
2週間の北海道・室蘭でのキャンプを終えて戻ってきたFC今治は、ボールをよく循環させ、その裏返しとして相手に循環させることを許さないタイトな守備が求められるチームへと変貌しつつあることを、オフ明けのトレーニングから示した。その中心でボールを集配していたのが、室蘭キャンプ中に練習参加し、完全移籍での加入が決まったピピこと中井卓大である。
9歳で名門レアル マドリードの下部組織に加入し、11年を過ごした中井は、最高でBチームにまで登り詰めた。しかしトップでの出場はかなわず。3部、4部のクラブへの期限付き移籍を経て、昨年の夏にレアル マドリードとの契約が満了に。昨シーズンは5部のCDレガネスBでプレーした。そして22歳となった今夏、J2のFC今治で新たなチャレンジをスタートさせることになった。
「スペインの2部、1部のチームに上がりたかったですけど、壁が大きく、難しいと感じていたところがこの2、3年あって。一度日本に帰って、しっかり試合に出て自信を付けたかったし、“中井卓大、ピピとはこういう選手なんだ”と示したくて」
そのタイミングで、今治と巡り合う。新たにチームを率いるのはスペイン人のアベル モウレロ監督。12年間、スペインで培ってきた力を発揮するには、理想的な環境といえそうだ。
「チームメートと話をしたら、スペイン人監督になって、昨シーズンと比べて180度といっていいくらい、サッカーのスタイルが変わったということなので。自分はずっとスペインでサッカーをやってきたし、今回、ワールドカップで優勝したスペイン代表のようなサッカー、プレーを今シーズンやっていけたらいいと思います」
モウレロ監督とのコミュニケーションも、すでに深く取れつつある。「監督は選手との距離が近く、人間的に“ザ・スペイン人”という良い人。サッカーも、本当にスペイン代表のようなショートパスをつないで、あまり蹴らないで、崩していくサッカー」と、ピッチの中で指揮官が求めることをプレーで“通訳”し、新たなスタイルに挑戦するチームを導く存在になることが、早くも期待される。
「室蘭キャンプの練習試合ではボランチ、自分がずっとやっていた、スペインでいう6番、8番のポジションでプレーしました。監督とも話をして、求められるのはゲームをしっかり作って、ポジショニングを取って、バランスを取ることになります。そしてアシストや、点を決めに行けるところがあれば、しっかり決めに行く。スペイン代表でいえば、ロドリのようなプレーを求められるのかな、と思っています」
室蘭キャンプから戻り、オフ明けのトレーニングの8対8のミニゲームでも、密集の中でボールをよく受け、配り、機を見て奪いに行くプレーで、さっそく存在感を見せていた。夏休み中の公開練習ということもあり、たくさんの子どもたちが見学に訪れていた。サッカーが大好きなみんなに、ここを見て、まねして身に付けてほしい自身のプレーは?
「一番、ここは負けていないぞと思っているのは、ボールをもらう前にたくさん首を振っているところですね。人よりも、倍は振っている自信があります。首を振るからこそ、次のプレーで何をしたらいいかも分かるし。何よりボールコントロール、トラップの部分が、自分の中では優れているところだと思います」
いよいよ始まる2026/27シーズン。そのボールタッチがファンを沸かせるほどに、チームはJ1昇格へと近づいていくことになる。
Reported by 大中祐二