたと思います。あの時も、ちょっとふてくされていたというわけじゃないですけど、状況的にはなかなかうまくいかなかったんで、あれで人間として成長できたかなとは思います」

昨年9月27日のホーム・広島戦でプロ初出場を果たすと、高い打点のヘディングで日本代表の相手GK大迫敬介との競り合いを制し、Jリーグ初得点をマーク。強烈な高さを印象づけたゴールは、サニブラウンが師匠として慕うウェリントンを彷彿とさせた。


「ウェリントンによく教えてもらっていたのは、最初の立ち位置、敵の背後に立ってそこから前に身体を入れたりとか、そういうのですね。腕の使い方とか、ヘディングの競り方とか、相手への体の当て方も教えてもらいました。(ウェリントンが)いなくなったのはすごく悲しいですけど、またどこかで会えたらいいなと思いますね。結構面倒も見てくれたので、すごく尊敬しています」

親身になって多くのことを教えてくれたJリーグ通算81得点のストライカーは、昨シーズン限りで退団。別れ際には応援メッセージをもらったと言う。

ウェリントンの分も自分がやらないと。福岡を愛すブラジリアンから託された想いを背負って戦う今シーズンは、自らの持ち味を発揮しながら出場機会を増やし、第15節の京都戦で初ゴールをマーク。今やチームの劣勢な状況を打開するスーパーサブ的な存在になりつつある。その中で、最大の課題は、自身の持っている身体能力を活かし、シュートチャンスを増やすこと。ストライカーとしてゴールを量産するために予測、判断の速さを上げることが必要だと考えている。


「結構、自分はボールが出るのを見てから走るので、そうすると相手もいるので、ボールを見ずにというわけじゃないですけど、もう少しボールが出てくると信用して、先に走ることで相手を置いていけたら、もう1歩シュートに近づくんじゃないかと思います」

さらに、昨年から野田フィジカルコーチと共に走りのフォームを見直し、力みをなくしてスプリントの連続性を高めることにも取り組んでいる。

「他人が10割の力で出すスピードを(自分は)7割とか8割で出せる。力を出さずにスピードを出せれば相手からしたら脅威にもなるし、自分的にも楽になる。100%じゃなくて80%ぐらいであれぐらいのスピードを出せれば(スプリントを)何回も繰り返せると思います」

様々な壁にぶつかりながらも徐々に頭角を現しつつあるプロ2年目のサニブラウンに加え、福岡は現在、北島祐二、森山公弥(愛媛に期限付き移籍中)、前田一翔、前田陽輝、武本匠平がユース出身選手としてプロ契約を結んでいる。その中で背番号32は、トップチームで自身が活躍することの意味について次のように話す。

「ユースから上がってきた選手が活躍すればユースも注目を浴びるし、そうするとユースの選手たちもやりがいじゃないですけど、そういうのも出ると思うので、ユースのためにも、自分のためにもそこはやっていきたいと思います。前回(京都戦)点を決めた時も、その前日に試合を見に行っていたんですよ。やっぱりあそこであいつら(ユース)が勝ったので自分もパワーをもらったし、向こうが頑張ればすごい力になるので、自分も頑張って向こうに力を与えられたらなと思います」

19歳の若武者の次なる狙いはスタメンの座。今や福岡のエースストライカーになりつつある碓井聖生以上の得点力を示し続けなければならない。

「(碓井)聖生くんとかは試合に出てしっかり(ゴールを)決めたりとか、決めてくれるところがあるので、やっぱりそこに近づけたら(先発で)出られるんじゃないかと思います」

そんな言葉を残した翌日のトレーニングマッチ・鳥栖戦でプロになって初めて90分プレーし、ハットトリックを達成。早速、結果を残した。

「90分(試合に)出させてもらって、しっかりと期待に応えられたと思います。3点取ってポジティブな結果になったので、(プレーオフの)千葉戦で自分の出場時間も多分増えるのではないかと思いつつ、しっかり得点を取れたらと思います」

多くの人のサポートを受けてピッチに立つJリーグでは希少な速さと高さを兼ね備えたストライカー。大きなポテンシャルを持ち、見る者をワクワクさせてくれるサニブラウンの成長から目が離せない。

Reported by 武丸善章